まずは間取りを確認
守り石さんの持つ力には頭が下がります。
光りました、光りましたよ。私にはそんな魔法使えないので、石が元々持ってた性質なんだと思う。
幾ら魔力を込めても薄ぼんやりで明るさは変わらないけど、手燭の代わりになるので歩けます。
形は邪魔になったり落としたりしないようにバングル型にしてみました。
時間が経って込めた魔力が足りなくなれば砂に戻ってしまうので至ってシンプル。装飾性は皆無でのっぺりとした太幅の。
薄いとはいえ石を手首に巻いてるわけだから若干重たいけど。まぁ、困る程ではない。
ところで冷静になったら、正面玄関がもし閉めたくなっても閉まらない事に気付きました。
私が中に入れるくらい大きいあの樽。
あれ水で満杯にしたら重すぎて、守り石の力を借りても私には動かせないんですよね。
王子様、よく持ち上げたな~。魔法使ったよね?素の腕力だけで持ち上げたりしてないよね?
触って魔力を通した後、王子様の手が膜に阻まれる範囲までは押し込んでくれたけど。
あと拳一個分、中に入れないと扉が閉まらない気がする。
荷物を纏める置き場所を掃除して作りたいとこだけど。その前に~。
建物内の探索を先に済ませてしまいましょう。
玄関ホールで生活するのって落ち着かない。ほどよい大きさの部屋がいいです。
あとトイレに適した場所は無いでしょうか。
頑張れば魔法で何とかなるけど、それにしても専用の場所にしておきたい。気分的に。
広くて人がたくさん働く建物なら、それなりの仕組み作ってありますよねきっと。
お城は特別かもしれないけど衛生的でした。備え付けの壷で水を流せば専用の場所へ流されていって処理されます。
専門の人が魔法で処理すると良質な肥料になるから、出入りの業者さんが仲介して近在の農家さんに売り払われる。
汚物処理棟は新人メイドの配属される掃除場所なので、初めて行った時に挨拶した責任者の文官さんが教えてくれました。
私の魔法じゃ肥料は作れないけど、似た仕組みだと処理や掃除が効率的に済むからいいなぁ。
とりあえず片っ端から入った部屋で窓があったら開けていきます。
玄関と同じで、魔力を少し流したらあら不思議ってくらい簡単に開く。魔力を流さないと開かないけど。
スリットがたくさん入った風通しのよい内側に開く窓と、外開きの頑丈そうな板窓。二枚仕立て。
同じ木製でも縁枠は玄関扉と同じで細かな装飾が入ってるけど、窓自体はシンプルで実用的な作りかな。
あ~開けるとスッキリ。結界の光だけど、外の明るさが入るっていいね。埃っぽい空気もマシになるし。
玄関ホールの近くは間取りが大きめで窓がある部屋が多い。仕事用のスペースかな。
部屋の中から更に角部屋に繋がってて、個室かな。そこからしか入れない隣の部屋は外に面してるはずなのに窓が無い。書類庫か物品庫かな。
階段は、ホールを出た正面に両サイドで折り返しになってる中二階付きの立派なのがあったけど後回し。
廊下の角を曲がって奥まった場所に二つ並んだこの扉。
表面前面を使った等身大の浮き彫りがわかりやすいですよ。スカートの女性とズボンの男性。トイレじゃないですかね。配置的にも。
まずは女性の方の扉から開けていきましょう。
正解でした。それらしき溝が床に掘られています。溝の行き先は不明ですが。
ちゃんと内側から錠を掛けれるようにもなってますね。小型の閂が付いてます。
一応男性の方も開けてみましょう。
同じ作りでした。
懸念が一段階解消したので、これで安心して探索を続けられます。
……生き物ですからね。大事ですよ!
行き止まりだったので今度は階段の前を横切って反対側へ。
建物の正面側はこっちも大部屋ですね~。あ、暖炉がある。煙突は私なら余裕で入れそうな大きさ。
盛大に焚火しても大丈夫そうですね。薪が無いけど。
廊下の途中で扉があった。裏手側と区切ってるみたい。
するとこちらは使用人とか裏方の区画かな~。生活するならこっちの区画だね。
調理場を発見。
建物と一体化した竈と大きな洗い場と小さな洗い場。堰付きになってて溝から排水できるようになってる。
そこに差し込む堰板が無いけど。あ、排煙用の高窓もあるね。棒で開け閉めするのかな、今は道具が無いから開けれない。
隣は洗濯場かな。こっちも似た作りの洗い場が備え付けられてる。それと勝手口。
もしかして出られたり……は、しなかった。正面玄関と同じ謎膜に阻まれました。
顔を突っ込んで覗いてみたけど別棟とか井戸とかは無いですね。正面と似たような殺風景でした。
後は小部屋ばっかり。どれも調度が無くて同じに見えるから用途の区別が付きません。
裏手にも階段がありました。上へ行くのと下へ行くのと。
どうしようかな……。同じ広さだとしたら探索だけで疲れて終わりそうだ。たぶん途中で。
必要な場所を掃除して生活できる動線を確保してからにしようかな……。
勝手口に近い場所の小部屋が使いやすそうだな~と思うけど。
この階にあるトイレはぐるっと回って反対側か。動線長い。
使用人用の生活関連は階段の下かな。表側には下る階段が無かったし。
下だけ、見て来よう。
階段の下にすぐ扉がありました。それはいいんです。
それはいいんですが……これ、何?
光の渦。
私の守り石さんよりちょっと明るいくらいの光が空中に渦巻いてる。
一個一個は拳サイズで小さいんだけど、点々とやたらたくさん廊下の奥まで浮いていた。
赤青黄橙紫緑……様々な色の光。それぞれが底栓を抜いた時の水面に現れる渦みたい。
幻想的で綺麗なんだけど、ちょっと近付くの怖い。見た事ないよこんなの!
速攻で引き返しましたよ。何が起こるか怖いもの!
次に王子様が来てくれた時に何なのか聞こう。それまで地下はもう行かない。
二階と三階も見ておいた方がいいかな……。
上も渦だらけだったら即諦めて戻るから、確認だけ済ませてしまおう。
上階も表区画と裏区画の廊下が扉で仕切られてました。
裏区画は小部屋ばっかり。小部屋から表区画の部屋に繋がってたりする場所もあった。
ダンスが出来そうな広間が大きな面積を占めているから二階は部屋数が少ない。
二階はさくさく終わったから三階まで制覇できそう。
三階は居住空間だけかな、目立たない位置から幅にゆとりはあるけど大仰ではない階段が上に向かっている。
そして三階に。
今すぐ王子様を大声で呼びたくなるような代物が置いてあった。
この館の間取り図を刻んだ壁画の足元に……。