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序章 龍炎 誕生 4
「!」
それを見て驚いたのは、龍炎だが、同じように驚いたのは妖も、であった。
何せ、龍炎のように陰陽道に通じており、なおかつ『見鬼の才』を持つ者であれば、自分の身体が見えていても不思議ではないと思っているのだが、どう見ても普通の町娘にしか見えない女に、「自分の姿が見えている」だけではなく、「触れられた」ことに、何より驚いていたのである。
食べかけていた魚の身が、ぽろりと口からこぼれるほどにあんぐりしている龍炎を見て、女は不思議そうに言った。
「どうかなさいました?」
その言葉で我に返った龍炎は、膝にこぼれた魚の身を慌てて拾い集めて口にし、飲み込んだ後、身を乗り出して女に問うた。
「お主、こいつが見えるのか? いや、今、こいつに触っておったな? 怖くはないのか?」
女は,また不思議そうな顔をしている。