第74話・わたし幸恵に逆らうって事かよ!
無造作にビルを破壊してしまった幸恵は気にする事もなく再び歩き始めた。
しかも今度は足元を気にすることもなく、路上の車や街路灯などを無意識に踏み潰しながら進んでいく。
「ホラホラァ~、どかないと踏み潰しちゃうぞ!」
幸恵の黒い編み上げタイプのロングブーツが片側2車線の道路を所狭しと踏み荒らしていく。
しかも全てのものを踏み固めるようにワザと小刻みに歩いていく。
❝ズ~ン!ズ~ン!ズ~ン!❞
「なんか、女王様になったような気分だわ!」
大きな交差点の手前に差し掛かった彼女、両手をひざに当てて中腰になって叫んだ。
「みなさ~ん、わたしは岸本幸恵と申しま~す!」
「わたし達ってェ、こんなに大きいから、少し壊しちゃうかもって感じで~す!」
幸恵が呼びかけている先の交差点には、わたし達から逃げようとしている車や人々でごった返していた。
しかも交差点内には路面電車も3両ほどが立ち往生していた。
「わたしったら、またイジワルしたくなっちゃったかも~!」
そういうと幸恵はブーツのつま先を道路中央を走る路面電車の架線に引っ掛けた。
そして、軽く蹴り上げる彼女。
「えいっ!」
❝シュッパッ!バチバチッ!❞
幸恵の巨大なブーツが架線を引きちぎり、ショートしながら激しい火花を飛び散らせた。
「ウフフッ、おもしろ~い!」
「ひょっとして、わたしってフラストレーションが溜まってるのかも~!」
そうつぶやくと今度はブーツを履いた右足で路上の車や電車を右に左にかき分け始めた。
「邪魔だっつ~のがわかんねェかなァ!」
❝グシュッ!グシュッ!グシュッ!❞
彼女のブーツが容赦なく道路上の全てのものをなぎ払っていく。
逃げ惑う小人達も巻き込まれて次々と押しつぶされていった。
更に交差点内に躊躇なく足を踏み入れる彼女。
❝ズッシ~ン!ズッシ~ン!❞
「みんな踏んじゃうゾォ~!」
そういいながら幸恵は交差点内で足踏みを始めた。
❝グッシュッ!ジュリジュリッ!❞
ブーツで踏みつけては回転させてにじりまくる彼女。
車も人も路面電車も無残にすり潰されてペシャンコになっていく。
そんな足元の地獄絵図をニヤつきながら見つめる彼女。
すると向こうの方からいつものようにドイツ軍部隊がやって来るのが見えた。
「何かやって来るみたいですよ!」と麻美が言った。
彼女の言葉に反応した幸恵が顔を上げる。
「あれって、もしかして軍隊?」
「わたし達を倒しに来たって事?」
「アッハッハッハッ!マジでうける~!」
手を叩きながら笑い飛ばす幸恵。
「ちょっと思い知らせる必要がありそうね。」
そういうと幸恵は戦車隊に向かって歩き出した。
“ズシ~ン!ズシ~ン!ズシ~ン!ズシ~ン!”
腰に手を当てて豪快に靴音を響かせながら進む彼女。
先頭の戦車の前に立ちはだかるとこう叫んだ。
「ちょっとアンタ達!わたし達レディースを舐めてんのかよ!」
「や~!」
❝ジュヴォ~ン!❞
掛け声と共に先頭付近の戦車数台をまとめて踏みつけた彼女。
戦車隊が砲撃を始める間もないあっという間の出来事だった。
「こんなもの~!こうしてやる~!」
凛とした厳しい表情に変わった彼女、右足のブーツで居並ぶ戦車を乱暴にかき集め始めた。
幸恵の巨大な黒いロングブーツが容赦なく戦車をグシャグシャに押し潰しながら道路の真ん中に残骸の山を築いていく。
前方の部隊をあっという間に全滅させた彼女、今度は少し大股になって残りの戦車隊を跨ぎ越した。
「よいしょっと!」
❝ズッシ~ン!❞
彼女の股下には10両ほどの戦車と100名以上の兵士達が取り残された。
大股を開いた状態で仁王立ちになっている彼女、腰に手を当てて股下の獲物を見下ろした。
「わたしを怒らせるからこうなるんだよォ!」
「いいこと!よ~く覚えておきなさ~い!」
そういうと幸恵は上半身をそのままの姿勢で内股気味になって両膝を地面に打ち付けた。
「喰らえっ!」
❝ジュヴォ~ン!❞
体の柔らかい彼女、内股のまま勢いをつけて腰を下ろしたから両足が道路上の部隊を完全に押し潰した。
「これでわかってもらえたかナ~?」
ゆっくりと立ち上がる彼女。
道路には幸恵のブーツの編み上げ部分によって押し潰された戦車と大量の兵士の死体が地面にめり込んでいた。
彼女のブーツの編み上げ部分には粉塵と戦車の残骸片とドイツ兵の死体がこびり付いていた。
それだけでも彼女のパワーの凄まじさが伝わってくる。
編み上げ部分の汚れを手で払い落とす彼女。
「ひと暴れしちゃったァ!」
「いい気持ちだわ~!」
すっかり笑顔に戻った幸恵はわずか数分の間に20両の戦車と数百名の歩兵部隊を壊滅させてしまった。
「幸恵さんのパワーって凄いですね!」と麻美。
「ありがとう!わたしに任せて!」と再びキリッした表情の彼女。
「とりあえず邪魔者は片付けたし、みんなでもうひと暴れしましょ!」
「本当はわたし、あそこの船に跨りたいのよネェ~!」
そういって停泊中の客船を指差す幸恵。
幸恵の悪戯をきっかけにわたし達は完全に破壊モードにスイッチオン。
わたし達の足元には哀れな港湾都市が広がっていた。