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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第215話・巨大オンナ"リリア”の終焉


 “グシュッ!”

逃げ遅れた最後の中継車を踏み潰すと、巨大オンナはいったんしゃがみ込んでしまった。

ここ1時間程で彼女の犠牲になったメディア関係者は数十人に上っていた。

だから遠巻きにして中継を続ける各メディアだったが、もはや彼女には暴れ回る力さえ残っていないように見えた。


「巨大オンナの顔が・・・!」(女性レポーター)


絶叫に近い現場レポーターの声に誰もがアップで映し出されているリリアの顔に注目したはずだった。

左目の眼球が飛び出す様に溶け落ち始めて、頬の肌もネズミ色に変色して肌そのものが垂れさがり始めていた。


「わ、わ、わたし・・」(リリア)


かすかにそう聞こえたが、それが彼女の最後の言葉になった。

自らの顔面に何が起こっているのかを確かめようと右手で顎の辺りを触ろうとした瞬間だった。

どす黒く汚れた彼女の革製ロング手袋が勢い余って頬から顎に掛けての顔半分を握り砕いてしまったのだ。

干乾びた骨と皮のような状態だったから、ちょっと触っただけで崩れ落ちてしまったのかもしれない。

もう声を発する事もできず、美しかったリリアの顔も上半分だけになり、その残った右目とおでこの部分も“ガコッ!”と手前に傾くとやがて地面に向かって真っ逆さまに落下した。


“グシャッ!”


地面に落っこちた彼女の上半分の顔は粉々に砕け散り、どす黒い血と赤茶色の脳みそが辺り一面に飛び散った。

頭部を失った巨大オンナの体はそのままゆっくりと倒れていった。


“ヴォッヴァーン!!”

“モクモクモクモク!”


巨体が倒れるのと同時に凄まじい粉塵が巻き起こり辺り一面が灰色の煙で覆われた。

仰向けの状態で倒れた彼女の巨体はお尻の辺りでマーケットの中心部を押し潰し、上半身は幹線道路とその向こう側の低層階のビル群を巻き込んでメチャメチャにしてしまっていた。

もはやこの大破壊は彼女の意思ではなく、単なる不可抗力の産物でしかなかった。

身長が400m以上もあった巨大オンナの体は汚れたシャツやジーパン、ロング手袋やロングブーツを履いたままま、内部から完全に崩壊し溶け落ちて崩れ去ってしまった。

巨大な彼女の骨も自然崩壊がすでに始まっていて、ガリガリと耳障りな騒音と共に服の中で崩れているようだった。


「ご覧下さい、これが巨大オンナの最期です!」(現場レポーター)

「何やら凄まじい破壊音が聞こえています。」

「巨大な体を包み込んでいる服やジーンズの中でボロボロと崩れ落ちる音がしています。」


実況を続ける女性レポーターはリリアの巨体のすぐそばに陣取り、そして中継を続ける各報道陣も彼女の体を囲むようにカメラを向けていた。

もう立ち上がって暴れ回る事もないから、安心して陸上と上空と両方から好きなだけ撮る事ができる。

巨大オンナの自滅シーンなどこの機を逃したらもう絶対に撮れないから各社色々な角度からアップでなめ回すように撮っている。

上海の街だけでなく、新宿や広島や横浜で大暴れした彼女。

そんな罪深いオンナの最期は実に惨めで無残なものとなった。

同じようにドイツの町々を襲って暴れ回ったわたしにとってはとても複雑な心境だった。


“わたしだって、リリアと同じ事を繰り返してきたのに・・。”


わたしも同罪なのに、わたしはこんな風に惨たらしい姿になる事もなく普通の生活をしているのだから、リリアの事をあざ笑う気には全くなれなかった。

上空で旋回するメディア系のヘリコプターがリリアの崩れ落ちた巨体を映し出している。

ちょうど上半身はシャツとロング手袋が覆い隠し、下半身はジーパンとロングブーツが覆っていた。

というかすでに彼女の肉体そのものが崩れ落ちてしまっていて、服と手袋とブーツだけが着用したままの状態で残っていた。

彼女が散々吐き散らかした嘔吐物や痰ツバは地面で巨大なシミ状になっていて、溶け出した彼女の肉体はあっと言う間に乾いて砂埃のようになってサラサラと風に乗って大空に舞い上がっていた。

上空は薄茶色の埃で覆われ上空で旋回するヘリも一時退避せざる負えなくなった。


「もの凄い風と粉塵です。」(レポーター)

「わたしも一時退避します!」


現場のレポーターも口を開けていられなくなりそのまま中継車の中に撤退してしまった。

現場の状況は四方のビル群に据え付けられた各社のカメラによって中継は続行されていた。

それにしても、あれだけ巨大な体である。

その肉体が崩壊したとは言え、凄まじい量の遺灰が舞い上がっている事になる。

あの遺灰を吸い込んだ現場の人達は大丈夫なんだろうか、と一瞬心配になった。

でも着衣の中や隙間から次々と噴き出し舞い上がるリリアの遺灰は留まる事なく上海全体を覆い尽くし、やがて中国全土を覆い尽くすのではないかと思うほどの量が飛散していた。

その時だった、緩やかなグリーンの閃光が走った。

見覚えのあるあの美しい光である。

何となく理解したわたし。

うっすらと巨大な扉が上海上空に出現し、ゆっくりと扉が開いた。

中は真っ暗で誰もいない。

でも上空に舞い上がったリリアの遺灰は扉の中へと吸い込まれていく。

凄い量の茶色い粉塵は巨大な扉の中へと消えていくのだった。


「ああ、彼女やっと自分の居場所に戻っていくんだわ。」(わたし)

「彼女の居る所はここじゃなくてあっちの世界なのよ。」

「あっちの世界に戻って安らかに眠って欲しいわ。」


わたしは心底リリアの冥福を祈らずにはいられなかった。


暫く体調不良でお休み致しました。

次回の更新は4月7日(0:00)になります。


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