第236話・こんにゃろ~!!
「あらっ?」(律代)
「あれって、何かしら?」
「軍隊?」
「てか、わたし達?」
スマホを見たらあと5分程だった。先ほどヘリ部隊を撃退してひと暴れした律代。
まだまだ暴れ足りないみたい・・。
「あなたの足元、見てみなさいよ!」(わたし)
「もうメチャクチャなんだから。」
「わたし達って、でか過ぎなんだからさあ、」
「ちょっと動いただけで大変な事しちゃうんだよ。」
「解ってる?」
「は~い。」(律代)
「わかってま~す!」
「ごめんなさ~い。」
まだヘラヘラした感じで受け答えする彼女。
「あれって、わたし達を倒そうって事ですかね?」(律代)
「え~、だとしたらマジウケるわ!」
「うわぁ!わたしを?」
「倒す?」
「ありえないんですけど。」
今まで減らず口を叩いていた彼女の目がコワい。
表情とは裏腹に笑っていないのだ。
女の子でも身長が175cmもあれば迫力満点だ。
「わたし、ちょっと行ってきます!」(律代)
そう言うと、すたすたと歩き始めた彼女。
“ズシン!”
“ズシン!”
“ズシン!”
“ズシン!”
足元など全く気にせず道路を乱暴に怒りながら進む巨大女子高生の律代。
キャラメル色した靴底のロングゴム長靴でノッシノッシと歩きながら車やバスや街灯を踏み潰す。
“グシュッ!”
目の前の歩道橋はひと踏みで砕け散った。
悪いとは全く思っていないようだった。
あとわずか数分で扉が現れる。
そうしたら強引にでも彼女を連れて帰らなければ。
そんな風に思っていたら、ハッとした。
“グシュッ!”
“グシュッ!”
“グチャグチャッ!”
「エイッ!」(律代)
「こんにゃろ~!」
「コ~ンニャロ~!」
“ジュヴッ!”
“ジュヴッ!”
“バシュッ!”
20mほどの距離も長身で足の長い彼女にとっては僅かなものだった。
ドイツ軍戦闘部隊を遠慮会釈なく踏み荒らし始めた彼女。
彼女のワークマスターがここぞとばかりに暴れ回る。
膝をわざと高く上げて踏み付ける。
巨大なゴム長ソールが地上の哀れな戦車やトラックや装甲車両を踏み潰す。
「ふふふっ!」(律代)
「こんな、おもちゃみたいなもんで・・。」
「わたしに歯向かう?」
「はぁ~?」
「マジで~?」
「舐めてんのかよ?」
“ジュリジュリジュリッ!”
逃げ惑う足元の歩兵部隊を蹂躙し続ける彼女のワクマス。
「ワクマスりんりんオンナ、」(律代)
「舐めんじゃね~よ!」
「オラッ!」
“ジュヴッ!”
“ズヴォッ!”
“ズヴォッ!”
油汚れがたっぷりと付着したどす黒いワクマスのカカトがタイガー戦車を次々に踏みしだいていく。
「ニジりを入れるのがコツかしら?」(律代)
“ギュリッ!”
“ギュリッ!”
“ギュリッ!”
「アッハッハッ!」(律代)
「ぺっちゃんこ~!」
「思い知ったかよォ!!」
黄色い声で叫びながら暴れ回る彼女。
「マジで踏みごたえ無さすぎ~!」(律代)
「ってか、これって軍隊?」
「弱過ぎなんですけどォ!」
「こうしてやろうか、オラッ!」
そう言うと、足元の戦車を掴み上げる。
「ホラッ!」(律代)
“グチュッ!”
「ウワぁ~、やべェ!」(律代)
「うっはっは!」
一瞬で鋼鉄製の戦車をゴム手袋で握り潰した彼女。
足元に投げ捨てられた戦車は彼女の指の跡が残され、見るも無残な姿になっていた。
きっと中の乗員は全員押し潰されて即死だったろう。
「こんな所にもォ!」(律代)
「コ~ノヤロ~!」
“プシャ~ン!”
“パコ~ン”
“パッコ~ン!”
「えっへっへ!」(律代)
「吹っ飛んじゃったぁ!」
「ゴメンね~!」
別の通りにいた88mm砲を牽引して来た装甲車両諸共思いっきりゴミ長で蹴り上げた律代。
ワクマスのトゥーが当たった瞬間に粉々になって空高く舞い上がる無数の残骸。
“これって、わたしが昔やってた事なんだわ。”
彼女の暴れっぷりを見ながらつくづくそう感じてしまうわたし。
もう誰にも暴れ狂う巨大JKを止める事などできない。
最初にこの世界に来た時はわたし、戦車の砲撃にマジでビビッてしまった。
この世界の武器が巨大化したわたしには全く効かないという事が分かって初めて暴れる事を決心したわたし。
でも16歳の彼女は部隊の攻撃を受ける前に蹴散らしてしまったのだから、その行動力には負ける。
「えいっ!」(律代)
「えいっ!」
「えいっ!」
“ヴァコッ!”
“ヴァコッ!”
“ヴォコッ!”
生き残っていた戦車や装甲車をつま先で右に左に蹴り分ける。
獲物を求めて破壊の限りを尽くす彼女の履いている白いゴム長靴。
彼女に蹴られた戦車がビルの外壁に激突して爆発する度に彼女のワクマスが黒ずんで汚れていく。
踏まれた戦車には細かいVの字型の靴底模様がくっきりと残されている。
「うわ~、わたしっ、」(律代)
「やっちゃいましたぁ!」
「あっと言う間に全滅しちゃった。」
一心不乱に大暴れした彼女、やっと我に返ったようだった。
「あら~、ホント、ごめんなさい!」(律代)
「ちょっとやり過ぎました。」
「わたしったら、」
「つい調子に乗っちゃったかも。」
わずか2~3分でドイツ軍の1個大隊を壊滅させた彼女。
ペロリと舌を出しながら頭を搔いている。
その仕草が何とも可愛らしい女子高生なのだが、
彼女の足元にはグズグズになって磨り潰されたドイツ軍部隊の残骸だけが残されていた。
そんな惨状のちょうど上にグリーンの閃光が走り不思議な扉が現れ始めていた。
次回の更新は9月8日(0:00)になります。