第260話・いったいどうなってるの?
2人の巨大オンナの話声が聞こえてきた。
「ねえ、これからどうします?」(律代)
「とりあえず、総統官邸をぶっ壊しに行かなくちゃ。」(律子)
「でもどこだかよく分からないのよね。」
「こんな時にあの子がいてくれたらいいのに。」
「あの子って誰の事ですか?」(律代)
「由美っていう子よ。」(律子)
「確か、あなたと同じ位の年頃だったっけ。」
「あっ、そうそう17歳だったわ。」
崩れたビルの陰から様子を窺っていた由美はとても驚いた。
なにせ目の前の巨大オンナが自分の事を話し始めたからだった。
でもこれはチャンスだと確信した。
「律子さん、まだわたしの事をちゃんと覚えていてくれたんだわ。」(由美)
思わずつぶやく由美。
こうなったらすぐに名乗り出ていくしかない。
由美はハンド拡声器を握り締めてゆっくりと瓦礫の中を歩き出した。
周囲には当然誰もいないから間違えて踏み殺される事もなさそうだと思った。
「あの~、律子さん!」(由美)
「わたしです!」
「由美です!」
由美はいきなり破壊されたビルの前から律子に向かって話しかけた。
聴き取りやすい流暢な日本語の発音にすぐに反応する律子。
「あらっ、この声?」(律子)
「えっ?まさかあなたなの?」
「ちょうどよかった。」
「今あなたの事、話してたのよ。」
優しそうな表情で由美の方を覗き見る律子。
となりの巨大な女子高生も同時に視線を送って来た。
とりあえず踏み殺されそうな雰囲気は無かった。
そんな空気感にホッとした由美は落ち着いて話し始める。
「律子さん、計画の事って覚えてますか?」(由美)
「こんなに早く来ちゃって・・。」
「ごめんなさい!」(律子)
「実はいろいろあって来ちゃったのよ。」
「あっ、そうそう彼女は石川律代ちゃんっていうの。」
「わたしのパート仲間で後輩で~す。」
「わたし律代です。」(律代)
「よろしくお願いしま~す!」
「なんかこの辺、メチャクチャにしちゃって、」
「ホント、ごめんなさ~い!」
「でも安心してください。」
「わたし達、正義の味方なんで。」
意外とちゃんとした女子だと思った由美。
しかも巨大オンナと普通に会話が成立している。
「わたし達、この体だとデカ過ぎだよね?」(律子)
「ちっちゃくなろうか?」
「えっ、そんなことできるんですか?」(由美)
「ですよねぇ?」(律代)
「ナニいってんのよ。」(律子)
「あなたがさっきその逆を実行したじゃん!」
「あっ、そうだった。」(律代)
「わたし達、普通の大きさだったんですよね。」
「え~、そうだったんですか?」(由美)
「そうなのよ、この子とお試しトリップってことで、」(律子)
「普通の大きさでこっちの世界に来たんだけど、」
「親衛隊本部の中で警備兵にもみくちゃにされて、」
「この子が念じたら、いきなり巨大化しちゃったの。」
「そんな技、今まで見た事ありません。」(由美)
「実はわたし達、姉妹鏡を両方手に入れたんだよ。」(律子)
「だからわたしは今、マスターとして絶大な力を手に入れたみたいなの。」
「そして、この律代ちゃんがわたしのサブマスターって事みたい。」
「リリアさんはどうしたんですか?」(由美)
「話せば長くなるけど・・。」(律子)
「じゃあその前に、わたし達、」
「サイズを変えるわね。」
「ほらっ、あなたも一緒に念じるのよ。」
そう言うと2人の巨大オンナは瞑想状態に入った。
すると辺りがだんだん暗くなり始めた。
突然凄まじい稲妻が走ったかと思うと一瞬目が眩む由美。
この様子を中継していたテレビ画像も一瞬ノイズが入って映らなくなった。
そして今まで立っていた身長160m以上の巨大オンナ2人は忽然と姿を消した。
まるで煙のように消えてしまったのである。
「ほらっ、わたしの言った通りでしょ。」(律子)
聞き覚えのある声がしてハッとした由美。
一瞬目の前が真っ白になって立ち眩みした状態に陥っていた彼女。
そんな由美の隣に律子と律代が等身大の大きさで立っていた。
あまりの事に言葉を失う由美。
そんな呆然としている彼女とは裏腹にニコニコと微笑かける律子達。
「驚きますよね、こんなのって。」(律代)
「でも、やっぱりパラレルなのかな~って思っちゃいます。」
「あらためまして、わたし石川律代と申します。」
「パートやってま~す。」
「JKやってま~す。」
「てか、JKって知ってます?」
等身大になれば自分と同年代の女の子の律代だった。
そんな律代に少し親しみを感じる由美。
「わたしは本宮由美と申します。」(由美)
「わたしも17歳のJKです。」
「あなたとは友達になれそう。」
そんな2人の会話を聞きながら落ち着いた表情の律子だった。
そして、ひと呼吸置いてから切り出した。
「それじゃあ、リリアの事を話すわね。」(律子)
律子は前回由美と別れた後からの事を丁寧に時間軸に沿って話し始めた。
当然律代も知らなかった事も含まれていたから、律子の話に耳を傾けていた。
全てを話し終えた律子。
「そういう訳でわたしは妹鏡をゲットしたの。」(律子)
「もちろんこの律代ちゃんのお陰でね。」
「そうだったんですか。」(由美)
「色々ありましたね。」
「それじゃあ、リナさんからのメッセージを伝えますね。」
いよいよ本題に入る由美だった。
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