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転移

 

  「は、はぁ。」


  この世界でとても偉いだろう神様が俺に質問するとは、どんな質問をするのだろうか。俺に答えることは出来るのだろうか。


  理解出来なかった。


  「難しい顔をしとるのう。大方何故ワシがお主に質問するかじゃろう?」


  「ーーッ!」


  まさか、心が読めるのか!?流石神様と言ったところなのか?


  「図星の様じゃの。だが残念ながら此処…神界では心を読むことを禁止されておる。」


  やっぱり心を読んでいるんじゃないのか。いや…俺が顔に出してただけなのかもな。取り敢えず落ち着こう。


  わざとらしい咳払いをする。


  「ゴホン……それでヴァルトスさんは俺に質問とは何ですか?」


  「あぁ。そうじゃったの。何、そう難しい事ではない。お主は人間が愚かだと思うかね?」


  「は?」


  この人は何を言ってるんだ?俺の耳が正しければ人は愚かか?と言われたのだが。何故神がそんなことを聞く?また…理解できない。


  「人間は愚かだとお主は思うかね?」


  俺の聞き間違いでは無かった。


  「何故そんなことを?」

 

  「それは訳あってまだ言えん。」


  神にも事情があるのだろう。それに"まだ"と言った。何時かは話してくれるだろう。そんなことより考えないとな。


  「少し時間を貰えますか?」


  「うむ。いいじゃろう。」


  人が愚かだと思われる理由……何だろうか。


  戦争…同族でずっと殺し合ってきた人間。


  環境破壊…資源を使いまくって地球を汚し他の生き物の命を必用以上に奪った人間。


  虐め…本来仲間の筈なのに非人道的な扱いをする人間。


  差別…些細な差で罵り合う人間。


  キリが無かった。人間は自分勝手でどうしようもない生き物だ。


  けど…それでも…人間には美しい面もある。子を愛する親。信じ合う仲間。出来ることを積極的にする人間。 努力する人間。助け合う心。


  人間は確かに愚かなのだろう。でも美しくもある。どちらが正しいなんて無い。見方の違いだ。見る角度が少し違うだけでこんなにも違うから。


 


 


  そんなのは違う。これは俺の考えでは無い(・・・・・・・・)。これは受け売りだ。読んだ本に書いてあった。実際のところ、人間が愚かなんて知らない。簡単に答えるべきではないだろう。そしてあの神は俺の(・・)答えを知りたい筈だ。其所に他人の答えを入れてはいけない。なら…なら俺が答えるべきことは──────


  「ヴァルトスさん…出ました。」


  「そうか。では聞かせてもらおうかのう。」


  「はい……俺の答えは『分からない』です。」


  素直に思ったことを言う。求められている答えでは無いかも知れない。それでも俺はここで嘘をつきたくはない。


  「ほう。何故か聞いてもよいかの?」


  「はい。俺は人間が…人の心が分かりません。何時も人の顔色を窺って行動し、周りに合わせて笑い、他人とズレている自分を隠して生きてきました。そんな俺に人間を語る資格はない。だから分からないんだと思います。」


  「資格がない…か。ふふふっ、ふふふふふ。」


  突然笑い出した神に俺は訳が分からなくなった。


  「あのヴァルトスさん?」


  「ああ。すまんのう。こんな人間も居るのかと思ってな。うむ。素晴らしい答えじゃ。」


  「は、はぁ。」


  もうさっぱりだ。何がしたいのだろうか。この神様は。


  「お主異世界に行って答えを探して来ないかの?」


  「は?異世界ですか?」


  「そうじゃ。お主には異世界に行って答えを探してきて欲しいんじゃ。」


  へぇ。異世界って本当にあるんだな。


  「いくつか質問していいですか?」

 

  「うむ。何を聞きたい?」


  「その異世界がどんな世界なんですか?」


  これは真っ先に知って置かなければならないだろう。


  「剣や魔法があって人間以外の知的生物がおり、物理法則が成り立たない世界じゃよ。世界観は中世ヨーロッパに似ておるぞ。」


  あー。これ知ってるわ。異世界転移って言う物語の一種だな。それにしても物理法則が成り立たないって凄いな。まぁ全部が全部成り立たない訳ではないと思うけど。


  「やっぱりモンスターなどはいるんですか?」


  「あぁいるとも。じゃが安心しろある程度は強い体にするからの。」


  ならいいのかな?興味が湧いてきたな。


  「まぁその辺のこともふくめてある程度の知識は授けよう。」


  「ふむ。それは有難いですね。分かりました。異世界に行きます。あ、でも連絡するのはどうしたら良いですか?」

 

  「教会に行って祈れば会えるじゃろう。」


  「答えを言ったあとはどうするんですか?」


  「好きに生きてくれればいいぞ。」


  それだけ聞いていると俺ばかり都合がいい気がするが。まぁいいか。恐らくこの人に悪意は無いだろう。


  「ただの。デメリットもあるんじゃ。お主を転移させるには世界に干渉するということでな、穏便に済ませるにはちと問題が発生するんじゃよ。」


  「ぐ、具体的には?」


  「そうじゃの。髪が無くなったり、髪や目、肌の色が変わったりするな。」


  「マジか…髪が無くなるのは勘弁だな。」

 

  15歳でハゲとか洒落になんねぇよ。


  「それでも転移するかの?」


  「はい。ハゲだけは勘弁して下さいね。」


  「それはランダムじゃから分からんぞ。他に質問はないかね?」


  「はい…いや、そう言えば俺が助けたあの少年どうなりましたか?」


  「無事じゃよ。あの子は将来名医になるぞ。」


  「へー。それは良かった。」


  俺の生命いのちは役に立ったか。


  「さてそろそろ転移するかの。」


  「はい。そうですね。お願いします。」


  「うむ。達者でな。良い答え待っとるぞ。」


  俺の身体が青白い薄い光に包まれる。転移が始まったのだと直感的に分かった。自分でも分からないことは多い。でもやれるだけやってみようと思う。


 


  ◇ ◇ ◇ ◇





  気がつくと俺は森の中に寝転がっていた。








 

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