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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第239話・真実へのリアルな反応

 「律子さん、大丈夫ですか?」(律代)

「なんか、真っ青な顔って感じ。」


「えっ?」

「わたし、なんかマズい事言いました?」


しばらく黙ったままのわたし。

どうするか迷いに迷っている。

この子を本当に引きずり込んでいいものか?


「ちょっとォ、ここ出ない?」(わたし)

「とりあえず、これ食べてからね。」


目の前のパフェを指差して召し上がれとばかりに促す。


“ここはとにかく、落ち着くべきだわ。”


わたしの言葉に彼女も黙ったままパフェを食べ始めた。

お互いに食べ終わって飲み物を飲み終わると同時に席を立った。


「ここはわたしのおごりだから。」(わたし)


「ありがとうございます。」(律代)


会計を済ませたわたしは彼女と一緒に歩き出した。


「ねえ、わたしの部屋に来ない?」(わたし)

「色々と話したい事があるから。」


黙ってうなずく彼女。

わたしの部屋に着くと、彼女を招き入れてくつろがせる。


「コーヒーよりウーロン茶とかの方がいいよね?」(わたし)


飲み物でも出して落ち着こうとするわたし。

律代の表情が落ち着かず強張っているのは確かだった。


「あのね、実は・・。」(わたし)


どのくらい話していたのだろう。

1時間、いや2時間以上は経っていた。

気づけばもう夜の8時を回っていた。


「大変!ごめんなさい!」(わたし)

「早くあなたを帰らせなきゃ」


うつむいたままの彼女の手を取って外に連れ出すわたし。

タクシーを拾って彼女を自宅まで送り届けた。

車内でも終始無言の彼女。

わたしの微笑みも完全に作り笑いで引きつっていてばればれだった。


「あのォ、今日はありがとうございました。」(律代)

「それから、ごちそうさまでした。」


別れ際にやっと少しにっこりとした表情になってわたしはホッとした。


「じゃあ、また明日ね。」(わたし)


そう言って別れたわたしはとぼとぼと家路に向かう。


“本当に良かったのかしら。”


わたしは最初に手鏡を手にした瞬間からの出来事を彼女に洗いざらい話した。

そんなわたしの話を彼女は黙って聞いていた。

時には泣き出しそうな表情になって・・。


“しまった、こんな事になるんだったらトリップの前に話しとくんだったのかも。”


散々大暴れして大勢の人々を踏み殺した後にリアルだったなんて聞かされたら。

わたしだって凄まじく動揺していただろう。

たった今、自分の足で踏み潰し、自分の手でひねり殺したリアルな人々。


“16歳の子には酷だったのかも・・。”


あの頃のわたしだって、しくしく泣いていた事もあったっけ。

さて、この事を先生になんて報告するべきか。

もちろん妹鏡のエリッシュを手中に収めたのだから報告しなければならない。

そこにあの子の存在を加えてしまっても良いものか。

わたしは悩んだ末に決めた。

やっぱりウソをつく訳にはいかない。

先生の事は信用しているし、今後も彼女の助けがなければと思っていたから。

わたしは、とりあえず明日の彼女の反応と心理状態を確認してからと思った。

翌日いつものように出社すると、いつものように夕方4時過ぎに出勤してきた彼女。


「おはようございま~す!」(律代)


なんだ、いつもと変わらず元気じゃん。

胸をなでおろしたわたし。

すると急にわたしの方に駆け寄ってきた。


「律子さん、終わったら少しいいですか?」(律代)


「もちろんよ。」(わたし)

「またわたしの部屋に来る?」


「はい、そうさせて頂きます。」(律代)


いつものように仕事を終えて外にでると彼女がわたしの事を待っていた。


「今日はお母さんに遅くなるって言ってあるから、」(律代)

「大丈夫です。」


昨夜わたしが彼女を送って行った時に挨拶しておいてよかった。

今日は昨日と違っていつものようにはきはきとしている彼女。

何かが吹っ切れたのか、それとも覚悟を決めたのか。

あの話の後、彼女はエリッシュの鏡をわたしに託してくれたのだった。


「あのォ、」(律代)

「マジなんですか?」

「昨日の話って。」

「わたしだって、巨大女の事はニュースで散々見てましたから、」

「でも、律子さんが当事者だったなんて・・。」

「ってか、」

「わたしも、当事者?」

「えっ?マジ?」

「・・みたいな。」

「だってわたし、」

「思いっきり踏み殺しちゃったんですよ。」

「こうやって・・。」

(足をグリグリさせて踏みにじる素振りをする)

「あの時は随分楽しませてもらいましたけど。」

「でもでも、」

「あの人達がみんな、本物の人間だったんですよね。」

「わたし・・。」


勢いよくしゃべっていたら急に両手で顔を覆い泣きそうになる彼女。

しばらく言葉を失い、また肩を震わせ始めている。

わたしは彼女に寄り添って優しく抱き締めてあげた。


「忘れなさいなんて、言わない。」(わたし)

「わたしがもう少し早く話していればよかったのよね。」

「本当にごめんなさい。」


「だから律子さんは暴れなかったんですよね。」(律代)

「人を殺したくないから・・。」

「でもわたしは・・。」

「あんなにたくさん殺しちゃった・・・。」


またわたしの胸に顔をうずめる彼女。

今日は職場で普通だった彼女。

でもやっぱり16歳。

相当堪えていたんだと思った。

まだまだ不安定な心理状態の彼女。

先生に話すべきか悩ましい・・。


次回の更新は9月29日(0:00)になります。


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