初戦闘
ちと短いです
走り出してから数分が経った。数分と言ったが身体能力が強化されているのだ。相当な距離を走ったのだろう。しかし息は切らしていない。
するとある物が目に着く。白いモコモコした小動物が二足歩行をした猪らしき生き物に襲われている…
「なんだ?あれが噂に聴くオークとやらなのか?」
俺にも少しぐらいならファンタジー知識はあるのだ。一時期、クラスでそういう系の話が出回り、知識としては頭に入っているのだ。
「まぁなんにせよ、助けないといけないだろうな。よしっ、初戦闘だ!」
そう言って俺は背中にある【光耀】と【常闇】を鞘から出しながらかけて行った。俺は魔法で身体能力を上げオークに近づいていく。自分より40センチ程背が高く、腹は大きく出ている。棍棒を持っている個体に魔力を通した【光耀】で一振。
斬ッ!!!
オークの腹からは血が飛び散るように大量に出て来た。返り血がかかる。うん。汚い。
そしてオークは呆気なく息絶えた。まぁ腹真っ二つに切られて生きてる方が怖いが。
「案外平気なもんだな。普通は吐いたりしても可笑しくないんじゃないのか?まぁ、いい。それよりも───」
仲間の一体を殺されたオーク達は目に見える程にみるみる赤くなっていった。そして何匹かのオークが棍棒を持って突進して来た。降り掛かってくる棍棒を俺は魔力を通してない【常闇】で受けた。魔力を通した【常闇】で受けると棍棒が切れてしまうと思ったからだ。
「くっ!重い…なァ!」
自分の3倍は体重がありそうだ。そりゃ重い。
俺は力任せにオークを弾いた。その隙に俺は魔法をイメージする。イメージするのは雷の球。それをオークに当てるように飛ばす。オークは雷の球が高速で飛んできたもので避ける事も出来ず当たる。すると、感電した様に痺れてうつ伏せに倒れて動かなくなる。
雷によって神経が麻痺しているのだろうか。俺は倒れているオーク達にとどめを刺す。首に一撃でだ。そして素早く。冷静な判断が出来る。
特に不快感はないが返り血が実に鬱陶しい。
「次ッ!」
最後の1匹はボロボロの剣を持っている。そのオークはさっきまでのオークとは違った。速いのだ。俺は降り掛かってくる剣を回避する。こんな動きは初めてだが違和感がない。
オークはバランスを崩したので、一気に切りかかる。
斬ッ!!!
オークの首から上が墜ちた。魔力を通して振った【光耀】はとても威力が強かった。骨を断つときの感覚が気にならない。刀の性能が良すぎる。もっと使いこなさないとこの刀に申し訳ない。
「兎に角、初めての殺傷か。この精神安定さは異常かな。ははは」
俺は水を魔法で出し刀に付いたオークの血を洗う。そして取り耐えずオークの死体を【ディメンションボックス】に仕舞う。
「ふう。これで一件落着かな」
俺は横たわっている小動物に近づく。猫のように…いや猫だ。可愛かった。
「可愛い…いやそんな事よりも寝てるようだな」
白い猫は寝ていた様なので、俺は食料確保する為にオークを解体してみる。幸い解体用のナイフはあの小屋にあったのでそれを使う。
困った。何処から解体したらいいのだろうか?ぬくぬく育ってきた俺に解体なんてした事が無い。だがやらないといけないのだ。だが生きていく上で基本的な構造は人間と同じだろう。歩いてたし。
意を決して俺は首の切断面に刃を入れる。
ここでも幸いなのが、首をチョンパしたことで血抜きはされているみたいだ。
先ずは皮を剥いでいく。そして剥ぐ途中で内蔵を傷付けない様に取り出し捨てる。そして骨ごと切って肉を小分けにする。最初は血の匂いが嫌だったが慣れてきた。
「これでいいかな?初めてにしては中々良かったんじゃないか?」
早速食べようと、まな板を出して包丁で切る。そして切った肉を特に味付けもせず鍋で焼く。尚火は魔法と枯れて落ちた木で付けている。
「味付けを出来ないのは残念だが、街に行ったら調味料が手に入るだろう。それに中々美味い」
オークの肉は脂がのっていて噛みごたえのある味だった。
白猫が起きたようだ。辺りを見回し、俺の方に寄ってきた。
「ん?起きたのか。食いたいのか?」
そう言って肉をチラつかせると目がキラキラさせている。よく見ると毛並みがとても綺麗だ。
俺は肉を白猫にあげた。白猫は喜ぶように勢い良く食べた。
「警戒心が無さすぎるぞ、お前。そう言えば親は居ないのか?」
俺がそう聞くと白猫は首を傾げた。言葉が分かるのだろうか?
「分からないならいいさ。俺はこれから行くけどどうする?」
すると白猫は一緒に行くとでも言うように、立ち上がった俺の肩に乗ってきた。
「そうか。じゃあ行くか!」
『ガウ!』
見た目に反して中々の声だった。まぁ、猫は嫌いじゃないし良いか!
「じゃあ、名前決めとかないと色々と不便だな。何が良いだろうか…白……ハク…白亜、ハクアにしよう!」
『ガーウ!』
気に入ったように声を上げた。
「俺は神ざ…いや姓があるのは貴族とかだけかもしれないから…アルト!俺は今日からただのアルトだ!」
アルトこれからはそう名乗る事にする。俺はハクアを連れて森を出る。