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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第268話・いったい誰が悪党なの?

 仕方なくわたしは彼らに向かって言った。


「全員わたしと一緒に来なさい。」(わたし)

「いいこと、ここから移動するのよ。」


わたしの発言は全て自動翻訳機を通してドイツ語に変換されている。

彼らは皆黙ってうなずいた。

すると奥さんと思われる女性がドイツ語で何かつぶやいた。

今度は翻訳機から日本語が聞こえてきた。


「もしかして、リナさんは夫の妹かしら?」(翻訳機)


突然、予想外の質問をされて戸惑うわたし。

あの影の指導者のリナが総統の妹?

そんな事だれからも聞いていないから言葉に詰まるわたし。


「妹?えっ!」(わたし)

「何よそれ?」

「全然聞いてないんですけど、わたし。」

「あなたの妹さんなの?」

「それってマジで?」


次々に翻訳されるわたしの言葉。

すると今まで黙っていた総統エルンスト・シュタイナーが口を開いた。


「君が話していたリナは私の妹かもしれない。」

「彼女とはもう10年以上前に別れたままだ。」

「その後、政府に抗う組織を作り上げたと聞いている。」

「そうか、妹は私を暗殺するつもりだったんだね。」


翻訳機から流れる日本語は単調そのものだったが、実際に彼の口から発せられた言葉は悲痛で重々しいものだった。


「リナは野心的な性格だから、いつかこんな事になると思ってました。」(妻のエヴァ)

「ごめんなさい、わたしは妻のエヴァ・シュタイナーです。」

「この子は息子のレオンです。」

「お願いです!息子だけは助けて下さい。」

「わたし達はどうなっても仕方ないから・・。」


「エヴァさん、安心して。」(わたし)

「わたしはあなた達に危害を加えるつもりはありませんから。」

「それにしても、どうして妹さんがこんな命令を?」


「今の政府が腐っているのは事実です。」(総統)

「私に力が無いから・・。」


「えっ、あなたが全てを掌握してるんですよね?」(わたし)


わたしは驚いて思わず聞き返していた。


「世界は全て私がこの帝国を牛耳ってると思っているんでしょう。」(総統)

「でも、それは決して真実ではない。」


「この政府をコントロールしているのはあの男なんです。」(エヴァ)

「親衛隊長官のヴォルフガング・ミッターマイヤー国家元帥です。」

「彼の直轄部隊が武装親衛隊のSS第1師団なんです。」


「私は元々は研究所にいたんだよ。」(総統)

「律子さんが現れて、私達は巨大化メカニズムの研究にのめり込んでいった。」

「その頃からミッターマイヤーが政府内での勢力を着実に拡大していたんだ。」

「私の父が亡くなると彼は益々権力を欲しいままにするようになって・・。」


「強制収容所を作って迫害を命じたのも彼なんです。」(エヴァ)


「でも、どうして彼が総統にならなかったんです?」(わたし)


「その方が都合が良かったから。」(総統)

「私は彼の単なる操り人形です。」

「お恥ずかしい限りですが、私は科学者の端くれです。」

「党大会で演説しているのは、私によく似た影武者なんです。」

「長官が全てを設定していて。」

「私が政治に口を差し挟む事は一切ありません。」


意外な内情が判明して益々戸惑うわたし。

彼らの言っている事は本当なんだろうか?

わたしに踏み殺されるのが怖くてウソを言っているのかも・・。

少し疑心暗鬼になるわたし。

それにわたしを殺そうと大勢の兵士を差し向けてきたし。


「あの、わたしが殺してきた大勢の護衛の人達は?」(わたし)


「彼らは第1師団の精鋭部隊です。」(総統)

「長官が私達を護衛するために配備したんですよ。」

「かいらいの私が死ぬと不都合だからかもしれません。」

「陰で悪事を働き、全て私のせいにする。」


「でも、その事を妹さんは知ってるんですか?」(わたし)


「たぶん知らないと思います。」(総統)

「あの子なりの正義を通そうとしているんでしょう。」

「どうも国防軍の高官と通じているみたいだし。」

「私は親衛隊と国防軍が衝突するような事だけは避けたかった。」

「内戦になると果てしない殺し合いになりかねない。」


「わかりました。」(わたし)

「あなた達の言う事を信じます。」

「今から、わたしはあなた達を保護しようと思います。」

「そしてリナに真実を話します。」


とりあえず一旦は信じるふりをしてリナに連絡しなければ。

そして真の悪党の長官とその一派を殲滅しなければ。

わたしにとって新しい標的がそいつなのかもしれない。

まずは律代にこの事を知らせないと。

わたしは彼女にテレパシーで語りかけてみた。

今、聞いた内容を解りやすく女子高生でも理解できるように。

すると・・。


「え~、マジっすかぁ!」(律代)

「ってか、わたし、手当たり次第にぶっ壊してるんですけど。」

「大丈夫なのかなあ。」


政治的な関係には全く興味の無い彼女。

ただただ暴れ回る事だけに快楽を感じているのだろう。

とにかく今地上がどうなっているのか心配になってきた。

もうすでに大勢の人達が犠牲になっている事だけは間違いなさそうだった。

SS第1師団の連中だけならいいけど・・。

民間人にまで被害が出ていたらと思うとかなり気が重くなってきた。

でもまずは外に出ないと、と思いエレベーター前へとみんなを誘導するわたし。

さっきわたしが殺した守備兵の遺体が転がっている中を、小さな男の子や総統夫人を連れて歩くしかなかった。


次回の更新は4月20日(0:00)になります。


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