第77話・わたし幸恵が客船に馬乗りデ~ス!
高層ビルの中にいた小人達を手当たり次第にひねり殺して遊ぶ幸恵。
そろそろなぶり殺しゲームにも飽きてきた様子だった。
「あ~あ、なんかつまんない!」とやる気がなさそうにつぶやいた彼女。
倒壊しそうなビルを支えていた両足にグイグイと力を込め始めた。
「ゲームオーバーで~す!」
❝ズバズバズバズバッ、ヴォッカ~ン!❞
幸恵のジーパン脚がビルを粉々に挟み砕いた。
そして倒壊したビルの残骸をブーツでこれでもかというくらいに踏みしだく彼女。
「オラオラオラオラ~!」
❝ジュバッ、ジュバッ、ジュバッ、ジュバッ!❞
❝ジュリジュリジュリッ!❞
足元の瓦礫を粉々に踏みにじった後、両手を腰に当てて埠頭の方を睨みつけた幸恵。
「わたし、あの船に乗りたいって感じ~!」
彼女が目をつけていたのはターミナルに接岸していた200m以上はある大型客船だ。
巨大な煙突にはナチスの旗が描かれ、船体は白と緑の色鮮やかなツートンカラーに塗られていた。
こちらの世界では身長が160m近くもある巨大な幸恵、そんな彼女でも持て余す位の大きな船だったから彼女がはしゃぐのも無理はない。
早速埠頭に向かって歩き出す幸恵とわたし達。
「ホラッ、邪魔なんだよっ!」
❝ズッヴァ~ン!ズッヴォ~ン!❞
桟橋までの間に建っている小ぶりな商業ビル群を邪魔くさいとばかりに蹴り崩しながら歩き続ける幸恵。
その後に続くわたし達も彼女が壊し損ねた周囲のビル群にブーツ蹴りを加えて壊しまくる。
幸恵がドイツ軍部隊を蹴散らした交差点から桟橋までのエリアは、わたし達によってメチャクチャに踏み荒らされていた。
今回は幸恵の豪快な壊しっぷりに見とれていたわたし達、少しは暴れないともったいない。
でも破壊神幸恵の活躍を見てわたし達は大満足だった。
客船ターミナルにやって来たわたし達。
早速幸恵はお目当ての大型客船に向かって歩き出す。
この客船が接岸されている桟橋には綺麗なトリコロール色のキャンバス地の屋根が設置され、乗船デッキは板張りの綺麗な白い建物だった。
そんな施設も幸恵の巨大な編み上げロングブーツのひと踏みでグシャリと押し潰された。
「ウゼェ~んだよ!」
❝ズヴォッ!❞
「ホント、邪魔くさいもん作っちゃってさァ!」
彼女が足を上げると踏み付けられたトリコロール色のキャンバスにクッキリと波打ち模様の靴跡が残っていた。
「わたし幸恵って言うの、お邪魔しま~す!」
❝グッシュ~ン!❞
そういいながら客船にドッカリと馬乗りになる彼女。
両手で煙突を掴みながら船体にまたがると船は大きく揺さ振られた。
しかし幸恵が両足でしっかりと踏ん張っていたから沈没は避けられた。
さすがはバイク乗りの幸恵だ、不安定な状態でもしっかりとバランスを取ってまたがっている。
彼女の右足は先ほど踏み潰した乗船デッキを踏みつけ、左足は海の中に入っていた。水深が25m位なんだろう、幸恵のブーツ丈の真ん中あたりに水面がきていた。
「なんか、バイクに乗ってる時と同じ位イイ気持ち~!」
「イェィイェィイェ~い!」
そう叫びながら盛んにVサインをしてみせる彼女。
しかし彼女が体重を掛ける度にムッチリとしたジーパンが客船上部のマストやら手すりやら救命ボートやらをグチャグチャに押し潰してあたり一面に散乱させた。
そんな事はお構いなしに馬乗りになったまま体を揺さ振り続ける彼女。
「これってェ、馬乗り?・・みたいな!」
エナメル製ロング手袋で掴んでいた煙突はグシャリと潰れて折れ曲がった状態になっていた。
「少し壊しちゃってごめんなさいネ~!」
「そ~れっと!」
満足顔の幸恵は更に踏ん張っていた両足を一旦ゆっくりと持ち上げて客船後甲板につま先を揃えて載せた。
❝ズゴォ~ン!❞
ゆっくりと振り下ろされたブーツのつま先が日よけ用の白いキャンバスを突き破ってイスやテーブルを弾き飛ばしながら板張りの甲板に突き刺さった。
支えを失った船体は巨大な幸恵の体もろともひっくり返りそうになった。
「アラアラッ大変!」
❝ジャッヴォ~ン!❞
バランスを崩しそうになった幸恵は再び左足を水面に振り下ろして踏ん張った。
そしてそのまま立ち上がった。
大股を開いた幸恵の股下に哀れな大型客船が辛うじて浮いていた。
幸恵がまたがっていた船体中央はグシャグシャに押し潰されて見るも無残な姿をさらしていた。
「わたしのオモチャになってくれてありがとねェ~!」
「でも、もう用済みだからこうしてア・ゲ・ル!」
❝ズッガ~ン!ジュッヴォ~ン!ヴォヴァ~ン!❞
埠頭に上がった幸恵は足元の客船をブーツで蹴りつけ始めた。
彼女のブーツが直撃する度に鋼鉄製の破片が飛び散り、真っ白に塗装された船体に黒々としたブーツ痕が刻みつけられていく。
「こいつったら~、結構しぶといわねェ!」
❝ズッコ~ン!ズッコ~ン!❞
コンクリート製のビルならブーツ蹴り一発で粉々に粉砕だが鋼鉄製の船だからそうはいかない。
蹴りつける度にブーツのつま先やヒールが船体に突き刺さりボコボコに穴を開けていく。
そして船体はどんどんへしゃげて蹴り潰されていった。
「なんか、蹴り応えがあって楽しいかも~!」
そういいながら水面ぎりぎりの船体横っ腹に最後の一撃を加える彼女。
「えいっ!」
❝ヴォッシュ!❞
見事に彼女のブーツが横っ腹に突き刺さり大きな穴を開けた。
するとその穴に海水がどんどん流れ込みあっと言う間に船体が傾き始めた。
「やったネッ!」
そう叫びながら再びVサインをする彼女に悪びれた様子は全く無かった。