第68話・わたし達のリンチの後始末
口の堅い生意気な捕虜を散々いたぶった挙句、文字通り踏み殺したわたし達。
こんな光景を里奈子達に見られたら何を言われるかわからない。
特にあの愛らしい男の子ライナーに見られたら、軽蔑を通り越してわたし達2人に対する恐怖心に変わるだろう。
「ちょっと律子、こんなの見られたらヤバくない?」と妙にソワソワし始める麻美。
「そうよねえ、わたし達に都合のいいストーリーにしないとマズイわね。」
と怒りに任せて男を踏み殺したわたしもちょっとバツが悪かった。
でも、わたし達に罪悪感は全くなかった。
「それにしても、律子の両足顔面ブーツ責め、感動ものだったよ。」
「この次はわたしも試してみたいな、両足ブーツ責め!」
と麻美が少し興奮気味に続ける。
「あの時はとにかくムカついてたから、思わず踏んじゃったって感じかナ。」
「とにかく、この死体を少し偽装しなくちゃ。」とわたしが提案。
改めてわたし達が殺害した男の死体をマジマジと見てみると酷い状態だった。
男の着ている白いシャツはわたし達がブーツで踏みつけた無数の靴跡でどす黒く汚れ、顔にはわたしが付けたブーツのヒールの跡や靴底のギザギザ痕がクッキリと刻み付けられていた。
さらに、目や鼻や口からは血が流れ鼻のあたりは陥没していた。
「これってェ、間違いなく踏み殺したって判っちゃうよねェ?」と麻美。
「コイツがわたしに襲い掛かってきてェ、麻美が仕方なく撃ち殺したって事にすればいいわ。」と思いついたわたし。
「それそれ!それで決まりだネ!」と少し笑顔になった彼女。
「じゃあ、わたしが付けた顔の靴跡を誤魔化さなきゃ。」そういうとわたしは男の顔にブーツの靴底を押し当ててグリグリとこすり始めた。
幸いクッキリ付いていた靴跡は靴底の泥にまみれて判別できなくなった。
そして流れ出していた血と泥とで顔中真っ黒になってしまった。
「シャツに付いてる靴跡も何とかしなくちゃ。」と麻美も偽装工作を始める。
とりあえず床をブーツで踏みにじりながら靴底にたっぷり泥を付着させて男のシャツになすり付け始めた。
男の上半身いっぱいに付いていたわたし達のヒール痕やギザギザ模様の靴跡は麻美がこすり付けた靴底の泥汚れでたちまちわからなくなった。
「これでよしっ!」
「なんか、コイツ全身真っ黒・・みたいな感じになっちゃったわネ。」
とブーツで汚しながら苦笑いする彼女。
「じゃあ、あとは上半身と頭に銃弾を撃ちこめばいいわ。」
そういうとわたしはマシンガンを手に取って死体の腹部に狙いをつけて引き金を引いた。
❝バババババババババッ!❞
上半身から頭にかけてまんべんなく銃弾を撃ち込むわたし。
遺体は更に酷い有り様になったが、ブーツでなすり付けた泥汚れと銃撃で付いた焦げ跡が混じって一見するとわからなくなった。
それを確認してから遺体の脇腹のあたりにブーツのつま先をもぐり込ませて勢いよく蹴り上げるわたし。
「よいしょっとっ!」
仰向けだった死体がうつ伏せの状態になった。
「これで完了ね!」と言ってホッとするわたし。
すぐにマシンガンを麻美に渡した。
しばらくすると銃声を聞きつけた3人が母屋からやって来た。
里奈子が銃を構えながらゆっくりとドアを開けようとしている。
小屋の窓からは怯えた表情で立つクラウスと彼の背中にぴったりと寄り添うライナーが見えた。
「大丈夫よっ!」と言って麻美がドアに駆け寄って里奈子を中に招き入れた。
クラウスとライナーも恐る恐るあとに続いて入ってきた。
「何があったんですか?」と心配そうな表情の里奈子。
「コイツがさァ、いきなり立ち上がって律子に襲い掛かろうとしたから、わたしが撃ち殺してやったワ!」と平然と答える麻美。
わたしも無言で死体の傍らに立ったままだった。
「仕方がなかったのよ。」とわたしも小さな声でつぶやいた。
とりあえず危険な状況ではないことがわかったので、クラウスもライナーも安心した表情に戻った。
❝よかった、むしろわたし達が危険を取り除いたって思ってるんだわ。❞と感じたわたし。
すると麻美がいきなり銃を床に置いてライナーに駆け寄って抱きしめた。
「怖がらせてごめんね!もう大丈夫よ。」
「悪い奴はわたしがやっつけてやったから安心しなさい。」
そういって彼を抱きしめながら頭をなでてほっぺたに軽くキスをした。
彼女の変わり身の早さに驚くわたしだった。
わたしも負けじとライナーに駆け寄って頭をなでてあげる。
そして少ししゃがんで彼にキスをすると優しく語りかけた。
「君はこんなの見ちゃダメだよ、わたしと一緒におウチに戻りましょ。」
そういうとわたしは彼の右手をシッカリと握り締めた。
すると彼を抱きしめていた麻美が怒ったような表情で言った。
「律子だけズルイ~!わたしも~!」
麻美も立ち上がって彼の左手をしっかりと握った。
とりあえずこの場から早く引き上げた方がよいと思ったわたし。
「死体は後で片付けましょ!」と言ってみんなを外に出るように促した。
後ろめたい気分だったが、とりあえずとりつくろう事ができてホッとしたわたしだった。