第91話・戻ってきたわたし達
小人の世界から戻ってきたわたし達。
メンバー全員が暴れまくった充実感と爽快感でいっぱいだったが、町を破壊できなかった悔しい気持ちもちょっぴり残っていた。
りんり~ずのレディース達にとっては薄暗いいつもの公園に戻ってくると、今までいた世界がまるで白昼夢のような感覚になっていただろう。
「今までのってリアルなんですよねえ?」と洋子が幸恵に尋ねる。
「リアルなんだけど変な感覚よねえ。」と前回味わった思いを後輩達に伝える幸恵だった。
「こんなに暴れまくったのって初めてかも・・。」と仁美。
「アリンコを踏み潰すのとは全然違った感じっすよねえ。」と里緒。
「ワタシったら調子に乗って凄い数の小人達を踏み殺しちゃったみたい・・。」と仁美がブーツの靴底を見ながらつぶやいた。
現実の世界に戻ってくると、さっきまでの爽快感は消え失せて徐々に罪悪感や気まずい感覚が湧き上がってくる。
わたしが最初に味わったのと同じだ。
暴れだすと手がつけられない彼女達も根っからのワルではないから、だんだんとトーンダウンし始めた。
「あのまんま町に乱入して大暴れしてたら、わたし達罪もない人達を大勢殺していたんですよねえ。」と洋子。
「それって、やっぱりマズイっすよねえ。」と里緒が小さな声でささやいた。
「ホラァ、みんな!悪党どもをやっつけたって事でいいじゃん!」と幸恵が明るい声でメンバーを励ます。
「でも、やっぱり町で思いっきり暴れたいかも・・。」と仁美。
「じゃあ、またひと暴れしに行くって事でいいわね!」と幸恵。
その言葉にメンバー一同がうなずいた。
「それじゃあ、今度は小人達にわたし達のオシャレなスタイルでも見せつけてやる?」と幸恵。
「特攻ブーツじゃないんですか?」と麻美が意外そうな表情で尋ねる。
「わたし達だってたまには女性っぽい格好もするわよ。」と幸恵。
「今度はわたし、ヒールの高いロングブーツで来ようかなあ。」と洋子。
「わたしだってロングブーツくらい持ってますよ。」と里緒。
「へえ~、どんなの?」と仁美。
「ヒールが8cmくらいあるフツーの黒いブーツですよ。」と里緒。
「わたしのはピンヒの白いロングブーツなんですゥ。」
「アレで踏んづけたら突き刺さりますよきっと。」と仁美がはしゃぎだす。
思っていたよりも派手な格好になりそうなりんり~ずのメンバー。
「手袋もレザーのロングでないとかっこ悪いですよねェ?」と洋子。
「わたし達が買ったお店教えてあげるからみんなで揃える?」とわたし。
「そうよねえ、みんなで手袋揃えて今度はジーパンにお洒落なブーツでナチの奴らを踏みにじりましょう。」と幸恵。
「そういうことで今日は解散!」と幸恵がいうとみんなバイクに乗って颯爽と走り去っていった。
りんり~ずのチームジャケットにライダーグローブ、それにジーパンに特攻ブーツという完全武装の彼女達。
本能のままに大暴れした今回のトリップだったが、女性らしいお洒落なスタイルになるとどう変わってしまうのか興味津々のわたしと麻美だった。
「わたし、毎日あの格好だと思ってたからちょっと意外。」と麻美。
「アレはバイクに乗る時だけでしょ、洋子はOLだし仁美と里緒はまだ学生だよ。」とわたし。
「そうよねえ、普段はみんな普通の生活してるんだよねえ。」と特攻レディースのイメージがすっかりすり込まれてしまった麻美だった。
「それにしても、あの里緒って子凄かったよねえ。」
「Sなわたしも顔負けって感じ。」と麻美もタジタジだ。
「でも一番Sなのって幸恵さんかも。」とわたし。
「わたしもそう思う。」
「彼女の踏みにじり方とか見てて、何気に怖さを感じたわ。」
「それでェ、今度はどんな場所に行く?」と麻美。
「なるべく大都市に行こうと思うの。」
「住宅街が広がる町を破壊なんかしたら、また罪悪感に襲われちゃうよあの子達。」とわたし。
「ホントよねえ、ナチの部隊を全滅させただけであのネガティブな後味だもんねえ。」
「わたしなんか罪悪感なんてかけらも感じた事がないっつーのにさ。」と麻美。
そりゃ麻美が悪いなんて感じる事は無いだろう。
そういう意味ではりんり~ずにもまだまだ女性としての優しさがあると言う事だ。
そんな話をしながら別れたわたし達だった。
それにしても今回はわたし達のブーツのヒールにも満たない大きさの戦車やトラックを踏み砕いた彼女達。
そういう意味ではちょっと物足りなかったかもしれない。
でも次回は林立するビル街に乱入するのだ。
なんだか今からワクワク感でいっぱいになってしまうわたし。
特攻ブーツで荒れ狂う彼女達の姿があまりにも強烈に脳裏に刻み込まれたから、次回のトリップがどうなるのか見当もつかない。
それでもこれだけは確実だ。
それは幸恵がSな悪女としての本性を更に見せつけると言う事だ。
暴走3人娘と違って常に冷静な彼女。
相手の息の根を確実に止めるあの冷ややかなブーツでの踏みにじりは、見ているわたし達をも虜にした。
そんな彼女の活躍を想像すると10日間が待ちきれないわたしだった。