第78話・何でもアリのわたしはレディースのリーダー幸恵なんだから!
身の丈ほどもある大型客船をオモチャにして沈めた幸恵。
かなり満足そうな面持ちで足元の惨状を見つめていた。
そんな幸恵の客船馬乗り責めを見せ付けられたわたし達、暴れるのも忘れてすっかりその場に立ち尽くしていた。
「あなた達ももっと暴れなさいよォ!」とやっとわたし達の存在に気づいた彼女。
「幸恵さんって、何でもありなんですね、びっくりしちゃった!」と麻美が興奮気味に応える。
「何言ってんのよ、わたしをこんな楽しい所に連れてきてくれたのって、あなた達じゃない!」と微笑み返してくれた彼女。
その瞬間だった。
グリーンの閃光が走り破壊された港湾ビル群の上に扉が出現した。
「幸恵さん!そろそろ帰る時間です。」と声を掛けるわたし。
「えっ、もっともっと暴れたいのにィ~!」と名残惜しそうな彼女。
しかしわたしは彼女の手を引っ張って扉を開けた。
すると彼女は足元の倉庫群を思いっきり蹴り上げた。
「最後の一発っ!や~!」
❝ズボ~ン!❞
粉塵で白っぽく汚れた幸恵のロングブーツが銀色に光る大型倉庫を豪快に吹き飛ばした。
あたり一面に倉庫の残骸が飛び散り、細かい鉄片がパラパラと降ってきた。
「あ~、マジですっきりした!」そういうと今度は破壊し尽した街に向かって手を振る彼女。
「今度はもっと暴れてやるから覚悟しなっ!!」
そう吐き捨てるように叫ぶ彼女。
やっぱり現役レディースは違う、最後に凄みを利かせるあたりはさすがだ。
散々暴れまくって大満足の彼女と元の公園に戻ってきたわたし達。
もはや夢だったなんて言い訳は通用しない。
そこでわたしは彼女に本当の事を話した。
「え~っ!やっぱりこれってリアルだったって事~?」
さすがに口を手で押さえて驚きを隠せない彼女。
「確かに、夢にしてはすごくリアルだったし、変だと思ってたのよォ。」
「でもそんな不思議な手鏡があるんだ。」と言ってマジマジとわたしの手鏡を見つめる彼女。
「という事はァ、小人とはいえわたし、あんなにたくさん殺しちゃったって事?」と思わず聞き返す幸恵。
「そうなんですよ、何気なくわたし達が踏み殺してた奴らってェ、わたし達と同じ人間なんですよ。」と説明するわたし。
その言葉に顔を抑えて座り込む彼女だった。
「わたしって、大変な事しちゃったんだ。」とうつむき加減の幸恵。
わたし達はそんな彼女の殊勝な顔つきを見てレディースなりの優しさも感じ取った。
そんな彼女を落ち込ませっぱなしにはできないわたし達は、ナチスが支配するあちらの世界の実情を詳しく話した。
すると彼女は笑顔を取り戻してわたし達と一緒に闘う決意をしてくれた。
彼女ならジーパンレディーとしての素養は十分にある。
すると今度は彼女から思いがけない提案をしてきた。
「もし良かったら、わたしの後輩達も連れて行きたいんだけどい~い?」
「わたし達旧車會レディースのチームだったら、ナチの奴らなんて全滅よ!」と身を乗り出す彼女。
「それってェ、最高っすよ!」とおどけまくる麻美。
口調までレディースっぽくなってきた。
わたし的にもそれは願ったり叶ったりだ。
大人数で行って暴れまくるなんてきっと爽快な気分だろう。
「もちろんOKですよ!後輩って何人なんですか?」と尋ねるわたし。
「とりあえず連れて行けるのは3人かなァ。」
「洋子に仁美に里緒っていうの。」
「チーム名は“イケテル女子りんり~ず”で~す!」と紹介する彼女。
武闘派の彼女にしては可愛らしいチーム名である。
彼女の話によるとこの3人、河野洋子が24歳で身長が162cm、牧山仁美が21歳で身長165cm、朝倉里緒に至っては17歳で身長172cmと長身だった。
わたし達2人とイケテル女子りんり~ずのメンバー4人で合計6人の巨大ヒロインジーパンレディースの誕生だ。
メンバーの紹介が終わるとチームユニフォームの説明を始める幸恵。
早速スマホを取り出した彼女はユニフォームの画像を見せてくれた。
ツーリングの際は全員シルバーの半キャップを被り、口元を白いマフラーで覆うらしい。
そしてチーム名“りんり~ず”の刺繍が入った鮮やかな紫色のウインドブレーカーを着用。
手には長さ38cmの特注の白い皮製ロンググローブをはめている。
これは通常のライダーグローブほど厚ぼったくなく、ファスナー付きだから手にぴったりとフィットしていてとてもスタイリッシュだ。
そしてパンツは各自愛用のスキニー系ジーンズを履いて、靴は42cm丈の特攻ブーツを着用。
この特攻ブーツ、足にフィットしていて履き口が斜めカットになっているからその曲線がとても美しい。
そんな色鮮やかな彼女達りんり~ずのチームユニフォーム、わたし達ジーパンレディースのお約束、ジーパンにブーツイン&ロング手袋スタイルだから申し分なかった。
それにしてもこの特攻ブーツ、旧車會の人達は男性も女性も皆愛用しているらしく中々かっこいい。
わたし達の履いている婦人用ファッションブーツとはまた違ったかっこ良さがあった。
ファスナーは後ろに付いていて、上下にファスナー部分をしっかり留めるベルトが付いている。
そして靴底はバイク用だからシッカリとした素材で作られいてヒール丈は3.5cmで土踏まずの部分にはヒールに向けてせり上がった5本のエッジが付いていた。
こんなブーツで思いっきり踏まれたらナチの戦車隊などひとたまりもないはずだ。
そんな事を想像すると彼女達に会う日を待ち遠しく思うわたしだった。