第252話・女子高生のツバ息
“ズシン!”
“ズシン!”
“ズシン!”
線路上で停まってしまっている軍用列車。
先頭のディーゼル機関車の後ろには対空砲を据え付けた車両が連結され、その後ろには歩兵部隊をぎっしり乗せた客車が4両、そして戦車を3両づつ載せた貨車が4両と最後尾には重機関銃を何丁も据えた武装貨車が連結されていた。
彼らが立ち往生しているのはちょうど高架橋の上だった。
わたし達巨大女子の進行に気付いた彼らはすぐに後方に向かって動き出した。
前方の中央駅が律代によって完全に破壊されていたので、後進してわたし達から逃れるしかなかった。
「ねえ、あれで逃げてるつもり?」(わたし)
「ふふふっ、マジでウケるんですけど。」(律代)
「わたしに任せて下さい。」
鉄道高架橋の付近にやって来たわたし達。
律代がいきなり列車がバックしている方向の橋を踏み潰した。
“ヴシャッ!”
“ボボボボ~ン!”
「イェ~イ!」(律代)
親指を突き立ててはしゃぐ彼女。
列車は急停車してしまった。
そして対空砲や最後尾の機関銃座がわたし達の顔目掛けて発砲を始めた。
“ドドドドドドドドッ!”
「きゃっ、ナニすんのよ!」(律代)
「コノヤロ~!」
前方の機関車と対空砲貨車を右手で鷲掴みにすると足元に叩き付けた。
“ヴォヴォ~ン!”
“グシュッ、グシュッ!”
地面に叩き付けられた2両の車両をそのままゴム長で踏み砕く彼女。
わたしは彼女の動きに連動して最後尾の機関銃座の車両をゴム手袋で握り上げてそのままギュッと力を込めた。
“ムギュッ!”
わたしの手の中で重火器と警備兵8名が潰れるのを感じた。
そのまま手を開くと粉々になった貨車や銃器や兵士の遺体がパラパラと地面に降り注いだ。
わたし的には何気ないフォローだったが、またしても“やっちゃった感”に包まれて心地よい。
「ついでにこいつらも片付けちゃうわね。」(わたし)
わたしは戦車を載せた貨車を1両づつ両手で掴みあげて放り投げてやった。
「エイッ!」
そしてもう2両も同じように力任せに握り潰しながら持ち上げて投げ飛ばした。
「ソレ~!」
遠くの方で黒煙が上がり貨車も戦車もメチャメチャになって地面に叩き付けられていた。
わたし達の凄まじい破壊力に客車の兵士達は恐れおののき、抵抗する者は1人もいなかった。
「あらっ、こいつ等みんな若いわねぇ。」(律代)
「なんか、実験のし甲斐があるかも。」
「女子高生のわたしに可愛がってもらえるんだぞ~!」
「ありがたく思いなさいよね。」
そう言うと彼女はおもむろに1両の客車を掴み上げた。
両手で客車の両端を掴んで中を興味津々の眼差しで覗き込む。
巨大な日本人の美しい女の子に見つめられてさぞや不思議な気分なんだろうと思った。
ついさっきまで暴力的だったこの巨大JKが今は優しそうな表情で獲物を物色しているのだ。
すると客車の窓の1つでいきなりピシャっとカーテンが閉じられた。
恐怖心のあまり若い兵士の1人が思わず行動に出てしまったのだ。
「ナニよこいつ等!」(律代)
「わたしを怒らせる気?」
「いいワ、わかった。」
「こうなったら、」
「こうしてやるんだから。」
そうつぶやくと右人差し指で窓ガラスを1つ1つ突き破っていく彼女。
もちろんカーテンが閉められた窓は特に念入りに指を突っ込んでめり込ませた。
そして準備が終わるとすぐに口を開けて客車に向かって息を吐き掛け始めた。
「ハァ~~、ハァ~~!」(律代)
「ほらほら~、イイ臭いでしょ?」
「ハァ~~、ハァ~~!」
「わたしの女子息なんだからねぇ。」
「ちゃんと味わいなさいよねぇ。」
「ハァ~~、ハァ~~!」
「ハァ~~、ハァ~~!」
生温かい彼女のツバ息が車内に充満し、逃げ場のない中の兵士達は生き地獄状態である。
それにしても彼女の息は強烈な臭いだったから無理もない、中の兵士達は顔を押さえたり下を向いて嘔吐し始めたりと至極自然な反応だった。
そんな彼らを見て怒り心頭になった彼女。
「ナニよ!」(律代)
「わたしの口が臭いっていうの?」
「もう、許さない!」
「エイッ!」
“ブシュッ!”
車両の両端を思いっきり握り潰すとそのまま絞り上げる彼女。
まるでボロ雑巾のようにねじり上げられる客車は中に居た100名以上の兵士諸共クチャクチャに潰されて地面に投げ捨てられた。
“ヴァシャ~ン!”
「フン、いい気味だわ。」(律代)
「わたしを馬鹿にして。」
「こいつ等、本当に失礼ですよね?」
「わたしみたいなJKに向かって。」
「今度は律子さんやってみて下さいよ。」
「え~?わたし?」(わたし)
「アラサー女子の息って、もっと強烈かもよ。」
「アッハッハ、マジですか?」(律代)
「じゃあ、見てみたいかも。」
「こいつ等の反応。」
「ねえ、お願いしますってばァ。」
「え~、やるのォ?」(わたし)
「なんだか、恥ずかしいわ。」
「わたしだって、ヤバいかもよ。」
わたしも彼女に負けないくらい口臭はキツいと思う。
全然気が進まなかったが、目の前の可哀想な客車の兵士達を見ると、
イタぶってやりたい衝動に駆られるわたしだった。
“わたし、口の臭いにも自信ありま~す!”・・みたいな感覚だ。
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