まずは部活紹介を、
「今日の議題はコミュ力について、に只今決定しました」
放課後の多目的室、六つの机を合わせた即席会議卓の上側に座る司会者の男子生徒が力ない声で言った。
「やっとその議題ですか……部長、今日こそしっかりした部活をしましょうね」
「そうですねー。がんばれ涼くんっ」
右上側からじとーっと睨め付ける涼くんこと林田涼はため息をついて頬杖をつく。軽い相づちを打ったのは書記役の東谷香織。両手を胸の前でぐっと握り涼に笑顔を送り一層深いため息を返されている。
これは、とある高校の『コミュ力研究部』という部の活動である。詳しい事は省略するが、コミュニケーション能力を上げる名目の上に議論をする部活である。部員は5名、部長兼司会者である日谷将司、一部員の林田涼、書記の東谷香織と。
「そうだね、がんばろう! 涼先輩!」
「しかし今日も東谷さんと二葉ちゃんはかわいいね」
左上に座るこの中で一番やる気に溢れているであろう元気な一部員その二、二葉三津音と二人の女子生徒を交互に見てニヤついている一部員その三、武田信一である。
皆が議題について一通り反応を示し、司会者を、日谷を見る事三秒。
「今世間でよく言われている『コミュ力』なるものは、我々も近いうちに強く関わることになると思う。だからだ。その『コミュ力』がなんたるかを議論してもらう。では香織くん、まずはその『コミュ力』とはなにかを説明してくれるかい?」
やや畏まった文を日谷が気怠く適当に言い放つ事でこの議論は始まる。
「はい、『コミュ力』とは所謂コミュニケーション能力の事ですねー。ざっくり言い換えると人との意思疎通をうまくできる能力になりますっ」
早くも会議記録ノートなるものにウサギを描き始めた香織を横目に涼はため息をつく。
「はぁ。そうですね、じゃあまずはこの人との意思疎通を具体的に何と言うかをはっきりさせた方がいいと思います。僕は情報伝達の確実性をいうと思うんですけど、ネットで見る限りは相手の考えを読み取り望み通り行動する、例えると犬になる力という意見をよく目にしますね」
「先輩! いつも言葉が辛辣ですよっ!」
「さすが我が部のエース、下調べもしっかりしているじゃないか」
「エースって何ですか……。下調べもなにも今決めたばっかですし——」
うんうんと頷く日谷をじとーっと睨みつけた後、上体を乗り上げた三津音を顎でさす。
「じゃあお前がなにか優しく言ってくれ」
「はひ!? えっと、『コミュ力』とは愛ですよ!」
香織がノートのウサギにハートを書き込む。
「それなら、この日本は愛に満ちているんだな。——っふ」
「先輩!? 鼻で笑いましたよね? もう、ひどいですよー!」
香織がノートのハートに割れ目を入れる。
「いやいやすまない。あまりにも幸せそうなんでつい」
「絶対、馬鹿にしたでしょ!」
涼はぷくーっとわかりやすく怒りを表す三津音から目を逸らすと、その先では香織にまじって武田がノートに落書きをしていた。
「武田先輩、『コミュ力』って何だと思います?」
武田は爽やかに微笑み、もはや落書きに没頭してしまっている香織を見ながら
「愛、だよ」
「「うわぁ……」」
涼と三津音が嫌そうに上体を反らす。
「涼先輩……なんかごめんなさい」
「こっちこそごめんな。議論がつまらなすぎてつい言い過ぎた」
しゅんとして机に突っ伏した三津音の頭を撫でながら涼は日谷を見た。
「今更なんですけど、なんでここってコミュ力研究部っていうんですか?」
「あー、それはだな。コミュ力上昇は就活に大事である、コミュニティーとは話し合いである。話し合いとは議論を通じてうまくできるようになるんじゃないかって感じで思いつきで新設届けだしてみたら通ったから、せっかくなので人集めて活動してみようと思ったら出来たんだ」
「部長、なんかムカついたんでジュース買って来てくれませんか?」
「それが部長に対する態度か? まあいいけど。なににする?」
「メロンソーダで」
「あいよー」
設立三ヶ月、議論を初めて雑談で終わる、いつも通りの放課後が始まるのである。
平均議論時間約十分、今日の議論は約十分だった。
春休みの方もいると思います、わたしがそれです。
暇過ぎるとこうなります。わざわざネットに晒すのはモチベの向上のためか、ただの気分か……。正直ごめんなさい、思いつきで勢いで書いたものになります。
シリアス無しの日常ほのぼのに飢えておりますので、もしこれを見られた素晴らしく優しい方がいましたら、まず先に、ありがとうございます。
そして、オススメを紹介して頂けると幸いです。跳ねて喜びます。