『よろづ困り事相談処 お祓い屋』の物語~
術士・龍炎。
彼のもとの名前が「安倍晴明」だったことは、ほとんどのものが知らない。
そんな彼が、京の街を守るために、ありとあらゆる手をつくし、魔物から人々を守るお話。
龍炎は、屋敷を出ると同時に「安倍」の名前を捨てる。
父は、龍炎に「晴明」の名前を継がせるつもりだったという。陰陽道にすぐれているのは、兄よりも龍炎の方だから、と言う理由で。
確かに、何かにつけて兄は失敗をやらかし、父に叱られていた。
しかし、龍炎は兄の真の力を知っていた。兄は、父が言うような『一本ねじの抜けた間抜けな陰陽師』ではないし、『真の陰陽師として賞賛に値する優れた力の持ち主である』と、父が称した龍炎よりも、はるかに優れた力を持っていることを。
ただ、兄は全くと言っていいほど、父の前ではその力を見せなかったに過ぎないのだ。
龍炎は、兄ほど社交的ではない。どちらかと言えば、人付き合いは苦手な方だ。
そんな龍炎だから「晴明」の名前には全く固執していなかった。
その少し前、龍炎は人魚の毒に苦しむハメになった。
結果として、致し方なく、父は「晴明」の名前を兄に継がせることを決意する。
龍炎が人魚の毒に倒れて一週間の後、兄が「安倍晴明」として、帝の前に参内し、事は済んだ。
見た目の違いを帝に問われた兄・晴明は、
「人魚の肉を喰ろうたが故に、多少の違いはあるやも知れませぬな」
と、こともなげに答え、帝の口をあんぐりさせた。
この時以来、兄は「二代 晴明」を名乗り、表舞台の出世道を突き進んでいく。
と、同時に、龍炎は安倍の姓を捨て、一介の術士『龍炎』として生きていくことを選んだのである。
人々の暮らしているところから少しだけはなれたところに残っていた小屋を選び、そこを綺麗にして住まいと定めた。
『よろづ困り事相談処 お祓い屋』のはじまりである。
「夢小路亭・別館」(http://books.yumekohji.net/)でもあぷしてます。
突っ込み処は満載だと思うので、じゃんじゃん突っ込んでください。
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