第30話・わたし達の与えた損害
次のトリップデーを心待ちにするわたし達ジーパンレディース。
まだハッキリと決まった訳ではないが、次回はもう少し古い時代に倍以上の大きさになって登場するかもしれないのだ。
身長が400m以上だなんてちょっと想像しただけでも凄すぎる。
東京タワーよりも巨大なわたし達って、街で暴れると言うよりは普通に歩いただけでも都市を壊滅させる事ができる大きさだ。
考えただけでもワクワクしてしまうわたし。
そんな想像をしていたら麻美が声を掛けて来た。
「律子!今度はどんなファッションで登場するの?」
「そうねェ、ジーパンはいつものでいいとして、ブーツをどれにしようか迷ってるの。」
「いつものダークブラウンにするか、それともエナメルの白ブーツも捨てがたいし・・。」と応えるわたし。
すると麻美は、
「わたしはブーツは一本しか持ってないから、あの使い古しので行くワ。」
「わたしのブーツ、この間暴れまくったからかなり汚れちゃって、それにゴム手袋も真っ黒だし、ジーパンも擦り切れ寸前・・みたいな。」
「汚れても全然気にならない格好で暴れるのってサイコーの気分よねェ!」と上品さのかけらもない彼女だった。
でも、それが暴れる女の戦士ジーパンレディーっぽくて中々いい。
わたしもどちらかといえばブーツもジーパンも手袋も汚れていた方がカッコいいと思っているから。
「そういえば、律子も里奈ちゃんもちょっとおシャレな手袋はめてたじゃん。」と麻美。
「わたしのは通販で買った本皮のロング手袋なの、里奈ちゃんのエナメル系も通販みたいだよ。」とわたし。
「わたしはあの汚れまくったゴム手袋でいいわ。」
などと美人顔なのに外見を全く気にしない麻美だった。
その頃、ジーパンレディース達が襲ったドレスデンの街では気の遠くなるような救援活動が繰り広げられていた。街の中心街は律子達によって完全に破壊され尽くされていた。
ドイツ国防軍東部方面軍最高司令官のクライスト上級大将が参謀本部で被害報告を受けていた。
ノヴォトニー空軍大将
「先日2人の巨大ジーパンレディーに襲われたキルシュテンバウアー空軍基地は完全に機能が停止したままです。」
「守備隊は全滅し地上施設も完全に破壊され、第1航空艦隊も400機近くが破壊されて壊滅状態になっております。」
クライスト上級大将
「リツコという巨大女ひとりでも歯が立たないのにもうひとり現れ、更に今回のドレスデン襲撃では3人目のジーパンレディーも現れた訳か・・。」
アレキサンダー陸軍中将
「空軍基地に現れたもうひとりの巨大女はリナコと名乗っていたそうです。そしてドレスデンに現れた女はアサミという名前のようです。」
クライスト上級大将
「3人とも日本人の女という事か。しかし、いったいなぜあんなに巨大な姿になって現れたんだ?」
アレキサンダー中将
「それは不明ですが、10日周期で出現するのは確かなようです。」
上級大将
「ドレスデンの被害はどのくらいに上るのか?」
中将
「ドレスデン駐屯の第35機甲旅団は壊滅し約6500名が死亡または行方不明になっております。」
「特に、ジーパンレディース達のブーツによって踏み殺された将兵の多くは無残な状態で収容されております。」
「更に、市街中心地は完全に破壊し尽され40棟が完全に倒壊し、その他に30棟以上が被害を受けております。」
「軍関係の他に一般市民も含めて1万5千名以上が犠牲になったようです。」
上級大将
「空軍基地が全滅し、4都市が襲われ、更に巨大女が3人か・・。」
中将
「日本語の話せる通訳官に破壊を止める様に説得させるのはどうでしょうか?」
上級大将
「我が軍の装備では全く歯が立たないのであれば、そういう方法論も検討せねばならんな。」
中将
「それでは出来るだけ多くの日本語通訳を各都市に配置致しましょう。」
上級大将
「そうしてくれ、彼女達がなぜ暴れ続けるのか話し合う必要がありそうだ。」
4つの都市が襲われ、空軍基地が壊滅状態に追い込まれ万単位の犠牲者を出した時点でようやくドイツ軍高官達は和平案を検討し始めていた。
しかし、ジーパンレディー律子が1人で現れた頃ならまだ望みはあったが、問答無用に暴れるのが目的の麻美がメンバーに加わった今、和平案など到底彼女達が受け入れるはずもなかった。
わたしと麻美が次回のトリップの事を話していたら里奈子もやって来た。
そしてこう言った。
「わたし達って、いつも小人達をたくさん踏み殺してるんですけど、彼らと話をしてみる事ってできないですかね?」
すると麻美がこう応えた。
「そうねえ、面白そうだけどアイツらって外人でしょ、日本語通じないんじゃないかなァ。」
「あんなに大きい街なんだからァ、日本語の話せる小人も絶対いるわよ。」とちょっと興味をそそられるわたしだった。
元はと言えば彼らに攻撃されたのがきっかけでわたし達も街を襲うようになったけど、あの世界がどんな時代なのか知りたい気持ちもあり、それは彼らに訊くのが一番いいような気がしてきた。
わたし達も今までは小人達をなぶり殺しにする事しか考えてなかったけど、対話をするって言うのもありかもしれない、と感じるようになっていた。