第22話・わたし達の反省会
破壊の限りを尽くしたわたし達は心地のいい汗をかいていた。
メチャメチャに破壊されたドイツ空軍の基地を見下ろしながら、わたし達は満足感でいっぱいだった。
「もう、壊すものがなくなっちゃいましたネ。」とちょっと物足りない感じの里奈子。
「そろそろ1時間経つから戻らなくちゃ。」とわたし。
しかし、まだ少し興奮状態の里奈子は話し出すと止まらない。
「最初はびっくりしたけど、とっても楽しかったです!」
「なんかっ、わたし、こんなに暴れたのって初めてかも。」
「小人の飛行機もビルも踏んづけると簡単に壊れちゃうんですね。」
「わたし、壊すのに夢中になっちゃって、たくさん殺しちゃったみたい。」
「わたしの足下にウヨウヨいた兵隊さん達を、“えいっ”って踏みつけたら何十人も踏み殺しちゃった。」
「ちょっと可哀想だったかも・・。」と少し顔をしかめる彼女。
「いいのよ!あんな奴ら何百人踏み殺したって。」とわたし。
「わたし達は正義の味方なんだから、ナチの奴らなんていくら殺してもいいのよ!」
「でも、住宅地を襲ったりして一般の人達を踏み殺しちゃダメだよ。」
「街中で暴れれば多少の犠牲は仕方ないけど、基本わたし達の使命はナチを全滅させる事なんだから。」と力説するわたし。
「へえ、そうなんですか。」
「でもナチの奴らってどんな人達なんですか?」とよく解っていない彼女。
「その事は今度詳しく教えてあげるわね。」とわたし。
そんな事を話していたら突然いつものグリーンの閃光が走り扉が出現した。
「里奈ちゃん!戻るわよ!」
そういうとわたしは彼女の手をとって扉を開けて中に入った。
そして、2つ目の扉を開けて元の倉庫に戻ってきたわたし達。
「今までの事って夢だったんですか?」と不思議そうな表情の里奈子だった。
「夢じゃないのよ、里奈ちゃん。」
「とりあえず着替えてお茶でもしましょ!」とわたし。
わたし達はロッカールームに戻り、基地を破壊したゴム長靴を置いてブーツに履き替えた。
里奈子も今日は黒いロングブーツを履いて来ていた。
そして、わたし達は会社を出て近所のマックでお茶することにした。
「わたし、まだあの踏みつけた時の感触が鮮明に残ってるんですけど。」と興奮気味に話し出す里奈子。
「わたし達って、さっき何人位の小人を殺しちゃったんですか?」
とちょっと心配そうな表情の彼女。
「守備隊の奴らが500人位、飛行機はどれも無人だったから基地の破壊であと数百人は殺してるかも・・。」
「でも心配しないで、わたし達って、正義の巨大ヒロインなんだから。」と笑いながら応えるわたしだった。
すると里奈子は、
「でも、まさか仕事で使ってるゴム長で人をたくさん殺すなんて・・。」
「わたしのゴム長って、洗ってないからけっこう汚れてて靴の裏が真っ黒なんですよォ。」
「あんなので踏まれたら嫌ですよねェ?」と続けた。
「わたしのゴム長の方が里奈ちゃんのよりもっと汚れてるんだよォ。」
「だから、わたし、思いっきり汚れたゴム長で踏みにじってやったの。」
「いい気味って感じだわ。」とわたし。
「わたしもなんですゥ、中途半端に踏みつけるのって悪いから、
思いっきり踏みにじるゾッ!・・みたいな感じでした。」とにっこりしながら応える彼女。
「里奈ちゃん、またあの世界に行って暴れてみたくない?」とわたし。
「また、連れてってくれるんですか?嬉しい!」と喜ぶ彼女。
❝よかった、これで完全に彼女もジーパンレディーの仲間入りだ。❞と内心ホッとするわたしだった。
「ところで里奈ちゃん、今度はゴム長じゃなくてブーツで行きましょ。」と切り出すわたし。
「今日のわたし達って、ジーパンにブーツインでしょ?」
「このスタイルで暴れるのがわたし流なの。」
「今日は里奈ちゃんを連れて行きたかったからゴム長だったけど、本当はロングブーツインスタイルが基本なんだよ。」
「でもわたし、一度ゴム長靴も試してみたかったから今日は楽しかったわ。」
「わたし、あの世界ではジーパンレディーロングブーツの律子って名乗ってるの。」と詳しく説明する。
「いいですよ、わたし律子さんの言う通りにします。」と素直な彼女。
「ロングブーツはひとつしか持ってないんですけど、今履いてるのが気に入ってて最近よく履くんです。これでいいですか?」と里奈子。
「いいわよ、ジーパンもブーツも完璧ね、あとは手袋だけど、わたしは皮製のロング手袋をいつもはめてるの、里奈ちゃんはどうする?」とわたし。
「通販でちょっと探して見ます。コスプレみたいな長い手袋ですよね?」とちゃんとわかってる彼女だった。
「やっぱり白い手袋だとカッコいいですよねェ。」とちょっとウットリした感じの彼女。
❝里奈ちゃんって意外とコスプレ好きみたい。❞と感じるわたし。
「ジーパンにブーツイン、それにロングタイプの手袋をはめれば完璧よ。」
「あとはトップスはお任せ。少し汚れてもいいようなものでいいから。」と念を押すわたし。
「次はいつ連れてってくれるんですか?」と期待感でいっぱいの彼女。
「実はあのトリップには周期があって10日に一度だけなの。」
「だから、次回は10日後って事になるわね。」とわたし。
「それでェ、相談なんだけど、わたし麻美も誘いたいんだ。」と本題に入る。
「えっ!まだ、麻美さんに言ってないんですか?」とちょっと意外そうな彼女。
「いきなり、小人の世界なんて言ってあの子信じると思う?」とわたし。
「そうですよねェ、普通はおかしいと思いますよね。」と納得する里奈子。
「じゃあ、わたし達二人で麻美さんも連れてっちゃいましょう!」と状況をよく把握している彼女。
「里奈ちゃんがそう言ってくれると心強いわ。」とホッとした表情のわたし。
「里奈ちゃんは、この次はどんな所で暴れたいの?」と優しく尋ねる。
「今度は街中で暴れてみたいです。」
「あの、ビルにまたがって押し潰した感触が忘れられないんです。」
「わたしのジーパンで押し潰しちゃうゾッ!・・みたいな。」
「わたし、もっとたくさんまたがって壊したいなァ。」とちょっと舌を出して可愛らしく微笑む彼女だった。
そんな話をする内に里奈子はすっかりジーパンレディーとして自覚し始めていたのかもしれない。