価値観
路地裏に入ったところを見計らい、二人は獣人と奴隷少女の後に続きこう言い放った。
「ちょっと。あなたの隣にいるのは奴隷でしょ?この国では禁止されているんじゃない?」
「誰だ」
ロズがきつく言うと、明らかに警戒しているのがわかるような声で返してきた。
「あたしが誰かなんて言うのはどうでもいいから。そこの娘は、さっき買った奴隷でしょう?」
「ほう。見ていたのか、ならば仕方ない。貴様らには死んでもらおう」
と言うとどこから取り出したのか日本刀のような物を両手に握っている。
「ロズ武器持ってる?」
「一応もしもの時のために投擲ナイフなら」
腰元の辺りから手のひらサイズの投擲ナイフを取り出した。さて僕はどうするべきかな。日本刀と、投擲ナイフだけど剣士らしいから大丈夫だろう。うん。暇だな。などと思っていると、獣人が綺麗な面打ちをしかし、それを平然と投擲ナイフで軽くいなし躱す。だが獣人はすぐに体をきりかえし、今度は胴狙い一振りするが、これもまた後ろにとんだロズが躱す。突いたり横に一振り縦に一振りフェイントなども交えているが全て簡単に躱されてしまう。しかし妙なことに、獣人が疲れを見せないのに対しロズのほうに疲れが見える。これはマズいな。疲れのせいで徐々にロズの動きが鈍って来ているような感じがする。さて僕はどうするかな。よくわからないが異世界に召喚されたのだからひょっとしたら手のひらから波動砲の一つでも撃てるのでは?よし。ものは試しだ。両の手を獣人に向け手のひらに力を込める。しかしなにも起こらない。波動砲がだめなら火は?これもダメ。じゃあ水は?これもダメ。じゃあ風は?これもダメ。
あれ?僕って何もできないの?魔法の使えない異世界って通話と、メールのできないガラケーと同じレベルの価値しかなくね?