第248話・いきなり発動?
“ズッッヴォー~ン!“
わたしの頭がビルの天井を突き破った!
スルスルと体中にみなぎる力、そして四肢があらゆるものを粉砕しながら伸びてゆく快感。
わたしの体はビルの2階フロアでいきなり巨大化し始め、あっと言う間に巨大オンナに変身していた。
向かい側にいた律代も同様な変身を遂げていた。
「ウワァ~、!!」(律代)
「メッチャ、快感!」
「メッチャ、気持ちイ~!」
30階ほどの巨大な高層ビルもわたし達2人の巨大オンナによってメチャメチャに粉砕されて崩れ去っていた。
辛うじて律代の傍らに崩れ残った部分が20フロア分ほどポツンの不自然に建っていた。
「えいっ!」(律代)
“ズヴァッ!”
そんな哀れな半壊ビルの残りにはまだ何人も生き残った人達がいたように見えたが、
ニヤニヤしながら後ろ蹴りで粉々に蹴り崩す律代。
「アッハッハッ!」(律代)
「綺麗にしてやったわ。」
悪びれた様子もなくはしゃいでいる。
わたし達は数千人がいたであろうビルの中で巨大化し、一瞬で大勢の命を奪ってしまった。
それにしてもなぜ?
この近い過去でほぼ等身大でのトリップだったはずなのに・・。
「どうして巨大化しちゃったんだろう?」(わたし)
「わたし達・・。」
「そういえば、わたし、」(律代)
「もしかしたら、わたしかも?」
「あいつ等に揉みくちゃにされて、」
「それから、無性に巨大化したいって、」
「念じてたのかも・・。」
「あの時くらいの大きさに、」
「なれっ!」
「・・みたいな。」
「たぶん、そうだわ。」(わたし)
「もう姉妹鏡が揃っているんだから、」
「それにわたしとあなたとで、」
「マスターとサブなのかも。」
両方の鏡が揃い、それを発動させるわたしと律代。
実はすでに条件は揃っていたって事なのだ。
これが絶大な力の発動!
どの時代にも行けて、自由自在に大きさをコントロールできて、
好きなだけ暴れ回る事ができるこの力。
「これって、あのヤバい“力”って事ですかね?」(律代)
「だとしたらわたし達、」
「これから暴れ放題ですよね。」
「うわっ、やっば~い!」
「どうしよう、わたし達!」
もうすでに浮かれ気味の律代。
元々リアルと妄想の世界がごっちゃになっているから手が付けられない。
等身大の兵士をあれだけ無残に殺しまくっても顔色ひとつ変えない彼女。
さっきのビルへのトドメ蹴りも何の躊躇も無かった。
そんな彼女はわたしの反応も見ないままノッシノッシと歩き出した。
“ズシ~ン!”
“ズシ~ン!”
“ズシ~ン!”
“ズシ~ン!”
「ホラッ、どきなさい!」(律代)
“バッシュ~ン!”
“ドゥッヴォ~ン!”
“ヴォコッ!”
行く手を遮る建物を手当たり次第に蹴り付けて破壊する彼女。
もう彼女の履いている白いゴム長靴は粉塵でどす黒く汚れジーパンも白っぽくなっていた。
そんな事お構いなしに両足で辺り一面を踏みしだきながら歩き回る彼女。
そういえば親衛隊本部のビルがここにあるって事は、この付近に総統官邸もあるはずだ。
わたしの脳裏にはある事がひらめいていた。
リナ・フィッシャーとの約束の日までまだ少し日があったが、
こうなったら、もうお構いなしにこの国の中枢をわたし達で破壊して、
このまま時代を塗り替えてやろうと思い始めていた。
「律代ちゃん!」(わたし)
「は~い!」(律代)
道路上の車両を踏み潰しながらわたしの方に振り返る彼女。
「わたしに考えがあるの。」(わたし)
「一緒に手伝ってくれる?」
「いいですよ!」(律代)
「わたしで良ければ、」
「何でもぶっ壊してやりま~す!」
「今からわたし達、」(わたし)
「この国の歴史を塗り替えてやろうと思うの。」
「まずはこの付近の総統官邸をぶっ壊しに行くわよ。」
「抵抗勢力は徹底的に排除して構わないから。」
「了解で~す!」(律代)
「わたしに任せてくださ~い!」
珍しく破壊と殺戮に肯定的で積極的なわたしに少し戸惑っている風の彼女。
それでも暴れる事に何ら罪悪感の無い彼女にとってはわくわく感でいっぱいだった。
わたしは必死になってあのデータに出てきた画像を一つ一つ思い出そうとしていた。
冷静になればナチスの中枢のビルはそれぞれが特徴的なデザインだったような気がする。
確か総統官邸は低層階、確か4階建ての横に伸びた敷地面積の広い建物だった。
正面玄関の上部には鷲のシンボルマークが掲げてあった。
国会議事堂は巨大なドーム型で正面上部の三角型の屋根が特徴だった。
とにかくこの近辺の建物は殆どがナチのビルだから。
適当に暴れ回りながら見つければ良いと思ったわたし。
「え~い、こうなったらわたしも、」(わたし)
「久々に大暴れしてやるわ!」
成り行きとはいえ、こうなったからにはわたしも覚悟を決めて行動するしかない。
もうすでに大勢の人々の命を奪っていたから、何だか吹っ切れたようだった。
ちょうどわたしの正面にナチスの軍関係と思しきビルが建っている。
ゆっくりと一歩一歩踏み締めながら歩き始めたわたし。
「ホラッ、覚悟しなさい!」(わたし)
「ソレッ!」
“ズッヴォ~ン!”
わたしのワクマスがビルの中心に突き刺さりそのまま蹴り上げると、
無数の瓦礫片が宙に舞い、わたしの体中にジンジンとした電気が流れた。
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