第51話・わたし達、白いブーツで大暴れよ!
今日はいよいよ待ちに待ったトリップデーだ。
わたし達はこの間そろえた衣装を着ていつもの公園に集結した。
ショッキングピンクのトップスにジーパンに白いロングブーツはかなり目立つ格好だ。
「なんか、わたし、この格好になったら興奮してきちゃったワ。」と麻美。
「わたしもなんですゥ、憧れの白いブーツ履いて大暴れですもんね。」と里奈子。
「1人でも目立つのに、わたし達3人揃うとカッコよすぎ~!」とテンションが上がりっぱなしのわたしだった。
「それじゃあ、みんな、行くわよ!」
そういうとわたしはいつもの手順で呪文を唱える。
グリーンの閃光とともに扉が出現し、わたし達のトリップが始まった。
扉の中に入ると2009年のドイツ軍が駐屯する小規模な町の郊外をイメージした。
もうひとつの扉を開けるとよく晴れたのどかな片田舎だとわかった。
いままでと比べれば身長27mくらいだから木々の高さもそれなりにある。
足元には1m幅くらいの道路が向こう側の町に向かってのびている。
扉から降り立ったわたし達、町に向かって歩き出した。
超巨大なサイズの頃は歩けば地面がズブズブと沈み込んだものだが、この大きさだとそこまで陥没したりはしない。
でも、綺麗に舗装された道を歩けばクッキリと靴跡は刻まれている。
「なんか、おもしろい感触よねェ。」
「ちょっと軟らかい地面にブーツの跡がちゃんと残るから気持ちいイイわ!」と麻美。
今回はみんな同じブーツを着用しているから靴跡も一緒だ。
振り返れば、わたし達が歩いてきた道路にはたくさんの靴跡が刻みつけられていた。
もう少し歩くと小ぶりな町がある。
足元の道路にもガードレールや街灯、電柱なんかが設置されている。
わたし達に向かって走って来る車は驚いてUターンして逃げていく。
「わたし達を見てみんな逃げてくわね。」
「なんだか、ウズウズしてきちゃった。」と麻美が興奮し始める。
程なく町の入り口に到着したわたし達。
「この辺でちょっと暴れて騒いでみない?」と麻美。
「いいねェ、そうしましょ。」と応えるわたし。
手前にはアパートのようなクリーム色や白い壁の2階建ての建物がたくさん建ち並んでいる。
「それじゃあ、遠慮なく暴れさせていただきま~す!」と里奈子が叫ぶと目の前の建物に跨った。
そして抱きつくような姿勢になると体を揺さぶり始めた。
❝メリメリッ、ズヴズヴズヴッ!❞
「いぇ~い!」
❝ズヴズヴッヴァッシャ~ン!❞
凄い土煙とともに建物を粉砕しながら地面に倒れこむ里奈子。
真新しい衣装もすっかり汚れてしまっていた。
「やっちゃった~!いえ~い!」とピースサインを出す彼女。
「わたしも負けてらんないワ!」と麻美がいきなり3階建ての建物を蹴りつけた。
「そりゃ~!」
❝ジュヴッ!❞
麻美のブーツのつま先がちょうど彼女の腰くらいの高さのビルの3階の窓に突き刺さった。
「それそれそれ~!」
❝ジュボジュボジュボッ!❞
彼女の白いロングブーツが建物内にどんどんめり込んでいく。
「わたしのブーツがお邪魔しま~す・・みたいな!」
両手でビルの天井をシッカリと押さえつけて無理矢理ビルに右足を突っ込み続ける麻美。
“ズボッ!”という音とともに彼女のブーツのつま先がビルの反対側の壁を突き破った。
「やったね!」と叫ぶと突っ込んだ右足を激しく回転させ始めた彼女。
ブーツとジーンズに包まれた麻美の右足が建物を破壊しながら大きな穴をあけていく。
「トドメよ、え~い!」
❝ズッヴォ~ン!❞
建物を内部からメチャメチャに破壊した右足を強引に踏みおろすのと同時に左足で膝蹴りを喰らわせた彼女。
ビルもろとも里奈子と同じように地面に倒れこんだ。
「マジでサイコ~!チョーたのしい!」とビルの瓦礫を踏み砕きながら立ち上がった。
「2人ともいきなり衣装が汚れちゃったじゃん!」と苦笑いするわたし。
「それじゃあ、わたしも汚さなきゃね。」
そういうとわたしも手ごろな2階建てのアパートに狙いをつける。
玄関をブーツで蹴りつけた。
❝ガッシャ~ン!❞
わたしのブーツのつま先がガラス張りの玄関を粉々に打ち砕いた。
「さあ、これからが本番よ!それェ~!」
❝ズバズバズバッ!❞
突っ込んだ右足を強引に右方向になぎ払ってやった。
わたしの白いブーツが1階の外壁をメチャメチャに粉砕した。
そして、すでに半壊状態になった建物に馬乗りになるわたし。
「体重かけちゃうゾ~!イェ~イ!」
❝ヴッシャ~ン!❞
ただでさえグラついていたアパートはわたしがちょっと体重をかけてゆすっだけで簡単に崩れ落ちた。
わたしも麻美や里奈子と同じように地面に倒れこんで爽快感に酔いしれる。
ジーパンの汚れを振り払いながら立ち上がったわたし。
「すっかり汚れて女の戦士っぽくなったネ!」と笑顔で話しかけるわたしにうなずく2人。
「もっともっと暴れましょ!」と言って足元の乗用車を踏みつける麻美。
「ほんと、もっとやっちゃえ~って感じ!」
そういうと里奈子も乗り捨てられたバスを蹴り飛ばす。
わたし達の純白のロングブーツもソールのあたりからすっかり薄黒く汚れ始めていた。
「わたしのブーツ蹴りでも喰らいなさい!」
「ウリャ~!」
❝ヴォッヴァ~ン!❞
麻美が叫びながら回し蹴りを浴びせる。
わたし達にはちょうど良いひざ上くらいの高さの建物を手当たり次第に蹴りつける麻美と里奈子だった。
わたし達の新たなる闘いが今始まった。