第33話・わたし達のブーツからは逃げられないわよ!
ドイツ西部のヘルネブルグの町を前に腰に手を当てて仁王立ちするわたし達。
この1時間の間に徹底的に壊滅しなければならない。
そこで、わたし達は3人でこの町を取り囲む事にした。
麻美は住宅街が広がる向かって左手のエリアに、里奈子は工場地帯のある右側のエリアに向かって歩き出した。
わたしは正面に立ってこの町の住民達に避難を呼びかける事にした。
そして、口元に両手を当てたわたしはこう叫んだ。
「こんにちは!わたし達は“正義の見方、愛の戦士ジーパンレディース”で~す!」
「わたし達、これからこの町を徹底的に破壊しま~す!」
「だから、住民の皆さんは今すぐに避難して下さ~い!」
わたしが叫び終わった頃には麻美も里奈子も町の両側についてわたしの合図を待っていた。
麻美の歩いていったエリアには郊外とはいえ所々に住宅や道路が点在していた。
しかし麻美は足元など気にする事もなく歩いていったからすでに20軒ほどの住宅が麻美のブーツに踏み潰されて地中にめり込んでいた。
町の周りにはすでにわたし達の巨大なブーツの靴跡が無数に刻み込まれている。
「ヤダァ!わたしったら、もう町の周りをメチャクチャにしちゃったみたいネ。イェ~イ!」とおどけまくる麻美。
そうやってふざけながら無意識に両足を踏み鳴らす麻美。
彼女の足元は凄まじい粉塵に覆われ、ベージュグレーのロングブーツもうっすらと汚れ始めていた。
里奈子の方は膝に両手を置いてまましゃがみ込んで町中を見つめている。
どこを最初に破壊しようか物色している様だった。
そして、わたしはこう叫んだ。
「それじゃあ、今からわたし達、遠慮なく暴れさせて頂きま~す!」
そういうとわたしはまず手前の一番広い道路に向かって足を踏み出した。
❝ズッヴォ~ン!❞
一番広い道路と言っても片側2車線の道で、わたしから見れば6cmくらいの幅しかない。
わたしのブーツの幅の方が圧倒的に広いから、両側の建物もろともひと踏みで大きなダメージを与えた。
もの凄い轟音が響き渡り、わたしの巨大なエナメルホワイトのロングブーツが道路や建物を一瞬で飲み込んで“ズブッ”と沈み込んだ。
ゆっくり足を上げると、そこにはわたしの巨大な靴跡が残っていた。
わたしのブーツの靴底模様が鮮やかに刻み込まれている。
真ん中にたまご型の楕円があって、その中にギザギザ模様が彫りこまれ、楕円の周りには横ストライプの線が入っていて、広めのヒール跡には波打った模様がクッキリとついていた。
「アラアラ、わたしのブーツの裏って、こんな模様なんだ。」
「随分綺麗に靴跡がついちゃったって感じよねェ~!」とあらためて自分の刻み付けた靴跡を見つめるわたしだった。
その頃、麻美も住宅街に足を踏み入れていた。
❝ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!❞
膝を少し高めに持ち上げては力を込めて住宅を踏みつける麻美。
「ホラホラッ!わたし、ジーパンレディー麻美様のお通りだヨ!」
「こまごま家なんか並べちゃってェ~、邪魔だっつ~の!」
❝ズッヴゥーン~!ズズズッ!ズリッ!ズリッ!❞
「ヨォヨォッ!わたしのブーツから逃げられると思ってんのかヨォ~!」
そう叫んではマッチ箱のような小さな家々を容赦なく踏みつけてはブーツを回転させて思いっきり踏みにじる麻美だった。
彼女に踏みつけられた20軒程の1ブロックはひとたまりもなく麻美のベージュグレーのロングブーツに飲み込まれ、更にそのまま回転運動を加えたからまだ無傷だった周りの家々もグチャグチャに踏み砕いていく。
その光景をじっと見つめながら満足そうな笑みを浮かべる麻美。
そして麻美が住宅街で暴れている頃、里奈子は工場地帯を踏み潰そうとしていた。
「ハァ~イ!わたしィ、五月女里奈子デ~ス!」
「今からこの工場をわたしのブーツでペッタンコにしてさし上げま~す!」
「それそれ~!え~い!」
❝ズッバ~ン!ズッバ~ン!❞
ねずみ色の大きな工場も里奈子の巨大な黒いロングブーツから見れば可愛いくらいに踏みごろのサイズだ。
里奈子のひと踏みで大きな工場の建物がグシャリと踏み潰された。
「なんかァ、ちょっと踏み応えがあってェ、わたし的には快感かもっ!」
とあどけない里奈子。
そんな可愛らしい笑顔とは裏腹に彼女の黒いロングブーツが容赦なく工場地帯を踏み散らかしていく。
戦車の組み立て工場の建物10棟ほどは里奈子の執拗な踏みつけによってあっと言う間に壊滅状態になっていた。
「もう2度と工場なんて造れないようにしてあげるわねェ!」
そういうと彼女はブーツのつま先を建物もろとも地面に突き刺した。
❝ズゴ~ン!❞
「やったねっ!そ~れっと!」掛け声と共に彼女はブーツのつま先ですくい上げるように右足を高々と蹴り上げた。
❝ヴッシャ~ン!パラパラパラパラッ!❞
凄まじい土煙と共に里奈子がブーツですくい上げた部分の建物や施設の設備などあらゆる物が空高く吹き飛ばされ、粉々になってあたり一面に降り注いだ。
「ごめんなさ~い!ちょっと、やりすぎちゃったかも・・。」
「エヘヘッ!」と軽く舌を出して照れ笑いをする里奈子だった。
その頃わたしは2歩目、3歩目とメインストリートに巨大な靴跡を残しながら市内中心部に向かって歩いていた。
「まずはアレから始末してやるワ!」とわたしの正面にある大きな鉄道の駅舎に狙いをつけたわたしだった。