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第三十三章 弱点?



 カレンとの一件で少し拗ねてしまったフィアの機嫌が直った所で、シストはんんっと一つ、咳払いをした。そして一緒に居る友人二人に笑いかけて、言う。


「さて、飲むか。んじゃ、乾杯……って、オイ」


 シストの音頭に合わせてアルはグラスを合わせたがフィアは完全無視。オレンジジュースの入ったグラスを傾け、勝手に飲み始めている。つれない奴、と呟きつつ、シストもグラスを傾けた。ふわりと、淡いアルコールの香りが鼻に抜ける。


「お、これ美味いな」


 次も同じのを頼もうか、そう呟いたシストはふと気が付いたように、フィアとアルを見た。そして小さく首を傾げ、問いかける。


「あれ? お前ら、酒飲まねぇの?」


 アルとフィアが飲んでいるのはオレンジジュース。柑橘の良い香りが漂うそれも確かに美味しいのだろうが、折角の宴会なのだから飲めば良いのに、とシストは言う。その言葉にアルは困ったように笑って、首を振った。


「僕はジェイド様に止められているんです。草鹿の騎士は、二十歳になるまでお酒飲んではいけないことになっているんですよ」


 医療部隊である草鹿の部隊長ジェイドの指示だという。草鹿の騎士には幼い者も多く所属している。幼く体も完成していない子供が酒を呑むことがないように、と厳しく言い聞かせているようだった。


「へぇ。なかなか厳しいんだな」


 それなら仕方ないか、といいながらシストは自分のグラスを傾ける。


「そういうシスト、お前……まだ未成年だろう」


 忘れていたが、と小さく呟くようにフィアが言えば、シストはぴた、と動きを止める。そして目を泳がせながら、言った。


「まぁ、ほら。ルカも飲んでるしさ」


 言い訳めかしてシストはそう言う。確かに、ルカもこうした宴会の時は酒を呑んでいた。それをフィアも知っている。


「それに、大体自己責任だろ、大丈夫だって」

「……この城の中では、普通のことだと最近は諦めがついてきたが」


 フィアは溜息をついてオレンジジュースを呷った。シストが酔い潰れるほど酒を飲んでいる所は見たことがないし、きっと自分なりに加減はしているのだろうから放っておこう。そう思いながら。

 と、噂をすれば何とやら。


「体調管理は大事ですよ。あまり若いうちから飲酒というのは褒められた行為ではありませんからね」


 そう、柔らかな声が聞こえて驚いたように振り向いた。三人の後ろににこにこと笑っているジェイドが立っていた。そしてその後ろからアレク、アンバー、クオンも歩いてくる。と、シストはきょろきょろと辺りを見渡した。


「あれ? ルカが居ない」


 セラたち皆で集まっているのかと思ったが、自分たちの部隊の統率官……ルカの姿が見当たらない。そうシストが呟けば、クオンが言った。


「ルカは、まだ任務中だって。手こずってんのかな。……ったく、いつになったら帰ってくるんだか」


 クオンはそういうと、呆れたように肩を竦めて笑った。シストはその言葉に納得したように頷く。任務でいないのならば、仕方がないだろう。こうした楽しい行事が好きなルカだから、最初から参加できないことを残念がるかもしれないけれど。


「言いつけをきちんと守って偉いですね、アル」


 ジェイドは微笑んで自分の部下のアルの頭を撫でた。アルはその手を受けて嬉しそうに目を細める。……まるで飼い主に撫でられている犬のようだ。アルに尻尾があったならば、それはきっと上機嫌に揺れていたことだろう、とフィアは心の中で思う。

 と、不意に背を叩かれた。


「楽しんでるー? フィア君」


 フィアの背を叩いた張本人は上機嫌にそう言って、彼に問うた。フィアはそれに小さく頷いて、応じる。


「アンバー様。はい、楽しんでいます」


 そんなフィアの返答にアンバーは嬉しそうに笑う。しかしフィアのグラスを一瞥すると、不思議そうに首を傾げて、言った。


「あれ、ジュースなの? 折角だし、お酒飲めば良いのに。雪狼は止められてないでしょ、お酒。第一ルカも飲むし、君のパートナーも飲んでるもんね。そもそも、ルカが止めるはずもないし?」


