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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第58話・通訳官との出会い

  パリッとしたダークスーツを着たこの青年、にっこりと微笑みながら応えた。

「大変失礼しました。私は近藤卓真こんどう・たくまと申します。」

「ドイツ国家保安本部の依頼で今日はあなたの通訳を務めさせて頂きます。」

その優しい口調にすっかり安心した里奈子だった。

「わたしは五月女里奈子っていいます。」

「2014年の日本から来ました。」

別に隠す風でもなくサラリと応える彼女。

そして、この里奈子の言葉を彼が通訳すると3名のドイツ将校は驚きの表情に変わった。

「2014年の日本ですか?」と聞き返す卓真。

「今は2009年ですよ。」と怪訝そうな表情に変わる彼。

そんな彼に対して里奈子は

「わたし達タイムトリップしてここに来ちゃったんです。」

「わたしもよくわからないんですけど、過去にトリップするとこんな風に大きな体になっちゃうんです。」と応えた。

「タイムトリップですか・・。」と言葉に詰まる卓真だった。

あまりにも突飛なストーリーに驚きを隠せない彼ら。

そんな彼らに更に里奈子が続ける。

「だって、わたしの身長が27mって事自体が変でしょ?」

「たしかに、おっしゃる通りですね・・。」と少し落ち着いた彼だった。

「わたし、町を壊したり、たくさん人を殺しちゃったんです。」

「本当にごめんなさい!」と今更ながら言い訳がましい里奈子だった。

「私は現場には行ってませんが、先ほど報告を聞きました。」

「随分派手に暴れましたね。」と少し苦笑いしながら話す彼。

そして里奈子の目を見ながら続ける。

「あなた達が襲った所はゲーテンという町です。」

「先ほど聞いたところでは、建物の全半壊は30棟に及び、戦車や装甲車など50両が完全に破壊され、400名以上が犠牲になったようです。」

「一般市民も約50名亡くなったようですが、行方不明者もまだ多数いるようです。」と落ち着いた口調の卓真だった。

「ひどい事をしてしまって、本当にごめんなさい!」

「もう人を殺したりしません、だからわたしを許して・・。」

冷静な口調で被害状況を聞くと、尚更罪の意識にさいなまれる彼女だった。

「安心して下さい。私達は里奈子さんを処刑したりはしませんから。」

「確かにあなたは大勢の人を殺しました。でも今こうして落ち着いて話が出来る状態じゃないですか。」と諭すように語り掛ける彼。

「私達はあなた達の事をもっと知りたいんですよ。」と続けた。

優しげな卓真の言葉にホッとした里奈子。

今まで散々小人達を無慈悲に殺しまくってきた里奈子にとってはこちらの世界の人間に対して初めて抱く好意的な印象だった。

「そういえばわたし、こちらの世界の人と話したことなんて無かったんです。」とつぶやく彼女。

「私達もあなたよりは体は小さいけど、同じ人間ですよ。」と応える彼。

そんなやり取りをしている内にだんだん自己嫌悪に陥り始めた里奈子だった。

「本当はわたし、元の世界に戻りたいんです。」

「そういえば、さっきわたし達に降りかかった液体って何ですか?」と少し心配そうな表情の彼女。


「心配には及びません、動物用の強力な麻酔剤を噴霧したんです。」

「街中で毒性の強い化学兵器なんか使えませんしね。」

「実は大砲の弾が効かないあなた達にまさか薬剤が効くとは思ってもみませんでしたよ。」と応える彼だった。

「これからわたし、どうなっちゃうんですか?」と尋ねる里奈子。

「しばらくはその拘束アームを外す事は出来ないんです。」

「でも、私達の質問に素直に答えて頂ければその内に自由に歩きまわれるようになるはずです。」

「でも、もう暴れないって約束してくださいね。」と念を押す彼。

「あれだけ暴れたんだから仕方ないですよねェ。」と力なく応える彼女。

このまま先の見えない状況が続くのかと思うと気がめいってくる彼女だったが、今や卓真の存在だけが里奈子の心の支えになっていた。

考えてみればジーパンレディーは別にスパイではないのだから訊かれた事に応えるのは構わないと思っていた。

こうなったからには律子や麻美の事を話しても彼女達に迷惑になるとも思っていなかった。

「何でも訊いて下さい。わたし正直に話しますから。」と素直な表情の彼女。

先ほどまで殺戮を繰り返していたSな彼女とは全く別人のようだった。

「やっぱり異常だったのかなあ・・。」と冷静に振り返る彼女。


近藤卓真と里奈子のやり取りを見ていて2人のことを信用したドイツ人達は尋問用の書類を卓真に渡してその場を立ち去った。

場内には里奈子と卓真、そして警備兵が20名ほど出入り口と監視ブースにいるだけだった。

「卓真さん!」と彼に声を掛ける里奈子。

「何ですか?」と振り向く卓真。

「すみません!わたし、トイレに行きたくなっちゃったんです。」

「どうしたらいいですか?」

急な申し出に少し困った表情の彼。

もし、拘束が解けても暴れる気持ちもなくなっていた彼女。

そんな気持ちに気づいたのか彼はあっさりと応えた。

「いいですよ、里奈子さんを信用しましょう。」

「でも、ちょっと我慢して下さい。」

「司令官の許可とトイレの準備をしますので。」

そういうと卓真は出口に向かって走り出した。

里奈子の気持ちは彼への好意からより積極的なものへと変化し始めていた。



 








 

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