第79話・ワタシら特攻ブーツのジーパンレディースで~す!
待ち遠しかったトリップデーの日、わたしと麻美はいつもの公園でりんり~ずの到着を待っていた。
時間は夜10時を過ぎていた。
すると遠くの方からもの凄い爆音が聞こえてくる。
あの改造バイク特有のエンジン音だ。
❝ヴンヴンヴヴン!ヴンヴンヴヴン!❞
「来たみたいよ。」と冷静な口調の麻美。
凄まじいコール音でリズムを取りながら現れた4台のバイク。
爆音は凄かったが思ったほど派手な改造バイクではなかった。
全員お揃いのシルバーの半キャップを着用し、ショッキングパープルのジャケットがまぶしい。
実はわたし達も今回は事前に幸恵からチームユニフォームのパープルジャケットを借りて着用していた。手袋はわたし達愛用のエナメルホワイトのロング手袋をはめ、いつものジーパンにわたしはダークブラウンのブーツを、麻美は以前新調した白いロングブーツを履いていた。
バイクを公園の駐車場に停めて幸恵達4人がやって来た。
トリップでヘルメットは要らないから全員バイクに置いてきたようだった。
「ちょっと驚かしちゃった?ごめんネ!」と申し訳なさそうな表情の幸恵。
「いつもはこんな遅い時間だと迷惑だからやらないの。」
「でも今日はあなた達に挨拶代わりのコールやりたくってさ・・。」とレディースなりの登場だったようだ。
そして早速後輩達3人のレディースを紹介してくれた。
まずは河野洋子、女優の石橋あんな似で24歳OL。
ちょっときつそうな雰囲気の彼女、ネイビーブルーのジーンズにライトブラウンの特攻ブーツを履いている。
茶髪のロングヘアー、身長162cmで少しボリューム感のある脚は破壊力抜群だ。
そして牧山仁美、モデルの土田さゆみ似で21歳大学生。
武闘派レディースとは思えない優しい顔立ちの彼女、薄いブラウンの髪をポニーテールにしている。
身長165cmのスリムなボディーにブルージーンズを履いて、ダークブラウンの特攻ブーツを着用していた。
更に朝倉里緒、モデルの田中えりか似で17歳高校生。
黒いロングヘアーにあどけない顔立ちのスラリとした長身の彼女。
172cmのスリムな体にネイビー系スキニージーンズを着用し白い特攻ブーツ履いていた。
可愛らしい顔立ちとは裏腹に暴れだすと止まらないらしい。
そんな後輩レディース達を紹介してくれた幸恵は黒い特攻ブーツを履いていた。
4人とも履いているジーパンは相当使い込んでいるらしくイイ感じに色落ちしていた。
洋子のジーンズなどヒザのあたりが擦り切れそうなくらい履き込まれていた。
そして全員が着用している特攻ブーツに至っては、つま先から甲にかけてすり傷やら黒い汚れがこびり付き使用感たっぷりだった。
「そのブーツ結構使い込んでますね?」と思わず声を掛けるわたし。
すると17歳の里緒がニッコリしながら応えた。
「わたしのはまだ2年目なんですよォ。」
「でも新品だとかっこ悪いからァ、排気口にワザと当てて汚してるんですゥ。」
なるほど彼女の白い特攻ブーツ、全体的に薄黒く汚れていて特につま先からアウトソールにかけて黒ずんでいた。
このあたりの感覚は街を破壊して汚れたブーツがかっこいいと思うわたし達と通じるところがある。
そういえば彼女達のはめている白いロング手袋も手の平はかなり汚れていた。
「ワタシらの特攻ブーツ、気に入らない奴らを散々蹴り倒してきたから鍛えられてるわよ!」と幸恵が自慢げに言った。
「今日はどんな楽しい所に連れてってくれるんですか?」と洋子が尋ねる。
どうやら幸恵は彼女達に肝心な事を何も言わないで連れてきたらしい。
でも、その方がサプライズになって面白いというものだ。
せっかくだからドイツ軍の大部隊が演習してるような場所だと“レディースりんり~ず”を激怒させて楽しいことになるのかもしれない。
そう思うとワクワクして、いてもたってもいられないわたしだった。
「今日はみんなで夢のような不思議な世界に行くのよねェ~!」ともったいぶった言い方をする幸恵。
3人のレディース達は完全に幸恵の兵隊だから警戒心など全く無い。
「今日も思いっきり暴れていいんですよねェ?」と童顔の里緒が顔に似合わず過激な事を言う。
そんなやりとりをした後にわたしはポケットから手鏡を取り出して呪文を唱え始めた。
この異様な光景をポカ~ンと見つめる特攻レディースの3人組。
やがてグリーンの閃光が走ると幻想的な光景が広がり扉が出現。
レディース達は驚いて思わず口に手を当てている。
「さァ、行きましょう!」と扉の中へ誘うわたし。
わたしに続いて麻美が、そして幸恵を先頭にレディース達も扉の中に入ってきた。
里緒が扉を閉めると、わたしはドイツ軍の大部隊が駐屯している中都市をイメージした。
そして次の扉を開けるわたし、明るい日差しが飛び込んできた。
足元には鮮やかな緑色の平原が広がっている。
その平原の中を一本の線が走っていて、向こうの方に大量の黒い集団が見えた。
更にその先には都市が広がっている。
正にわたしのイメージ通りの場所にやって来たようだった。
そんな満足感に包まれながら足を踏みおろすわたしだった。