 そう言って、アンバーは首を傾げる。彼の言葉に、フィアは困ったように頬を掻いた。


「それが……止められているのですよ、ルカに」


 フィアの言葉に他のセラたちを含め、その場にいた全員が驚いたような顔をした。


「マジで? あの放任主義のルカが?」


 クオンが訊ねる。ルカと親しいだけに、一層意外に思ったようだ。フィアはその言葉に小さく頷いて、答えた。


「俺もよくはわからないのですが、以前一度だけ、ルカと酒を飲んだことがあって、その次の日の朝にはもう飲むな、と言いつけられて。飲み始めてすぐから記憶がないので、弱いのは確かなのですが……酔って、何かやらかしたのでしょうね、俺が」


 今から大分前になるのだが、一度フィアも酒を飲んでいる。ルカにしつこく勧められて口にしたそれの味も飲んだ後のこともあまりよく覚えていない。目が覚めればすぐ傍にルカが居て、真剣な表情でもう飲むな、といわれたことだけはっきりと覚えている。何故か、自分が何かしたのかと問うても彼は答えてくれなかったが、恐らく何かしでかしたのだろうということだけは、フィアも理解している。そもそもあの後は酷い頭痛にも苦しめられたし、無理に飲みたいとも思っていないから、と大人しくその言いつけを守っているのだった。


「ルカが止めるくらいの何かをしたんだろうな」


 シストが苦笑気味にそう言うと、フィアも頷いた。


「あぁ。だから一応は飲まないようにしている」


 フィアの返答にアンバーは唇を尖らせた。


「えー、つまらないなぁ。フィア君みたいな子を酔いつぶれさせるのが一番楽しいのにぃ」


 そう言って、アンバーはにこにこと笑う。それを聞いてアレクは溜息を吐き出して、アンバーの額を小突いた。


「アンバー、洒落にならないから、やめろ」


 実際、アンバーはやりそうだから怖い。流石にアルコール中毒になるほど呑ませることはないだろうが(そんなことをすればすぐそこに居る医療部隊長に死ぬほど叱られるだろう)その寸前まで呑ませて酔わせることくらいは十分にありうる。そんなことをさせる訳にはいかないぞ、とアレクは言う。

 しかしアンバーはどこ吹く風。あぁ話は変わるんだけど、とフィアに声をかけた。フィアは不思議そうな顔をして、首を傾げた。


「どうかなさいましたか」

「フィア君、僕たちの部隊、水兎に来る気ない?」

「え……?」


 アンバーのごく軽い調子での爆弾発言にフィアはサファイアの瞳を大きく見開いた。冗談ですよね、とフィアが言えば、アンバーはくすりと笑ってグラスを持っていない方の手でフィアの髪に触れた。


「僕らの部隊って地味でしょ? 君みたいな華がほしいんだよね。それに、頭も良いらしいし? 聞いたよ、炎豹との任務の時、チーム内での作戦立てたの君なんだってね。綺麗で賢くて強い、君みたいな騎士、ほしいなぁって……ねぇ、考えてみない?」


 アンバーはにっこりと笑いながら琥珀色の瞳で真っ直ぐにフィアを見つめる。フィアはアンバーの言葉に困ったように笑って、答えた。


「それは買い被り過ぎです、アンバー様。俺はまだまだ半人前です」


 彼がそう言うのを聞いて、アンバーは大袈裟に驚いた顔をした。綺麗な琥珀の瞳が悪戯っぽく光っている。


「えー、そうかな。君で半人前かぁ。うーん、あぁそうだ! 君が半人前だっていうなら、僕が教育してあげるよ! うん、必ず立派に一人前に育て上げてあげるよ。だから……ね。おいでよ」


