第37話・わたし達、“ぶっ壊し隊”ジーパンレディースで~す!
わたし達3人はそれぞれのエリアを破壊しながら、市内の中心街に向かっていた。
麻美は住宅街を徹底的に踏み潰したので繁華街の破壊に入ろうとしていた。
里奈子も工場地帯を靴跡だらけにしてから、集合住宅の建物を襲い始めていた。
わたしは中央駅とその周辺の商業エリアをあらかた破壊したので、役所などが建ち並ぶビル街を壊そうとしていた。
わたし達が襲う前は美しかったヘルネブルグの町も7割近くがわたし達3人の巨大なロングブーツによって踏み荒らされて無残な状態になっていた。
町の大半は破壊された家々や建物の瓦礫とえぐられた地面とが入り混じり、無数の靴跡で踏み固められていた。
よ~く目を凝らして見てみると、そこにはギザギザ模様や波打ち模様、ストライプ模様など幾何学的な模様が全エリアに渡って刻み付けられている。
わたし達の身長が今までの2.5倍の400m以上だから足のサイズも60m以上になる。
わたし達の何気ないブーツのひと踏みが60m×20mの広さに建っているあらゆるものを一瞬で押し潰して地中にめり込ませた。
後には綺麗な幾何学模様の靴跡だけが残されている。
そんな光景を見るとあらためてわたし達の強大な力と大きさに酔いしれてしまった。
気持ちが高揚したままのわたしは麻美のように鼻歌まじりに破壊を続ける。
「♪りんりんりりん・りんりんりんり・りんりん・わたしはリ~ツコですゥ♪!」
大昔に流行ったフィンガーファイブの歌を口ずさむわたし。
わたし流の替え歌にしてみた。
「♪わ~た~しは好~き♪!コ~ワ~スの好~き♪!」とサビの部分ではテンションが上がって自然と踏みにじる足にも力が入る。
❝ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!ズッガ~ン!❞
わたしの足元ではブーツによる凄まじい轟音とわたしの歌声が入り混じって聞こえているのだろう。
そういえば、町の破壊を始めてすでに40分以上が経過しているが、いつものようにドイツ軍部隊が応戦してきたりはしないのだろうか。
やはり1945年頃と言えばまだまだ世界大戦が続いていたから、いつも襲っていた80年代とは少し違うのかもしれない。
そんな事を考えていたら麻美が叫んだ。
「ちょっとォ!みんな見てヨォ~、あっちの方に戦車隊みたいなのがいるよ!」
麻美の指差した方を見ると郊外の一角に何やら黒く小さな集団がこちらに向かって来るのが見えた。
わたしはそちらの方に少し歩いていって更に腰を落としてよ~く見てみる。
いたいた、わたしの期待通りの展開だ。
戦車に装甲車にトラックに全部で100台くらいはいそうだ。
それにその周りに薄黒く見えるのは歩兵部隊だろう。
数は数千名くらいだろうか。
街破壊も楽しいがドイツ軍をいたぶるのはもっと楽しい。
何といっても“愛と正義の女の戦士”を実感できるからだ。
しかし、あの規模だとわたしが走っていって踏みつければあっと言う間に全滅だ。
「あいつらはわたしに任せて!」と麻美が叫ぶ。
すると里奈子も
「えェ~、わたしの分も残しといて下さいよ~!」と叫んだ。
「悪いけどォ、里奈ちゃんの分なんて残らないわヨォ!」
「わたしのブーツパワーであっと言う間に全滅だってば~!」と麻美が返す。
「そんなァ~!わたしも試しにジーパン攻撃してみたいのにィ~!」といつになく積極的な里奈子。
こうなったらみんなドイツ軍をいたぶりたいのだ。
このままではわたしの出る幕がなくなってしまう。
せっかくこんなに巨大になったのに、街破壊だけで闘わないで戻るなんてありえない。
「みなさ~ん!わたしの事、忘れてませんかァ~?」とおもむろに切り出すわたし。
すると2人はわたしの方を向いてこう言った。
「しょうがないわねェ、ここに連れて来てくれたのは律子だし、あなたに任せるわ!」と麻美。
「わかりました!わたしも見てますからァ、思いっきり踏みにじってやってくださいネ!」と里奈子も納得した感じ。
「2人ともありがとう!わたしっ、あいつらを全滅させるわ!」
と意気揚々と歩き出すわたしだった。
❝ズシ~ン!ズシ~ン!ズシ~ン!❞
ちょうどわたしが扉から降りたあたりに部隊が集結していた。
わたし達の巨大な靴跡の周りで待機している。きっとあまりにも大きなわたし達に驚いているんだろう。
1分もしない内に彼らの正面にやって来たわたし。
ここまで近づいて分かったが、やはり45年代だから戦車も車両も可哀想なくらい旧式で身長400mのわたしの前ではあまりにも無力だった。
そんな彼らを前にわたしは腰に手を当てて微笑みかけながら優しい口調で呼び掛ける。
「わたしは愛と正義の女の戦士、ジーパンレディー藤森律子で~す!」
「あそこにいるのは麻美と里奈子、わたし達はこの町をぶっ壊すために来ました!」
「なのでェ、町をメチャメチャにしちゃって本当にごめんなさ~い!」
「でもそれがァ、わたし達の使命なんで~す!」
「わたし達はァ、愛と正義のために破壊を続ける“ぶっ壊し隊ジーパンレディース”と申しま~す!」
「ここに集まって来たあなた達もォ、この町と同じ運命なんで~す!」
「だからいいことっ!覚悟しなさい!」
「今からわたしのブーツで1人残らず踏み殺してやるわ!」
突然優しい口調から厳しいトーンに変わったわたし。
「わたしのエナメルホワイトのブーツからは逃げられないって事、よ~く教えてア・ゲ・ル!」
最後に可愛らしく締めくくったわたしはドイツ軍部隊に襲い掛かった。