第62話・わたし達をあまく見るんじゃね~よ!
いよいよトリップデーを迎えたわたし達、今回はあまり目立たないようにそれぞれが普段着で集まった。
普段着と言ってもジーパンにブーツインはお約束だ。
それに一応ロング手袋もみんなはめていた。
いざとなったらわたし達ジーパンレディースの力を見せてやるつもりだ。
でも、兵士達に取り囲まれたらと思うとちょっと不安だった。
「今回は本当の冒険旅行になるわね。」と念を押すわたし。
その言葉に無言でうなずく2人だった。
準備ができたので扉を呼び出すわたし。
中に入って今から1週間前の2014年5月22日の前回と同じ場所をイメージした。
次の扉を開けると飛行場のビルが正面に見えた。
ちょっと薄暗い夕暮れ時だった。
「わたし達、普通の大きさじゃん!」と麻美ががっかりしたような声で言った。
3人とも同じ比率でサイズが変わっているから一見するとわからない。
でも少し身長が伸びたような気がした。
「ここって、わたし達が暴れた所だよねえ?」と麻美。
「あれから5年も経ってるから、すっかり元に戻ってるわね。」とわたし。
わたし達が破壊したヘリコプターの残骸ももちろん無い。
そして空港ビルの方を見ると警備兵が2名こちらに向かって来るのが見えた。
銃を肩に掛けたまま懐中電灯を照らしながら歩いてくる。
きっと不審人物だと思ってやって来るんだろう。
近づいてきた彼らはドイツ語で何やら話しかけてきた。
2人とも見たところ里奈子と同じくらいの身長だった。
ドイツ人は大柄だから、たぶんわたし達の身長も10cm位大きくなっているのかもしれない。
ドイツ語が全く解らないわたし達、彼らのにやけた表情にイライラし始めた麻美がいきなり1人の兵士に襲い掛かる。
「ざけんじゃねェヨ!」
❝ドスッ!❞
正面に立っていた兵士の肩に手を掛けて膝蹴りを喰らわしたのだ。
不意を突かれた兵士はもんどりうって地面に倒れこんだ。
その瞬間わたしももう1人の兵士の腹にブーツ蹴りを入れた。
「コノォ!」
❝ヴァスッ!❞
見事なまでに彼の腹部にわたしのブーツが喰い込んだ。
麻美の勇気には脱帽だが、わたしもやけに体が軽くK1ファイターのようにフットワークがいい。
倒れこんだ兵士の胸のあたりをブーツでしっかりと踏みつけながら麻美が吐き捨てるように言った。
「わたし達を舐めんじゃねェよ!」
わたしももう1人の兵士の首のあたりをがっちりと踏みつけてやった。
「里奈ちゃん、こいつらの銃を取って!」とわたしが指示。
彼女が2人の銃を取り上げると、その1つをわたしに渡すように言った。
ネットで予習したのに、見覚えが無いサブマシンガンだった。
しかし1週間勉強しただけあって取り扱いには少し自信があった。
わたしがマシンガンを構えると麻美が2人を立たせた。
「なんか、わたし達ってサイズは普通だけど超人的なパワーを持ってるって感じ!」
麻美が興奮気味に話す。
たしかにわたしも屈強な兵士をねじ伏せるようなパワーを感じていた。
「こいつらどうする?」と麻美。
「とりあえずあの倉庫に連れて行って通訳官の事を聞き出しましょう。」とわたしが提案。
麻美と里奈子が2人の兵士を後ろ手にして連れて行く。
その後ろでわたしはしっかりとマシンガンを構えながら続いた。
近くにあった小ぶりな倉庫に着くと、麻美が兵士の見張りをわたしと里奈子に任せて中の様子を見に入った。
少しして出てきた彼女。
「誰もいないから大丈夫よ!」と言った。
中に入ると木箱が大量に積んであった。
そして、隅の方にちょうど良いスペースがあった。
麻美が木箱のそばに落ちていたヒモを見つけたので、早速それで彼らの手を縛って座らせた。
おもむろに2人のヘルメットを剥ぎ取る麻美。
ブロンドヘアーの若い兵士だった。
でも、わたし達の日本語はまるで通じない。
さすがに先ほどまでのニヤケ顔もどこかに吹っ飛んでしまい、神妙な面持ちの2人だった。
「ミスター近藤って知ってる?」とわたしが優しく問いただす。
しかし、黙ったままの2人。
「何とか言えよ!」と叫びながら麻美が片方の男のヒザを踏みつけた。
苦痛に顔を歪める彼。
「あんまり乱暴なことはしないで。」と里奈子が悲しそうな表情で懇願する。
「わたし達をオンナだと思って馬鹿にしたさっきの態度、許せない!」
「思い知らせてやる!」
「ホラ、吐けよ!」
先ほどの彼らの態度に余程頭にきたのか、麻美の暴力は止まらない。
ベージュグレーのロングブーツで何度も何度も腹や胸のあたりを蹴り付ける彼女。
❝ボシュッ!バシュッ!❞
「マジでむかつく!カァ~ッペ!」
散々蹴り付けた後に兵士の顔に痰唾を吐きかける麻美。
「吐かないとこうなるんだよ!」そういいながら唾にまみれた男の顔にブーツの靴底をグリグリとなすりつけた。
その蛮行を目の当たりにしたもう1人の兵士は恐怖のあまり顔を背けてしまった。
「お前もおんなじ目に遭いたいかよ!ホラ!」と顔を背けた兵士のヒザをブーツのかかとでジリジリと踏みつける彼女。
サイズが普通になってもSな彼女は全く変わらない。
わたしもさすがに銃を構えたまま固まってしまった。
「今日はタップリ虐めてあげるから覚悟しな!」
もはや通訳官の情報を聞き出す事よりも、彼らを虐待する事に快感を覚え始めた麻美だった。