 琥珀の瞳を輝かせながらフィアの手を握るアンバー。フィアは困惑しきった顔をする。他部隊のとはいえ上官相手にあまり強いことは言えないし、揶揄われていることは目に見えている。それに本気で言い返す必要はないだろうし、とフィアが返答に悩んでいた時。


「アンバー様、それ冗談に聞こえませんから、やめてください」


 少し固い声でそう言うのと同時、シストが笑顔でフィアの手を引いた。ぐらり、と体が傾ぐほど強い力で。


「わ……」


 アンバーとフィアの距離が離れ、代わりにシストとの距離が近くなっている。手を引いたというよりは、抱き寄せた、が正解かも知れないような形で、シストはフィアを引きよせている。思わぬ行動に驚いて、フィアは幾度も蒼い瞳を瞬かせる。


「シスト?」


 笑顔ではあるが、眼が笑っていないシスト。相棒を勧誘されて不機嫌になっている様子の彼を見て、アンバーは楽しそうに笑って、首を傾げた。


「だって冗談で言ってるんじゃないもの。だいぶ本気だよ?」

「困りますよ。これでも一応俺のパートナーなんで」


 尚も勧誘を諦めないアンバーにシストは反論する。アンバーはそんな彼の反応が気に入ったのか、笑いながら言葉を続けた。


「あ、そうだったね。大丈夫大丈夫。雪狼の騎士はみんな優秀だから、すぐに新しいパートナー見つかるよ」

「そういう問題じゃなくて……!」


 アンバーはシストを揶揄っているだけなのだが、シストは結構本気で言い返している。それも、至極当然のこと。シストにとってフィアはエルドを喪った後、初めてパートナーにしても良い、したいと思った相手なのだ。それを、こんな軽い調子で攫っていかれたのでは堪らないだろう。尤も、その想いが強すぎて状況が読めなくなっているのは、冷静さを欠いているとしか言いようがないのだけれど。


「まったく。おい、いい加減にしとけよ二人とも」


 アレクが溜息を吐いて、二人を止めに入る。原因であるフィアは二人の間からさっさと抜け出していた。


「フィア、止めなくていいの?」


 アルが苦笑気味にフィアに訊ねれば、フィアはふんと鼻で笑った。そして軽く肩を竦めながら、言う。


「勝手にすればいい。俺は元より雪狼から移籍するつもりはない。シストが何故あそこまでムキになっているのかを理解しかねるな」


 それくらいわかるだろうに、と呟きながら、フィアは自分のグラスを傾けている。アルはそんな彼の反応に、溜息を吐いた。


「フィア……」


 恐らく、シストが怒っているのはフィアのためであって、アンバーの言動が冗談か本気か、という問題ではない、と思うのだけれど。それをフィアが理解していない辺り、シストが少し、気の毒だ。そう思いながらアルは苦笑を浮かべた。この親友は自分に向けられる親愛の感情にとことん鈍いのだから、と思いながら。



***



 シストとアンバーの言い争いを見物しつつ、フィアたちがジュースを飲んでいる所に、おずおずと近づく影が一つあった。その影の主はすぅと一つ息を吸い込むと、少し上ずった声で、騎士の名を紡いだ。


「フィア様!」


 すぐ傍で聞こえた大声に驚いて、フィアは振り向く。声を出した当人も想定以上の声を出した自覚はあるらしく、亀のように首を竦めてしまっている。そんな相手、基メイドの顔を見て、フィアは幾度か、瞬いた。


「さっきの……カレン、だったか?」


 そう、フィアを呼んだのは、新米メイドのカレン。グラスの乗ったトレイをフィアの方へ差し出し、少し頬を赤く染めながら、言う。


「これ、宜しければ、お代わりを、どうぞ。あの、えっと……き、今日は暑かったので、喉も渇いているでしょうし……」


 はにかみながら、彼女は言う。どうやら、先程のお礼を兼ねてフィアたちの元へ来たらしい。気恥ずかしさも緊張も抜けきってはいないが、その表情もまた、可愛らしくもあって。


