第190話・リリアの本音
「リリアはいつからそんな事を企んでいたの?」(わたし)
「元々、鏡の事を調べている内にそのメカニズムが解ってきたみたいで、」(由美)
「律子さん達が過去に大暴れした事を利用できないかって、」
「随分前から考えていたみたいです。」
「あなたと会うずっと前ってこと?」(わたし)
「そうみたいです。」(由美)
「律子さん達は巨大オンナ兵士の候補だったって、」
「言ってました。」
「えェ~!!」(わたし)
「わたし達がァ?」
「ごめんなさい。」(由美)
「収容所で会った時は利用できそうなオンナ達だったって、」
「暴れるだけしか能がない、」
「頭の悪いオンナ達だって、」
「でも律子さんの事は一目置いていたみたいです。」
“頭の悪いオンナ達って・・。”
“正美達の事だわ。”
「上手く洗脳すれば、利用価値は十分ありそうだって、」(由美)
「でも、律子さんの事をもっと調べなきゃって言ってました。」
「でも、新宿にやって来た彼女、」(わたし)
「わたしの事、目の敵にしてたけど・・。」
「それは、暴れる為の大義なんです。」(由美)
「最初にトリップした時は、とにかく暴れてみたいって、」
「ルンルン気分でしたから。」
「律子さん達への復讐を口実にすれば、」
「暴れたい放題だって、」
「でも、中々姉鏡が手に入らないから、」
「今は、律子さんの事を本当に目の敵にしています。」
「何なのよ!」(わたし)
「あの子ったらァ!」
「わたしに散々悪態ついておいて、」
「それって、単なる暴れる為の口実だったっていうの?」
「ホント、マジでムカつくわ!」
「でも、あの子の思い通りにはならないって事よね。」
「それに、わたし達にはナチスを根絶やしにするっていう大義があったから。」
「あちらの世界の西側諸国で暴れようとは考えもしなかったわ。」
「それに、鏡のメカニズムって?」
“よし、ここで何か新しい情報が手に入れば・・。”
「ベルリンに歴史的な古文書の収蔵館があります。」(由美)
「そこは、ナチス党の聖地のひとつになっていて、」
「その建物の中に、巨大化伝説の研究所があるんです。」
「元々、ナチスは古代の伝説や予言書、占星術なんかを専門に研究してきたんです。」
「そんな中に巨大神の伝説があって、」
「実際に巨大化した女性が帝都を破壊する事象が発生したので、」
「彼らも真剣に調査するようになったんです。」
「でもまだまだ未解明な部分があるらしくて、」
「研究内容はわたし達レディースにも極秘になっているんです。」
“なんだ、そうだったんだ。”
「でも、姉鏡と妹鏡を結合させると強大な力を得るって、」(由美)
「リリアさんが目を輝かせてわたしにだけ話してくれたんです。」
「でも、今でも彼女、絶大な力を持っているみたいだけど・・。」(わたし)
「そこなんですよ。」(由美)
「リリアさんも、早く姉鏡を手に入れないと、」
「大変な事が起こるだろうって、」
「心配していましたから。」
“やっぱり、あの子も気づていたんだわ。”
「その大変な事って何なのよ?」(わたし)
「そこまではまだ未解明みたいですし、」(由美)
「どうやら、期限があるみたいな事を言ってましたけど、」
「その期限がいつなのかも解っていないみたいです。」
「だから余計にイライラして・・、」
「やり場の無い怒りをこちらの世界で発散してるみたいなんです。」
“そうだったんだ。”
“なんて迷惑なオンナなんだ。あの子って。”
“でもリリアも焦りまくっているって事なんだわ。”
「それはそうと、あなたの計画って?」(わたし)
「時間が無いので、手短に話しますね。」(由美)
「実はわたし達、総統包囲網を敷いているんです」
「えっ?」(わたし)
「そんなに大きな勢力なの?あなた達って。」
「でも単なるレジスタンスなんでしょ。」
「元々は市民レベルの抵抗組織だったんですわたし達。」(由美)
「リーダーは政治家の女性でわたしもまだ会ったことがありません。」
「名前も顔も極秘になっていて、殆ど誰も知らないみたいなんです。」
「でも彼女は軍の中枢にもパイプがあって、」
「特に職業軍人のような歴史と伝統を重んじるタイプの、」
「例えば、国防軍の将官クラスの人達とか、」
「そういう人達と通じていて、」
「彼らがとても協力的なんだそうです。」
「彼らは独裁政治にはウンザリしていて、」
「早くシュタイナー政権を潰したいって思っている人が大勢いるんですよ。」
「でもその人達が政権を取ったらますます軍事国家まっしぐらって事に、」(わたし)
「なるんじゃないの?」
「それはわたしにも確信は持てませんけど、」(由美)
「少なくとも、今の情勢では国同士が戦争をするメリットが無いんですよ。」
「だから多くの軍関係者は西側諸国との交易をもっと活発にしたいみたいなんです。」
「そこにどんなメリットがあるのかしら?」(わたし)
「実は西側諸国では頻繁にテロを起こっていて、」(由美)
「アメリカを中心に対テロ対策が軍の重要な任務になっているんです。」
“今のわたし達の世界と同じなんだ。”
“結局誰が何をやっても同じってことなのね。”
「それって、今のわたし達の世界と同じだわ。」(わたし)
「えっ、そうなんですか?」(由美)
「なんか不思議な感じがします。」
いよいよ由美達の計画とやらをじっくり聞いてやろうと興味津々のわたしだった。
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