第262話・ちょっとだけ腕試しよ!
マシンガンや手榴弾で完全武装のわたし。
「これだけ持てば十分かしら?」(わたし)
「ええ、大丈夫だと思います。」(由美)
「それに、そんな武器が無くても平気ですよね?」
「なんたって、破壊の女神のマスターですもんね~。」(律代)
「なによ、それ。」(わたし)
「でもわたしに任せて。」
「必ず奴を仕留めてみせるわ。」
由美が運転席に乗り込むとエンジンを掛けた。
そしてゆっくりと走り出す黒塗りのベンツ。
わたし達が目指すのはベルリンの中央省庁が建ち並ぶヴィルヘルム街だ。
ヴィルヘルム街77番地にある首相官邸本館と78番地の拡張部分、そして総統官邸新館の3つの建物の総称が総統官邸と呼ばれていた。
このヴィルヘルム街には外務省、財務省、法務省などの建物があり、ゲシュタポ本部も至近にあった。
「あれは、武装親衛隊だわ。」(由美)
わたし達の行く手に臨時の検問所があり兵士が4名いた。
「片付けちゃおうよ!」(律代)
「わたし?わたしがやる?」
と自分を指差しながらやる気満々の彼女。
「それじゃあ、ここで実験やってみる?」(わたし)
「試しにわたしが律代ちゃんの大きさを変えてみるわ。」
ビルの角に車を停めて降りるわたし達。
わたしは心の中で律代の体が10m位になるイメージをしてみた。
すると目の前の律代がムクムクと膨らみ始めた。
服も長靴もそのままはち切れることなく一緒になって拡大していく。
何とも幻想的な光景だった。
呆気にとられる由美。
「大きくなっちゃった!」(由美)
「でもなんか、中途半端な大きさだわァ。」
「なにこれ?」
「とりあえず、その大きさでわたしを援護してよね。」(わたし)
「由美、あなたは危険だからここを離れて。」
「分かりました。」(由美)
「でも、離れたところから見てます。」
身長10mほどの大きさになった律代。
30m先の検問所の兵士達はすぐに気づいて銃を構えている。
そしてゆっくりとこちらに向かって前進を始めた。
「なによ、アイツら。」(律代)
「わたしの事、舐めてんのかよ!」
少しイライラし始めた彼女はいきなり兵士達に向かって走り始めた。
“ズン、ズン、ズン、ズン!”
突進するデッカイ女子高生。
兵士達は躊躇なく引き金を引き発砲を始めた。
“ババババババババッ!”
彼らの銃撃が律代の怒りに火をつけた。
「コノヤロ~!」(律代)
“パコーン!”
勢いよく走っていった彼女は左足で着地すると右足で先頭の兵士を蹴り上げた。
腹部のあたりに彼女のゴム長靴のつま先がヒットした。
構えていた機関銃が折れ曲がる程強烈なゴム長キックが炸裂し、男の体は数十メートルも吹っ飛ばされた。
「エイッ!」(律代)
“バシッ~!”
そして右腕と左腕で左右にいた兵士を張り倒した。
2人ともヘルメットが直上に舞い上がり、へしゃげたマシンガンが体と一緒に左右に飛んでった。
よく見れば2人とも頭部がヘルメットと一緒になって千切れ飛んでいったようだった。
最期に残った1人は恐怖のあまり固まってしまい銃を投げ捨てて両手を挙げた。
そんな彼の頭をゴム手袋を嵌めた手がギュッと鷲掴みにした。
「わたしを怒らせると、」(律代)
「どうなるか、」
「分かってんのかよ!」
「え~、オイ!」
1m以上ある巨大なJKのゴム手が兵士の頭を掴んだまま前後左右に激しくシェークしている。
宙に浮いた体は成す術もなくブランブランと振り回されてまるで操り人形のようだった。
いや、男は既に絶命していて彼の頭部は律代の手で握り潰されていたのだ。
血にまみれた遺体を投げ捨てるとツバを吐きかける彼女。
「ペッ!、あ~ムカついた!」(律代)
「女の子のわたしにいきなり撃ってくるなんてさ。」
「あ~、スッキリした。」
するといきなり“ピ~!”というホイッスルの音が聞こえた。
この騒ぎを聞きつけた周辺の部隊がこちらに向かってくるのがわかった。
「ここはわたしに任せて下さい!」(律代)
「みんな、わたしがやっつけてやります。」
「わたしにも少しはやらせてよ。」(わたし)
作戦開始にはやる気持ちのわたし。
サブマシンガンを構えて応戦準備は万端である。
わたしの背後から複数の靴音が響いてきた。
わたしは振り向きざまに引き金を引いた。
“ババババババババババッ!”
4~5名のドイツ兵が目に入っていた。
銃を持った女性がいきなり銃撃を始めて一瞬たじろぐ彼ら。
でも声を上げる間もなく全員がわたしの放った銃弾の餌食となって薙ぎ倒された。
“この感覚、たまらないかも!”
巨大化して踏み殺すのとは違って、同じ大きさで殺し合うスリルは病みつきになる。
しかも自分自身は絶対にやられないという保証付きなのだから。
わたしに射ち殺される彼らは実に哀れな存在だった。
“ババババババババッ!”
更に後に続いてやって来た連中を3~4名撃ち殺したわたし。
律代は巨大な右足で手当たり次第に蹴り飛ばしていた。
「これって、めっちゃ快感!」(律代)
「ホラッ、もっと掛かってこいよ!」
「わたしが相手だ!」
律代に蹴られた人間は不自然に変形しながら宙を舞い、殴り倒された兵士には彼女のゴム長が容赦なく襲い掛かった。
無残に踏み潰された兵士の遺体が累々と転がっていた。
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