「ありがとう」


 フィアは彼女の気遣いを嬉しく思いながら、彼女が差し出したグラスを手に取り、微笑みを向ける。フィアが素直に受けとったことが嬉しかったのか、カレンは顔を輝かせて、明るく笑うと、ぺこりと頭を下げてから、軽やかに走っていった。


「良い子だな」


 ……戻る途中に他のメイドにぶつかっていたことは無視するとして。フィアが小さく呟くとアルは笑って頷いた。


「フィアへのお礼のつもりだったんだろうね。嬉しかったんじゃないかなぁ、助けてくれたことが」


 そう言って、アルは微笑む。フィアは一見して冷たいように見えるし、事実人との関わり方が淡泊だ。そのために誤解を受けがちだ。しかし、そんな彼の本当の優しさを、アルはよくよく知っている。今回の一件は、それを他人に伝えることが出来る良い機会だったように思えた。


「あ……そう言えば」


 ふと、アルは話題を切り替える。ずっと前から気になっていたんだけどね、と前置いて、彼はフィアに問うた。


「フィアはオレンジジュースが好きなの?」


 アルがフィアと親しくなってからずっと、彼が好んで飲むのはオレンジジュースなのだ。夜会の時も、お茶の時間にコーヒー以外を飲む時も。アルはずっとそれを疑問に思っていたのだが、聞くほどのことでもないし、聞いてどうなるというわけでもない、そう思って放置していたのだ。折角だから聞いてみよう、と思ったらしい。

 アルの問いかけにフィアは小さく頷き、答えた。


「小さい頃によく母さんが作ってくれたんだ。だからかな。どうにも、他の飲み物よりも好きなんだよ」


 母さん、という声が酷く優しくてアルはふっと微笑んだ。

 普段、フィアと家族の話をすることはない。避けているつもりはなかったのだが、無意識のうちにそうなっていたのかもしれない。やはり、親がいないフィアに、その話を振るのは酷なことではないか、と思って。

 しかし、母のことを思い出しているフィアのサファイアの瞳は優しい光を宿し、声色は何処までも甘く、優しい。フィアはお母さんのこと大好きだったのだろう、そう思いながらアルはそっと笑みを浮かべ、彼が好むオレンジジュースの入ったグラスを傾けた。




***




 一方、シストとアンバーの言い争いは続いていた。アンバーの方は完全に面白がっているだけなのだが、シストが案外本気になっていて、アンバーはそれを煽る。よって、収拾がつかなくなってしまったのだ。先刻からアレクとクオンが必死に止めようとしているのが、聞く耳を持たないシスト。一番力(基発言力)があるはずのジェイドは面白がって止めないものだから、いよいよどうしようもない。


「だから! フィアは俺たちの部隊にいてくれなきゃ困るんですって!」

「別に彼じゃなくても強い人たくさんいるでしょ? 大丈夫。フィア君一人抜けても大丈夫。何なら僕の部隊から代わりに誰か派遣するよ?」

「そういう問題じゃなくて……!」


 酒が入っている所為もあるだろう。シストも普段の冷静さが欠けている。アンバーは落ち着いているものだから、完全なる独り相撲状態だ。


「おい、落ち着けって、シスト」


 クオンは苦笑しつつまぁまぁ、とシストを宥める。


「アンバーも煽るな! いい加減にしとけっての!」


 アレクが半ば怒鳴るような形でいうが、アンバーはへらへらと笑うばかりで聞く気がない。


「はぁ……ジェイド、何とかしてくれよ」

「彼奴ら、俺たちの言うこと聞いちゃいねぇし」


 お手上げだ、といって二人はジェイドに助けを求めた。ジェイドはやれやれ、と呆れたように笑いながら仲裁に入った。


「まぁまぁ、シスト、落ち着きなさい。アンバーもこれ以上煽らないで……」


 と、その時。


「フィア?! 大丈夫?!」


 という甲高い声が大騒ぎをしている面々にも聞こえた。その声にはっとしてそちらを見ると、フィアがぐったりと潰れている。アルが心配そうに声をかけながらその背を擦っていた。


