第99話・わたし達の予想外の展開に・・・
わたしの投げた車の鉄くずボールが見事にヘリコプターに命中し、その場で爆発して粉々に砕け散った。
「イェ~ィ!!」と両手でガッツポーズするわたし。
両サイドにいたヘリはすぐさま左右に退避し、後からやって来たヘリ部隊と合流した。
「どうするつもりかしら?」と上空を見上げるわたし。
「今度はわたしの番ってことよねェ!」と駐車場に足を踏み入れる幸恵。
❝ズシ~ン!ズシ~ン!❞
「何よ!こんなものっ!え~い!!」
❝グッシャーン!グシュグシュグシュ!❞
幸恵はいきなりズラリと並んだ車の列をブーツを履いた美脚で乱暴に掻き分け始めた。
彼女のブーツのソールが駐車車両をグシャグシャに押し潰しながらスクラップの山を築いていく。
「こんなもんかしら?」
「それじゃあ、わたしの投球を見るがいいわ!」
そういいながら彼女は足元のスクラップを掴み取ると、クシャクシャに丸めながら思いっきりヘリ部隊に向かって投げつけた。
「ソレ~!」
❝ビュイーン!❞
❝キューン!ズヴァッ!❞
彼女の投げた球は武装ヘリのコックピットにもろに命中した。
そして火の玉になって墜落していく。
「わたし達に逆らうとこうなるのよ!」
「わかったらさっさと降伏しなさい!」
少しイライラした口調でヘリ部隊に向かって叫ぶ幸恵。
すると後からやって来た3機のヘリがわたし達のはるか上空までやって来ると、機体の下に装着していた小型タンクのようなものを一斉に投下した。
「あれっ、何かしら?」
とわたしが落下するタンクを見つめていたらいきなり爆発した。
❝ヒュ~、ボン!❞
爆発と同時に緑色の液体が飛び散ってわたし達に降り注いだ。
「ウワッ!何なのよ~!」
細かい緑色の飛沫がわたしの顔にも掛かった。
そこでわたしはすかさず地面に向かって唾を吐いた。
「カッカァ~、ぺッぺッぺッ!!」
出来るだけ口の中に液体が残留しないように唾を吐きまくるわたし。
「幸恵さ~ん、大丈夫ですか?」と彼女の方を向くとうずくまっている姿が見えた。
ちょうど彼女の頭上でタンクが爆発し、液体がもろに顔に降りかかったようだった。
顔中に緑色の液体が掛かり、四つんばいになって唾を吐き続ける幸恵。
「ぺッぺッぺッ、カァ~~ぺッ!!」
液体は彼女の目にも入ったらしく手袋をはめた手で盛んに両目を擦っている。
「幸恵さん!」とわたしが再び呼びかけるとようやくわたしの方を向いた彼女。
「なんだか、すごく気持ち悪いの。」
「目も凄く痛いし、口の中も苦い味がする・・。ぺっ!」
尋常ではない状況に陥ったわたし達。
幸いわたしは液体の直撃は免れたし、すぐに唾を吐いたから口の中もそれほど苦い状態ではなかった。
そういえば以前同じようにヘリからの化学兵器による攻撃で意識がもうろうとした事があったっけ。
でもあの時は無味無臭の液体だったし、結局はわたし達を一時的に動けなくする程度のものだった。
でも今回はあの時よりも強力な化学兵器らしい。
幸恵の様子があまりにもひどいので、わたしは彼女を抱き起こしにいった。
「大丈夫ですか?」
「もっと唾を吐いた方がいいですよ。」と語りかけるわたし。
小さくうなずきながら唾を吐き続ける幸恵だった。
しかし彼女の体はぐったりとして苦しそうな状態は変わらない。
すると突然両手で口を押さえる彼女。
「オェ~!ゲロゲロッ!!」
凄い勢いで嘔吐し始める彼女。
思わず彼女の背中をさすりながらひたすら優しく寄り添うわたし。
先程タンクを投下したヘリ部隊はどこかに飛んで行ってしまっていた。
そして地面に向かって激しく嘔吐を繰り返す幸恵。
黄色く濁った彼女の吐瀉物が地面を埋め尽くす。
凄まじい悪臭が立ち込めて、わたしまで吐きそうになってしまった。
「わたし、もうダメかも・・。」そういって地面に倒れこむ彼女。
こんな姿のジーパンレディーなんて見た事がない。
わたしはポケットから携帯を取り出して時間を確認する。
ちょうどこちらにやって来てから50分ほど経っていた。
こうなったらもう街を破壊するどころではない。
何とか彼女を連れて元の世界に戻らなければならない。
するとわたし達の前後左右から物々しい音が聞こえてきた。
辺りを見渡すとタイガー戦車を先頭に装甲車やその後ろには大型トレーラーやトラック部隊までもがわたし達に向かってやって来るのが見えた。
「わたし達を捕まえる気ね。」
「絶対に許さない!」
❝ズシ~ン!ズシ~ン!ズシ~ン!❞
とりあえず正面のドイツ軍部隊に向かって歩き出すわたし。
先頭のタイガー戦車に手を掛けると一気に持ち上げて後方のトラック部隊に向かって投げつけてやった。
「これでも喰らえっつ~の!エ~イ!」
❝ズッヴォ~ン!ボヴァ~ン!❞
わたしが正面のドイツ軍部隊を痛めつけている間に左右と後方のドイツ軍部隊が倒れこんで動けない幸恵に向かって迫っていた。
先陣の歩兵部隊の一部がすでに幸恵のロングブーツの周りに集結し始めている。
動けないジーパンレディーを前に大量のドイツ兵達が群がり始めていた。
一種異様な光景を見つめ続けるわたしだった。