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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第259話・交渉役はわたし?

 「でも、この間律子さんと会った時は、」(由美)

「殺戮の跡を見てひどくショックを受けてました。」

「その彼女がそんな事するなんて・・。」

「信じられません、わたし。」


「それが、調子に乗って暴れ回ったのは若い女子の方みたいなの。」(リナ)

「律子さんの方は、少しは暴れたけど、」

「ツバ責めもやったみたいだったらしいけど、」

「客車に息を吹き込んだりしたみたい。」

「え~っと、ツバを流し込んだりもしたみたいよ。」


「そんな事したんですか?」(由美)

「何だか、ちょっと幻滅しちゃいそうです。」


「何か事情があったのかも。」(リナ)

「あなただって、リリアのグループに溶け込む為に、」

「あっちの世界で随分大暴れしたんでしょ?」


「それはそうですけど・・。」(由美)


「とにかく、彼女と交渉してきてくれる?」(リナ)

「今からすぐに。」


「はい、分かりました。」(由美)


由美は胸の高まりを感じながらリナのオフィスを出た。

リナは護衛の国防軍兵士の部隊を付けようとしたが、由美はやんわりと断った。

何人引き連れて行こうとも、あの巨大オンナにはまるで歯が立たないからだった。

それならむしろ律子と友好的な関係の自分1人で会いに行った方がより信用されると感じていた。

それにしても、殺戮現場でかなりショックを受けていた様子の律子。

そんな彼女がこちらの世界に突然現れて暴れ回り、そして味方の若い兵士達をいたぶり殺したというリナの話が信じられなかった。


“あの時あんなに動揺していたのに・・。”


やっぱり巨大な体に変身してしまうと思考そのものが変わってしまうのかと思ってしまう由美だった。


“そういえば、わたしだって仕方なくとは言え、あっちの世界で暴れた時は結構楽しかった。”

“なんていうのか、その、神様にでもなったような高揚感に包まれてしまって・・。”


そんな気持ちが理解できるのは、実際に巨大化を経験した者だけだと実感していた。

とにかく現場の状況を把握しなければと親衛隊本部ビルの方に向かって歩き始めた由美。

彼女の歩いている場所からでもモクモクと凄まじい煙が視認できた。

それに焦げ臭いニオイと何やら嫌な臭いが鼻を衝く。


「これって、何の臭いなんだろ?」(由美)


思わずつぶやいてしまう。

掃除をしていない公衆便所のような強烈な臭いに混じって、ツ~ンとした人の口臭のような嫌なニオイ。


「なによこれ、まさか律子さん達の体液臭なのかしら?」(由美)

「最低だわ、こんな事して。」


由美は少し苛立ちを覚えていた。

でも小人の自分に何ができるんだろうと少なからず不安もあった。

でもあの時会った律子は冷静で大人で優しい女性だったから。

いきなり自分の事を踏み殺したりはしないと確信していた。

現場に近づくにつれて、悪臭は酷くなり粉塵や埃で辺りが薄暗くなっている。

とてもマスクをしなければいられない程だった。

白いマスクを着用すると由美は足早に現場に向かう。


「あそこだわ!」(由美)


粉塵で視界不良の中、巨大な2人の女が立っているのが見えてきた。

やはり身長が160m以上はあった。


「あらっ、もう1人って律子さんよりでっかい!」(由美)


思わず見上げながら叫んでしまった由美。

そんな巨大オンナのシルエットがはっきりと見える場所までやって来た。

確かにリナの言っていた通り、各通りには立ち入り禁止の看板が立てられたりテープが張られていたが、警備の兵士はいなかった。

わざわざ警備兵など配置しなくても、巨大オンナ達の蛮行を見れば現場に行こうなどという物好きはいないと思われていたのだろう。

それが幸いして由美は難なく現場にやって来る事ができた。

ビルの影に隠れながら様子を伺う由美。

巨大オンナ達は笑いながら話をしている。


“律子さん、なんか楽しそうな感じだわ。”


予想外に悪びれた様子もなく現場周辺をメチャメチャに破壊したであろう律子を見上げて愕然とする由美。


“律子さん、どうしちゃったんだろう?”

“この前は殺戮への嫌悪感が半端なかったのに・・。”


フッと何かにつまづきかけた由美。

足元を見ると履いているブーツで何かを踏み付けていた。


「なによこれ!」(由美)


それは無残に撃ち殺された衛兵の遺体だった。

辺りを見渡すと累々と横たわる兵士の遺体。


「これも律子さんが撃ち殺したのかしら?」(由美)

「酷い!ひど過ぎる!」


でもあんなに巨大な体で銃を撃つというのもおかしな事だと思った。


“じゃあ、いったい誰にやられたんだろう?”


謎は深まるばかりで早く律子と話をしたい気持ちでいっぱいになった。

さっきの胸の高まりはそういう事だったのかと感じた由美。

でもあの隣に立っている若い長身の巨大女子がどんな人物なのか情報が無いから不安になる。

それにリナからの情報だとこの惨状の張本人はあの巨大女子らしいから、余計に警戒心を抱いてしまう。

とにかく未知の巨大女子に見つかって踏み殺される前に律子に話掛けなければならない。

一応ハンド拡声器は持参していた。

軍用のかなり強力な音声のでるものだった。

それにしてもあの2人の履いている巨大な白いゴム長靴。


「あんなにどす黒く汚れたゴム長で踏まれたくはないわね。」(由美)


半ば呆れたような表情の由美だった。


次回の更新は2月16日(0:00)になります。


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