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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第208話・何かがおかしい!

 橋を目指して荷物を持って延々と歩いて来た避難民達の周囲が突然薄暗くなった。

凄まじい轟音が響き渡る中で、誰もが必死になっていて全く余裕が無い状態だから、自分達の遥か前方で巨大なジーパンオンナが橋を踏み砕いて暴れ回っている様子など目に入らなかったのかもしれない。

自分達の足元が異様に薄暗くなって初めて異変に気付く人々。

だが彼らが見上げた時にはすでに遅かった。

巨大な靴底のギザギザ模様がゆっくりと自分達に向かって迫ってくる。

黒い輪郭の部分には細い横線のストライプ模様が刻まれ、真ん中のたまご型のグレー色の部分には互い違いのギザギザした模様が彫り込まれ、蹄鉄型のヒールの部分には波打った細かい溝が刻まれていた。

そんな巨大な靴底面は全体的に泥や埃や粉塵にまみれていて、どす黒い色をした無数の肉片や瓦礫片がこびり付いていた。

そして遥か上空から低く野太い女性の声が響いてきた。


「ちょっと、ごめんなさ~い!」(巨大オンナ)


テレビの画面からは少しハスキーな彼女の声が聞こえてくるが、現場のしかも彼女の足元の人々には彼女の声はかなり低い地鳴りのような音に変貌しいていた。

その声が彼らの恐怖心をことさら煽っていた。

今から巨大オンナに踏み殺される人々は何を考えていた事だろう。

それでも靴底の部分とヒールの部分の間の土踏まずの部分に当たりそうな人々は少しだけホッとしていたのかもしれない。

それほど巨大なジーパンオンナのブーツだった。


“ズッシーン!!”


土踏まずの部分に居た人々の前後が一瞬で真っ暗になり、凄まじい爆風で粉塵が舞い上がり息もできない状態だった。

彼らが“助かった!”と思った次の瞬間には先ほど着地したどす黒い巨大な壁がズルズルと動き出してすぐに加速し、声を上げる間もなく消滅させられてしまったのだ。


「あらっ、ごめんね!」(リリア)

「助かったと思った?」

「わたし、そんなに甘くありませんから。」


群衆を踏み付けた足をそのまま滑らせて一帯の人々を摺り潰した彼女。

罪悪感など微塵も無く、右脚を少し持ち上げて靴の裏を見つめている。


「結構汚れちゃったけど、」(リリア)

「仕方無いわね。」


靴底をチラリと見た彼女はすぐに次の群衆集目掛けてブーツ足を踏み下ろした。


“ズッシーン!!”


巨大なジーパンオンナのロングブーツのソール部分は全長が70m以上で横幅が30m弱あったから、彼女のひと踏みで3000人以上の人々が潰された事になる。

無数の人々の命を奪いながら得意の絶頂だった彼女。

もはや誰もこの超巨大なジーパンにロングブーツのオンナを止める事は出来なかった。


「あらっ?」(巨大オンナ)

「何よこれ?」


突然怪訝な表情になった彼女。

今自分で踏み付けた辺り一帯を注視している。


「どうしたって言うのよ?」(わたし)


突然巨大な殺戮マシーンの動きが止まり、彼女のブーツ脚の周囲にいて生き残った人々は我先にこの汚れたブーツから逃げようと移動を始めていた。

そんな事など全く気にする事もなく少ししゃがみ込んで何かを拾い上げる彼女。


「これって、わたしの髪の毛かしら?」(リリア)

「えっ、何で?」


どうやら自分の足元に自慢のブロンドヘア―が落ちている事に気付いたようだった。


「髪の毛がどうしたのかしら?」(わたし)

「抜け毛なの?」


リリアが嵌めているアイボリーホワイトのレザーのロング手袋の手の平の上がアップになった。

上空のヘリコプターが撮影に成功したのだ。

自分の蛮行をわたしに見せたい彼女は決して報道のヘリや中継車を襲ったりはしない。

それを知ってかメディア関係者はかなり大胆にリリアの周囲で中継を行っている。

ところが・・。

彼女の手の平を映していた画面が真っ黒な画面に一瞬で変わりすぐに“お待ちください”というテロップと共に風景画に変わった。


「何が起こったんだろう?」(わたし)

「中継ヘリが落とされた?」

「彼女の手で?」

「そんな事、するかしら?」


すると画面は風景画からマイクを持つ現地の女性レポーターに切り替わった。


「たった今、中継ヘリが墜落した模様です。」(レポーター)

「あの巨大オンナの右手がヘリを叩き落した模様です。」

「こちらが地上から撮った先ほどの映像です。」


画面が先ほどの録画映像に切り替わった。

すっかり固まって右手の平を見つめていた彼女は頭上でホバリングしていた中継ヘリを右手で振り払うように叩き落したのだ。

彼女のロング手袋によって叩き落されたヘリは粉々になって空中で消滅した。


「こちらが、中継が途切れる直前の映像です。」(レポーター)

「いったい彼女に何が起こったのでしょうか?」


確かに彼女の手袋の手の平にはブロンドの髪の毛が握られていた。

しかも一本ではなく、何本もである。


「髪の毛が抜けちゃったのかしら?」(わたし)

「えっ?」

「いきなり抜け毛なの?」


それはまるで癌患者が抗がん剤の副作用によって髪の毛が抜けてショックを受けている様子に似ていた。


「あの子、何かに気付いたのかしら?」(わたし)

「でも、中継をさせないようにしたのはなぜ?」

「それとも、たまたま手がヘリに当たったのかしら?」


でも先ほどの映像からはわざとヘリを叩き落したように見えた。


“何かがおかしい!”


とわたしも、そして本人も実感した瞬間だった。


次回の更新は1月28日(0:00)になります。


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