「どうかしたのですか?」


 素早くフィアのもとに駆け付け、ジェイドが訊ねる。顔を上げたフィアの目には涙が浮かんでいた。顔も微かに赤い。


「飲み物が……ジュースじゃなくて、酒だった、みたいで」


 微かに上ずった声で、フィアが答えた。ジェイドは怪訝そうな顔をして首を傾げる。フィアが持っていたグラスに入っているのは、見た目だけで言うなら普通のオレンジジュースである。

 それを聞いて、シストはフィアが飲んでいたグラスを受け取った。そしてそのまま、中の液体を口に含む。そして、納得した顔をした後、苦笑した。


「スクリュードライバーだな。大方メイドが間違えて渡したんだろ。ってか、気づけよ、こんなに酔う前に」

「オレンジジュースだと思っていたから、気付かなかった……」


 小さく呻きながらそう言うフィアを見て、シストはやれやれと肩を竦める。


「スクリュ……?」


 酒の種類に詳しくなく、きょとんとするアルにクオンが説明する。


「カクテルの一種だよ。オレンジジュースで割った酒。軽くて口当たりがいい分、飲みやすくて飲みすぎる。その所為でよく女性が潰れるから、レディ・キラーなんて物騒な名前で呼ばれたりもする」


 軽い口調でそう説明したクオンは、その酒に殺された被害者、基フィアの方へ支線を向けて、そっと溜息を吐き出した。


「……にしても、大丈夫かフィア。ルカがお前に酒を飲ませないのは単にお前がむちゃくちゃ弱いからなんじゃないか?」


 そう言いながら、クオンもフィアの顔を覗き込む。


「そうかも、しれません……」


 はぁ、と息をつき、フィアは近くの椅子に座った。クオンの言うとおり、フィアが凄まじく酒に弱いのは事実らしく、ぐったりしている。実際、頭の中がぐらぐらして、真っ直ぐ座れているのかすら、フィア自身にはわからなかった。


「見たところ、そこまで多量を飲んではいないようなので、大丈夫だと思いますが……酒に弱い人が一度にたくさん飲むと、危険ですからね。大丈夫ですか、フィア」


 ジェイドは診察するようにフィアを見つめながら、心配そうに言う。


「多分、大丈夫だと思います。ご心配おかけして、申し訳ありません」


 フィアはジェイドを安心させようとするかのように微笑んで、一度頭を下げた。しかしその表情は明らかに無理をしている様子で、ジェイドの不安は拭われない。

 その時、一人の騎士がセラの騎士たちを呼びに来た。訊けば、女王が話をしたがっているとのこと。彼らは頷き、騎士たちについていこうとしたが、ジェイドだけは動こうとしない。


「ジェイド?」

「おいていくぞ?」


 振り向いたアンバーとアレクがいう。ジェイドだけはやはりフィアのことが心配らしく、躊躇っていた。翡翠の瞳がどうしたらよいのか、というように揺らぐ。その様子を暫し見つめた後、アルはジェイド様、と自身の部隊の統率官に声をかけた。


「大丈夫ですよ、ジェイド様。僕がフィアのことは見ていますから」


 陛下の所に行ってきてください、と笑顔を見せるアル。女王に呼ばれているのに、一部隊の部隊長であるジェイドが行かないのでは、恰好がつかない。アルはそう思って、自分の師にそう言ったのだ。

 ジェイドは彼の言葉に幾らか安心したのか小さく頷いた。


「わかりました。では、僕は陛下の所に居ます。もし、何か困ったことがあったら呼びに来なさい」


 ジェイドはそっとアルの頭を撫でると、先に歩き出していた仲間たちを追いかけていった。




 

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