古びた小屋
本日二話目
「はぁ…歩き出したのは良いんだけどもう二時間近く歩いてんな。そういや忘れてたけど、身体のどこが変わったんだろ」
そう言って俺は自分の体を探る様にぺたぺた触りはじめた。
「うーん、髪はちゃんとあるし色も変わってない。肌の色も変ってないから、目の色かなー?結構気に入ってたんだよな黒髪黒目」
愚痴を零しながら歩いていると開けた場所に今にも崩れそうな小屋があった。俺は周りに警戒しながら小屋に近づいていった。
「何だ此処は?すいませーん何方かいますかー?」
返事は帰ってこない。意を決して中に入ることにした。
「お邪魔しますねー。っと随分古いな…こんな太い柱がここまで腐るなんて…うわああぁぁっ!」
そこには服を着た白骨死体があった。しかし俺は思いの外驚かない自分自身に驚いていた。
「ビビったー。というかそんなに驚かないんだな俺。こういう精神的な面も適応されたのか、それとも元からこんな感じだったのか」
普通の日本人だったら失神しても可笑しく無いんじゃないのか。
「ここで俺が来たからって、動き出すとかないよな。そういうの望まないよ俺!」
俺は暫く待っていた。別に期待してないよ?安全確認のためだよ?
結論を言うと全く動かなかった。触っても反応が無い。さっきまでの俺が恥ずかしい。
なので俺は部屋を物色する事にした。どうやら此処は数十年前までに魔術関連の研究をしていたらしい。それも結構凄腕らしいのだ。そして俺はこの世界の様々な知識を得ることが出来た。
この世界はアルテファスと言うらしく、世界人口が約20億人いると言われていて男女比が男が4女が6で一夫多妻が一般的なようだ。魔術や魔法とあるらしい。
先ず魔術は自分が体内に持っている魔素、通称『魔力』を触媒となる杖などを通して発現させるようだ。これは全体の4割が使えるらしい。
一方で魔法は二種類あり普通の魔法と精霊魔法に分けられる。普通の魔法は魔力を触媒となる杖などを通さずに発言させるらしい。これが出来る者は極わずかだという。そして精霊魔法は契約した精霊の力で空気中の魔素を直接変換させるようだ。これは基本的にはエルフなどの自然に近しい者が使えるようだ。
そして種族では人間のほかに沢山いるのだが、未だに対立しているのが魔族だ。何度も戦争をしてるが魔族は他の種族に比べ強い。しかし数が少ない。今は休戦しているらしい。
そして此処には魔法適性を調べる魔道具があった。魔道具とは錬金術で作り魔法適性がない者でも魔法が使えたりするアイテムでとても便利たのだ。話を戻すがこの魔道具で俺の適性属性を調べることにした。
「ええと、これに手を翳すんだよな」
そう言って俺は水晶体に手を翳した。水晶体が光出した。
「俺の適性属性は…火、水、風、雷、無、呪か。使えないのが土、闇、光、聖ね。これはいくら何でも多いだろう」
この世界の魔法が使える者は殆どが一つで多い人でも四つだったらしい。この中で特殊なのが無属性でこの属性は沢山魔法がある為使える魔法が限られてくるらしい。
魔法や魔術を行使する上で大切なのはイメージだという。イメージを固める事で魔法は簡単に出来るそうだ。
一度外に出て試すことにする。
「イメージ、イメージ…」
俺がイメージしたのはウォーターカッター。岩さえも水の圧力で切る凄まじいものだ。俺はそれを手から出す様にして周りの木に水平にスライドさせるように手を動かす。
「ふんっ!」
またこれもスパスパ切れたのだ。今気づいたのだがどうやら俺は触媒を必要としない魔法を使えるらしい。
「爽快だな」
そう言って俺は小屋の中に戻っていく。また、物色すると他にもいろいろ出てきた。ここら辺の地図だ。これで街に行けるだろう。あと、魔術の研究結果などの本。役に立つだろうと考えて【ディメンションボックス】にほいほいと入れていく。
途中でいい物が出てきた。一つ目は真っ黒い外套。非常に軽いが素材の影響で防御力がとても高いらしい。素材がわからないのは気になるが着ようと思う。少しサイズが大きかったが動きに支障は出ない大きさだった。背中の太刀が邪魔になると思ったのだが、何故か丁度いい所に穴が空いていていい感じだった。前の所有者は何者だったのだろうか?
二つ目ははたまた素材がないブーツで防御力が高く通気性が良い様だ。それにサイズが変わる優れものでとても良かった。これも履く。
そして何よりも調理器具があったのだ。これはとても嬉しい。両親が共働きで飯係は俺だった。一流シェフとまでは行かないが、結構腕に自身を持っている。とても気持ちがハイになった俺は調理器具を仕舞い小屋を出ることにした。
地図もあるので目指すは街。歩いていくと腹が持ちそうにないので身体強化の無属性魔法を使っていく。走っているうちに手をあまり振らない方が速いと気が付いた。こんな走り方は前世ですると恥ずかしいが、外套に手が隠れているので問題ない。
俺の冒険は始まったのだ!なんて恥ずかしいから言わない…
感想カモン!