表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
270/278

第270話・対面の果てに

 “なんでも分かっちゃうんだ?”


と何となくわたしは彼の方を向いてそう思った。

すると驚くべき事に彼が僅かにうなずいたのである。


「君は、超能力者なのか?」(総統)


わたしは心の中で彼に向かってつぶやいた。


“そんな力も持っているんです。”


彼は驚いた顔でこちらを見ている。

何と、わたしにはサブマスターの律代だけでなく、一般人ともテレパシーによる会話が成立するのだ。

しかも言葉の違う外国人とも・・。

これは何とも便利なスキルだ。

一々声に出さなくても相手に思いを送るだけで意思疎通ができるのだ。

そんな自分のスキルに感動しながら、わたし達はエレベーターで上方へと向かう。

どうやら律代は少し離れたエリアにいるようだった。

巨大化して粗暴な性格になっている彼女が至近にいると、わたし達も危険な状態になってしまう。

わたしはともかく、この幼いレオン君や奥さんまで巻き込まれてしまう。

そうはさせたくなかったわたし。

このエレベーターの最上部に到着するとゆっくりと扉が開いた。

レオンが真っ先に外に出ようとしたが何かにつまずいて転んでしまった。

さっきわたしが撃ち殺したあのコックの遺体につまずいたのだった。


“ああ、またヤバいものを見せちゃったわ!”


そう思ったわたし。


「これも君がやったのか?」(総統)


わたしに心の中で問い掛けてくる彼。


わたしはすぐさまうなずいた。

転がっているコックの白衣の背中にはわたしのゴム長靴のどす黒い靴跡がクッキリと残っている。


“これって、わたしがやったってバレちゃうかな?”


誰にも悟られないようにと願うわたし。

転んだレオンは立ち上がって母親の所に行ってうつむいてしまった。


“やっぱ、子供に見せるもんじゃないわね。”

“急ぎましょ!”


わたしは総統にそう言って先を急ぐように促した。

皆、足元を見ないようにしながらわたしの後に続く。

地下通路を抜けて地上階の扉の所までやって来たわたし達。

扉を開けて外に出るといきなり声を掛けられた。


「兄さん!」(リナ)


総統エルンストの妹、リナが立っていた。

キリッとした黒いビジネススーツを着ている。

周りには国防軍の兵士と将軍クラスの高官が数名付き添っていた。


「リナ!」(総統エルンスト)


どうやら十数年ぶりの再会らしいこの2人。

しかもリナは兄の事を完全に誤解している。

わたしは彼女がいきなり兄を撃ち殺さないかと思った。

そして彼女にわたしの思いを送った。


“違うんです!”

“あなたのお兄さんは決して悪人ではありませんでした。”

“裏で糸を引いていたのは国家元帥のミッターマイヤーだそうです。”


「ウソよ!そんなの。」(リナ)

「彼がそんな事するはずないわ。」

「どうしてあなたが分かるのよ?」


リナはわたしに向かって問い掛けてきた。

ドイツ語で話しかけてきたが、わたしの脳内ではちゃんと日本語に変換されている。


「恥ずかしいが、彼女の言う通りなんだよ。」(エルンスト)

「すまない、私が不甲斐ないばっかりに・・。」

「この律子さんが、軟禁状態だった私達を助け出してくれたんだ。」


まさか自分が暗殺を命じた張本人だから気まずいなんてもんではなかったはずだ。

でも兄はそんな妹の事をちゃんと分かっていた。

どうやら自分が大きな過ちを犯してしていたんだと疑念を持ち始めた彼女。

でもリナと元帥とはどんな関係なんだろう。

まさか、男と女の関係?

元帥ってどんな人なんだろう?

わたしはてっきり前に勉強して知ったゲーリング元帥のような太ったおじいさんかと思っていた。

そしてわたしはリナに問い掛けてみる。


“あなたと元帥って男女の間柄なの?”


彼女は微かにうなずいた。

何と、国家元帥の謀略は総統の実の妹をも毒牙に掛けていたのだった。

それでもまだ半信半疑な彼女。

だからすぐに兄とハグする気にはなれなかったのだろう。

戸惑っている気持ちはその表情にはっきりと見て取れた。

その時だった。


黒ずくめの集団が近づいて来るのが見えた。

金色の襟章に金ピカの肩章を付けた金髪で長身の男を先頭に10名程の一団が向かって来る。

少し悲し気な表情で金髪の男を見つめるリナ。


“彼が国家元帥のミッターマイヤーなんだ。”


わたしの予想とは違って中々のハンサムな男性だった。

身長は190cm近くあって小顔でサラサラヘアーの金色の髪の毛と青い瞳は、正しくかつてアドルフ・ヒトラーが推奨した生粋のアーリア系ドイツ人の容姿そのままだった。

エルンストも中々のイケメンだったが長身という部分で元帥に少し負けていた。


「リナ、早くその男を始末しろ!」(元帥)

「その日本人の女もだ!」


“それってわたしの事?”


いきなりわたしへの処刑命令にムカつくわたし。


“アンタの陰謀はねぇ、全部わたしがバラしたのよ!”


心の中で思いっきり奴に向かって叫ぶわたし。


「なんだこの女!」(元帥)

「化け物め!」

「そういう事なら全員始末してやる!」


「兄さん、やっぱりわたしが間違っていたのね。」(リナ)


この期に及んでやっと真実に目覚めた彼女。

実の兄のエルンストと抱き合った瞬間だった。

副官の持っていたサブマシンガンをひったくってわたし達に向かって構える元帥の姿がチラリと見えた。

わたしはとっさに足元にいたレオンを守ろうと抱き上げていた。


次回の更新は5月4日(0:00)になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