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ラウニーの箱庭  作者: 白石苗穂
本章  ~ルキネ、領主館にて暮らす~
19/22

領主からの伝言

 結論としては目ぼしい物は何も無かったんだけど。


 テラスに出た時の開放感は素晴らしかった。

 むにょんって変な膜に阻まれずに、柵の近くまで行けたよ!

 近くまで行ったら窓と一緒で、境界を越えたら同じように膜があったけど。

 広々と、三方は壁に囲まれているけど屋根が無いから外に居るような気分~。

 空はのっぺりと白いし、何にもない土地が結界の壁まで見えるだけの殺風景とはいえ、見晴らしはいい。

 木製の柵はかなり頑丈な作りで、間違って落ちるような隙間も無かった。

 私の胸の高さまであるけど、透かし彫りが施されてるので小さな子でも外は見える。

 もう少し低いと身を乗り出せるんだけど……三階だから安全重視でも仕方ないか。

 落ちるよりはいい。


 気分転換がしたくなったら、またテラスに行こう。


 本を置いた小部屋に戻った時には、真っ暗だった。

 ど真ん中に本は置いたから壁伝いに奥まで行けば大丈夫。

 大事そうな物、蹴らないよ。

 最初みたいに魔力込めてないから持続時間短いのか、単に仮眠が寝過ぎたのか。

 腹時計的にはまだ空腹を感じないから、少し本を読む時間はあると思う。

 棒を置いた辺りと思われる場所の床を探ると、砂の感触があった。

 光れ~と軽く魔力を送ってみると砂のままでも淡く光った。

 本を読むにはもう少し高い位置の灯りが欲しい。

 膝丈くらいの円柱にしてみる。倒れないように下を太くしたので、頭を切った円錐か。

 眠気防止に消費魔力を節約したいので、凝った形にはしない。


 壊したりしないようにドキドキしながら表紙をめくってみる。

 メキッて鳴ったりしないか心配だったけど、自然に開く形まで開いて手を離しても大丈夫だった。

 ファルセディアの公用文字で装飾性も無い綺麗な筆致。これなら私でも読めそうだ。

 この頃から公用文字って広まってたんだね。

 言葉に対応する音の組み合わせだから文字にすると長く感じるけど、覚える数が少なくて使い易い。

 他にもひとつひとつに意味を持たせている文字とかが何種類もあるのは知ってるけど、あれ難しい。

 公用文字を全部覚えてれば充分だよ。

 意味のある一文字に装飾性を持たせて胸元にかっこよく書いたシャツとか都で流行ってるみたいだけどね。

 あれ、ちゃんと意味を確認してから買った方がいいらしいよ。

 学がある人が見たら爆笑物の文字を着て歩いてる人がたまに居るんだって。


 で、内容……。


『新たなる主へ』


 一頁目はそれしか書いてない。

 次の頁はいきなり『最重要事項』ときた。


『敷地を守る結界は館の魔力で維持している。

 打ち克てる強い魔力があれば突破は可能であるが、人も館も疲弊する。

 結界の継続が必要なら、出入りする時はこの指輪を使いなさい』


 指輪なんて何処にも無かったよ……。

 もしかして埃と一緒に掃き寄せちゃった?

 というか王子様の強引な突破、非常にマズイんじゃあ……。

 結界が弱ったら、ここも魔境に呑まれちゃうよね。


『館を封印した理由』


 ここからは長い。何頁も文章が繋がって続いている。


『かつてこの辺り一帯は、清浄な魔力に満ちた豊かで平和な土地であった。

 ラウニー族は土地の魔力と非常に相性が良く、全てが上手く行っていたのだ。

 我々が魔法を使えば使う程、源たるこの場所には力が溢れる。

 だからこの土地を離れる事を非常に残念に思う。仕方がないとはいえ。

 瘴気が覆う魔境は拡大し、我々が暮らすこの土地にも迫ってきた。

 代々蓄えた館の力も徐々に削られてゆく。祖父の代も父の代も。

 館の敷地を守るだけなら充分な残量があると祭祀を受け継いだ私は考えた。

 しかし、館を守れるだけだ。民の暮らしを守り続けるには足りない。

 だからまだ残量があるうちに。

 決して私の代で途絶えさせず、子孫がこの源の力を享受できるように。

 封印して子供達と民には移住させようと思う。ここ以外なら土地はいくらでもあるのだ。

 いつか瘴気が払拭される時代が来たなら。

 子孫よ、館の封印を解き放ち、ラウニー族の聖地にどうか繁栄を取り戻して欲しい』


 ……聖地?祭祀?

 お伽話でしか聞かないような単語が出てきた。

 読み間違いじゃないよね。他に似た単語って思い浮かばないし。

 あ、でもうちのご先祖様が領主だったという話自体がお伽話だったか……。

 ちょっとお伽話のストーリーを思い出してみよう。かなり昔に聞いたっきりだから、うろ覚えだけど。

 何種類かあったと思うけど聖地とか祭祀って言葉が出てきたのは、あれだ男の子が主人公で、気が強くて泣き虫のお姫様と森の中を冒険する話。


 昔々ある所に、聖地と呼ばれる楽園のような場所がありました。

 聖なる魔力の泉の上に立てられた大きなお屋敷を囲むように綺麗な家が並び……だったかな?

 祭祀様をしている偉いお爺ちゃんが出てきたよね。なんか最後の方。

 あれ、お爺ちゃんにあげるプレゼントが盗まれたから追いかけたんだっけ。

 冒険物はあんまり心惹かれなかったから全然内容覚えてないな。

 祭りの日に街中の人達が領主様の屋敷を飾り付けする話の方が面白かったな。変な物が一杯で。


 まあ、いいや。

 お伽話が本当にご先祖様で。ご先祖様がすごい人だってのはわかった。

 瘴気が払拭される時代……にはまだなってないんだけど。

 長文読んだから目が疲れてきたけど、もう少し続き読まなくちゃ。次の区切りの題名が気になる。


『子孫への願い』


 この続きを読んでから指輪を探そう……。

 そして次来た時に王子様に渡さなくっちゃ!

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