第251話・わたしの実験台になって?
“ヴォシュッ!!”
“バキバキバキバキッ!”
“ジュヴォ~ン!”
グシャグシャに握り潰された車両部隊の残骸と、大勢の兵士達の遺体が散らばる広場の後方で凄まじい土煙が上がった。
ドイツ軍の兵舎を踏み抜いた律代のゴム長靴が縦長の建物をつま先と甲の部分で粉砕しながら蹴り上げたのだ。
中にはまだ多数の兵士が居たのかもしれない。
でもそんな事はお構いなしに兵舎は彼女のゴム長によって蹴り散らかされて消滅した。
「アッハッハ、やったね!」(律代)
手を叩いて喜ぶ彼女。
「こっちもついでに・・。」(律代)
「そ~れっと。」
“ミシミシミシ!”
兵舎を粉砕した彼女、隣の3階建ての司令部に腰掛けるようにお尻を乗せた。
彼女のぴっちりとしたジーパンがビルを覆い隠し、天井部分からはみ出した彼女のヒップが建物全体を締め付けるように喰い込み、そしてすぐにその限界を超えた。
“パキパキパキパキッ!”
“バッシュ~ン!”
彼女のお尻の下で建物が破裂した。
前後左右に細かい瓦礫片とホコリが飛び散りモクモクと煙が噴き上がった。
「あらっ、ちょっとお尻を乗せただけなのにィ~!」(律代)
「このビルもろ過ぎ!」
すぐに立ち上がって瓦礫を踏み砕きながら靴底でならす彼女。
戦闘部隊を殲滅し、司令部諸共全てを破壊するのに掛かった時間は僅か3分程だった。
殺された兵士の数は数百人に上っていた。
「全然物足りないかも、わたし。」(律代)
もはや高身長の女子高生にとって、この程度の敵をやっつける事などヒマつぶしにもならなかったようだ。
どうやらわたしが壊滅させた方がこの地区に駐屯する都市防衛隊の拠点で、律代が始末した方は武装親衛隊の基地だったみたいだ。
わたしの目線から見て、それぞれの犠牲になった兵士達のユニフォームで判別できた。
「あなたがやったのって、エリート部隊よ。」(わたし)
「わたしの方は普通の部隊。」
「え~、そうなんですか?」(律代)
「全然そんな感じしなかったわ。」
「律子さんのはフツーの奴等って事なんですね。」
「でも、まだまだ居ますよね?」
「わたし達の餌食になるヤツラって。」
「わたし、もっと試してみたいんですよ。」
「小人達でわたしの女子技を。」
「まるで人体実験よね?」(わたし)
「そうかも。」(律代)
「生身の人間で実験できるって、」
「たまらない快感を感じちゃうかも!」
「わたしの息をもっと試したいなァ。」
「実はわたし、」
「今日朝起きてから、」
「まだ、歯を磨いてないんですよ。」
「だから結構臭うかも、」
「わたしの息って。」
「それって、マジ?」(わたし)
「今日1日、食べたり飲んだりしたのに?」
「今日のわたし、あんまり食べてません。」(律代)
「実はトリップの事考えると、もの凄く興奮しちゃって、」
「お昼にクッキーを少し食べただけでぇ、」
「あとは、さっきオレンジジュースを飲んだくらいかなァ。」
わたしは彼女の方に近寄っていき、律代の口元にわたしの鼻を近づけた。
そして、
「ちょっと、吐いてみて。」(わたし)
「はァ~。」(律代)
少し恥じらいながらわたしの顔に息を吐き掛ける彼女。
うっ、と一瞬むせ返りそうになるのをこらえたわたし。
可愛い顔をした可憐な女子も、所詮は人間だと思った。
なんだかツ~ンとした目に染みるような悪臭がわたしの鼻を衝く。
魚の腐ったような嫌な臭いだった。
「やっぱり臭いですよね?」(律代)
「そんな事ないわよ。」(わたし)
「無臭ではないけど・・。」
「やっぱり、ヤバい臭いなんだ。」(律代)
「え~、恥ずかしい!」
「どんな臭いなんですか?」
「わたしの息って。」
「自分じゃ分からないんですよ。」
「そうねえ、何かが腐敗したような・・。」(わたし)
「エぇ~、マジですか?」(律代)
「それって、ヤバくないですか?」
「体調良好なのにィ。」
「でも、なんか試したくなってきちゃったかも。」
「律子さん、さっき少しだけ顔を背けてたァ。」
「うそうそ、ゴメン!」(わたし)
「そんなつもりじゃないのにィ。」
いくら打ち消してもわたしの表情は正直だったみたいだ。
でもこの悪臭を嗅がされたらどうなるのか、わたしも興味があった。
「じゃあ、試してみる?」(わたし)
「はい、やってみます。」(律代)
わたし達はさっそく実験台になってくれる小人達を探し始めた。
民間人よりは訓練を受けた兵士の方がよい。
わたし達の足元の部隊は全滅しちゃったから、新たな奴らを物色しなければならない。
でもすぐに見つかった。
律代の獲物が。
「あれなんか、いいんじゃないかしら。」(わたし)
わたしは律代が破壊した中央駅に向かっていた軍用列車を見つけた。
行く手が破壊されれ線路上で立ち往生している。
10両編成で客車には遠目に見ても兵士がぎっしりと乗っているのが分かった。
「イイかも、イイかも!」(律代)
「たっくさん乗ってるし。」
「わたしの実験台になって貰えそう。」
わたし達はすぐにその列車の止まっている線路に向かって歩き出した。
律代もわたしも悪意に満ちた笑みを浮かべながら。
可哀想な若い大勢のドイツ兵どもは、まだわたし達の惨い計画に気付いてはいない。
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