魔法
コインが落ちた瞬間ロズの剣(木刀だが…)の剣先が左肩めがけて飛んできた。が、体を左にひねりスレスレでなんとか躱すと剣が横にスライドして大の胸めがけ襲いかかってきた。これは、剣(木刀だが…2回目)でなんとかはじき返したのだが、ロズの剣の勢いに負け体制が崩れる。そこを逃さずロズは、喉元をひとつきにしようと剣先喉に向け突撃してくる。それを体をひねり回避――――― するのは無理なので手をクロスさせて喉元への攻撃をなんとか防御する。攻撃に移ろうとするもロズの攻撃がおさまらずなかなか反撃のタイミングをつかめない。そんなとき
「ねぇ君の『力』ってなに?」
『力』?『力』てなんだ?つか、よくこんな状況で話しかけてこれたな。余裕すぎんだろ。
「はぁ、『力』はぁ、ってなん、だ?」
瞬間攻撃が止まった。
「『力』って何ってマジていってんの?」
ロズの問いには答えない。正確には答える暇が、余裕がない。なぜならもう攻撃に身を転じているからだ。ロズの足首めがけて横に一閃バランスを少し崩させたところでノーガードの鳩尾めがけて拳をいれる。パシッと、軽い一撃がはいった。軽い本当に軽い一撃がはいった。たいしたダメージはないが、隙を作るには、十分だった。しかし、悲しいことに全力の一撃だった。全力の一撃が軽いダメージをほとんど与えることの出来ない一撃なのは、さっきロズの攻撃を手をクロスして攻撃受け止めたとき利き手である右手上にしてガードしたため、右手にとんでもないダメージ受けたのだ。右手に力が入らない。痛い。痺れる。感覚がなくなってきている。
だから?だからどうした?右手がダメ?ならば左手がある。左手がダメになったら、右足。右足がダメになったら、左足。左足がダメになったら、そん時はそん時だ。
だが、よく考えてみればここは、異世界だから何でもありだろ。どうせ治癒魔法の使い手なんて、すぐにみつかんだろ。そう考えると結構思いっきり動ける。ストレート、ジャブ、回し蹴りをどんどん出す。途中フェイントを仕掛けたりと、相手を翻弄していく。決めに行こうと、一歩踏み込み右ストレートを繰り出す瞬間
「ミスト」
辺りが真っ白になった。これは、異常気象ではない。超常現象、魔法だということはすぐにわかった。そうロズが魔法を使ったのだ。