第32話・わたし達の大きさって・・
今日はいよいよ待ちに待ったトリップデーだ。
わたし達は前回と同じように、まずわたしの部屋で少しおしゃべりしてからあの公園に向かった。
そういえば、前回は何も知らない麻美を連れて行ったんだっけ。
「この前は、ちょっとビックリしたけど、あんなに楽しい所に連れてってくれるなんて思ってもみなかったわ。」と麻美がつぶやく。
「でも、今日はみんな暴れる気満々だもんネ!」とわたし。
「とにかく、早く行きましょ!わたしィ、もう待ちきれません!」と里奈子がわたしの事をせかし始めた。
「もう~、慌てないの!ヘルネブルグの町がわたし達の事を待ってるわ。」と里奈子の事を落ち着かせるわたしだった。
そして、いつもの様に手鏡を取り出して呪文を唱える。
少し緊張気味の2人の前にうっすらと扉が現れ始めた。
「さァ、行きましょう!」わたしがそう叫ぶと2人も扉に入ってきた。
1つ目の扉を閉めた瞬間だった、
❝1945年4月1日、ドイツ西部のヘルネブルグの郊外に行けます様に!❞と強くイメージするわたし。
何となく感触を感じ取ったわたしはゆっくりと次の扉を開けた。
すると、明るい日差しが差し込んできた。
扉の下を見ると緑色と薄茶色の地面が広がっている。
更に少し向こうの方を見るとベージュ色の何やら細かい突起物が無数に広がっていた。
それはちょうど7~8m四方の中に収まっている。
明らかに今までとは様子が違うんだとすぐに分かった。
まず、ゆっくりと地面に足を下ろすわたし。
❝ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!❞轟音と共にわたしの足下で凄まじい土煙が立ち込めている。
いつものように“ズブッ!”っと沈み込むような感触とは少し違う。
柔らかい地面を歩いている感触だが、ズブズブと沈み込んだりはしない。
だが、いつもよりもハッキリとした靴底模様が地面にシッカリと刻み込まれている。
わたしのエナメルホワイトのロングブーツがグリーンの地表に鮮やかに映える。
わたしに続いて麻美と里奈子が足を踏み入れる。
わたし達が降りると扉はすぐに消滅した。
グリーンの綺麗な地表には早速わたし達3人のロングブーツの靴跡がクッキリと刻まれた。
更にわたし達の足元はうっすらと煙に覆われている。
まだ、状況がハッキリとしないのでしゃがみ込んで地面を見つめるわたし。
よ~く見ると、4cmくらいの幅の白い道が見えた。
この道が向こう側のベージュ色のエリアに向かって延びている。
明らかに今までの倍以上の大きさになったわたし達だった。
どうも身長は400mを越えているようだ。
凄まじい大きさになったわたし達、だんだん気持ちが高ぶってくるのがたまらなかった。
「やったね!わたし達、本当に大巨人になっちゃったみたい!」と感慨深げなわたし。
麻美も里奈子もはち切れそうな笑顔だ。
「ねえねえっ、これからどうする?」と早速“破壊の女神”モードに突入の麻美が尋ねてくる。
「とりあえず、あのベージュ色のエリアに行ってみましょう!」と言って歩き出したわたしだった。
わたし達3人が歩き出すと足元が更に煙で覆われ、ブーツのソール越しに地響きが伝わってくる。
「わたし達の足下って、きっと凄いことになってるよォ!」と麻美。
今日の麻美は前回と全く同じ衣装だ。
モカベージュのネックシャツに真っ黒に汚れた白いロングタイプのゴム手袋。
それにネイビーブルーのジーンズにベージュグレーのロングブーツだ。
それから里奈子の方はというと、いつものブルージーンズに黒いロングブーツ。
それにフレッシュライムのデザインブラウスにテカテカ系の白いエナメルのロング手袋だ。
そして、わたしはエナメル白のロングブーツにいつものネイビーブルーのジーパン、濃いレッドに薄いイエローのチェック柄のシャツにアイボリーホワイトの皮製ロング手袋とちょっと優しいお姉さんっぽい感じでまとめてみた。
さすがに身長1000mという訳ではないから、空気が薄いという事はないが、少しひんやりとしたかすかな風がわたし達の頬に当たる。
「なんか、爽快な気分よねえ!」とわたしの方に微笑みかける麻美。
程なくベージュ色のエリアの手前にやって来たわたし達、足元をよ~く見直したらやっぱりベージュ色や白い色の小さな建物がギッシリと建ち並んでいるのが分かった。
手前のエリアに白い壁にこげ茶色や黒い屋根の住宅街が数メートルに渡って広がっている。
その右手の奥の方にグレーの工場地帯があった。
更に工場地帯の左手には10階建てくらいのビルが幾つか建ち並んでいて、その周りに5~6階建てくらいの建物が無数に林立していた。
正にちっちゃなマッチ箱を並べたような非常に綺麗な町並みだ。
「綺麗な町ですね、なんかァ、わたし達のブーツで踏み荒らすのが悪いみたい・・。」といつもの優しい口調の里奈子。
「なに言ってんのよ!こういう綺麗なところを汚れたブーツで踏み散らかすから快感度が増すんじゃないの?」とドSの麻美だった。
「ちょっとォ、麻美!あなたホントSっ気たっぷりよねェ。」とちょっと意地悪い口調のわたし。
すると麻美は開き直って
「そうヨ!わたし、Sっ気たっぷりの女王様なの!」
「だから、今日は思いっきり暴れてこの町をわたし色に染めてやるんだから!」ともう止まらない麻美だった。
これからわたし達による凄まじい都市破壊が始まろうとしていた。