第189話・リリアとの出会い
「あなたいったい、どのくらい殺したのよ?」(わたし)
「しかも、あなたって向こうの世界では普通の女子高生なんでしょ?」
「何人くらいなんだろう?」(由美)
「ごめんなさい!」
「わたし、考えた事もありません。」
「わたしは、リリアさんにすぐに気に入られて、」
「反政府分子をあぶり出す作戦に参加するように頼まれたんです。」
「それで、SS武装親衛隊第1師団で軍事訓練を半年間受けました。」
「元々どうやってリリアと知り合ったの?」(わたし)
「わたし、さっきも話したように律子さんの事を色々と調べていたんです。」(由美)
「それを、自分のブログで発信していました。」
「まあ、わたしは興味本位の素人ですから、」
「自分の思った事や推測や仮設なんかを、」
「書きまくっていたんですけど・・。」
「当時はわたしのブログを読んでくれる読者なんて誰もいなかったのに・・、」
「ある日、リリアさんがダイレクトメッセージを送ってくれたんです。」
「会わないか?って。」
「わたしは、わたしの生きがいだった巨大化の事を、」
「理解してくれる人が現れて本当に嬉しかったんです。」
「それに、彼女のお父様はその研究者だったって聞いて、」
「わたしはますます彼女に惹かれていったんです。」
「リリアは最初から、あんな性格だったの?」(わたし)
「そんな事はありません。」(由美)
「お父様が律子さんの事を研究していた時、」
「彼女はとても優しい女の子だったんですよ。」
「よくお父様の研究室に遊びにいってたそうです。」
「元々エルンストは親衛隊の研究所でお父様と一緒に巨大化の事象を研究していたんです。」
「彼が2000年に父親の後を継いで新総統に就任すると、」
「ますます、巨大化の研究にのめり込んでいったみたいなんですよ。」
「でもお父様が5年前に10歳の頃に負った傷が元で亡くなられて、」
“リリアの言っていた事は本当だったんだわ。”(わたし)
“どうしよう、本当に悪い事をしちゃったんだわ、わたし達。”
「エルンストがリリアの後見人になっていたらしくて、」(由美)
「懇意な仲っていうよりは父親代わりってことなのね?」(わたし)
「そうみたいなんです。」(由美)
「彼女に徹底的な英才教育を受けさせていたっていう話です。」
「軍事訓練なんかも早くから受けさせていたって聞きました。」
「巨大化のパワーを手に入れようとしていたのかしら?」(わたし)
「わたしもたぶんそうだと思います。」(由美)
「でも、エルンストにも敵が多いみたいで、」
「ある収容所の所長とその取り巻き立ちが、」
「クーデターを計画しているっていう内通情報があって、」
「あの時結成されたばかりの親衛隊のエリート女子特殊部隊の指揮官がリリアさんで、」
「でも、敵にも内通者がいて、」
「レディース達を連れて乗り込んでいったリリアさん達、」
「収容所の警備隊に一時拘束されてしまって、」
“そうだったんだわ、わたし達、何も知らないで、”(わたし)
“彼女達を結果的に救い出したって事なんだわ。”
「それで偶然に律子さん達と出会う事になって、」(由美)
「彼女は本当に興奮していました。」
「あなたもあの収容所にいたの?」(わたし)
「いいえ、わたしは居ませんでしたが、」(由美)
「あの収容所での事件の後、すぐに彼女に会いました。」
「彼女、もの凄く興奮していて、」
「わたしに言ったんです。」
「“あのジーパンレディー律子” に会えたんだって。」
「あらっ、わたしそんなに有名人だったんだ。」(わたし)
「しかも姉鏡の呪文も手に入れたって、」(由美)
「わたしも興奮したのを覚えています。」
「でも、まさかあの鏡を本当に使うなんて、」
「とても信じられませんでした。」
「“わたし、ちょっと仕返ししに、ひと暴れしてくるね。”って。」
「言ってました。」
「わたし達の新宿がメチャメチャにされたのよ。」(わたし)
「巨大化したリリアによってね。」
「わたしはそれを間近で見ていたの。」
「わたしも踏み殺されるかと思ったわ。」
「えっ、そうだったんですか?」(由美)
思わず口を手で押さえて驚きを隠せない由美。
「でも巨大化したオンナが暴れるとどうなるかって事が、」(わたし)
「よく分かったわ。」
「わたしも、同じ事を何度も繰り返してきたんだって・・。」
「ごめんなさい・・。」(由美)
「辛い事を思い出させちゃって・・。」
「いいのよ。」(わたし)
「わたしだって、あなたと同じ。」
「殺してきた大勢の人達の事、」
「一生涯背負っていかなければって、」
「思ってるわ。」
「あの頃からです、リリアさんが変わり始めたのは。」(由美)
「やっぱり、巨大化を経験したからなんでしょうか・・。」
「たぶん、そうだと思うわ。」(わたし)
「あれ程巨大な力を持ってしまうと、」
「自分が神様にでもなった気分になっちゃうんだから。」
「あなたもそれを感じたでしょ?」
「はい、わたしも巨大化してみて初めて分かりました。」(由美)
「何でもできるんだって。」
「リリアさんは本当は優しい女性なんです。」
「でもすっかりあの魔力に憑りつかれてしまっていて・・。」
「この世界にやって来た後なんです。」
「彼女が特殊部隊のレディース達を連れて暴れ始めたのは。」
「襲撃事件を起こし始めたって事なのね。」(わたし)
「そうなんです。」(由美)
「あらかじめゲシュタポ本部が調べ上げたレジスタンスのアジトや、」
「反政府の人達の住まいの情報が伝達されてくるんです。」
「武器は第1師団から無尽蔵に提供されていましたから、」
「わたし達、好き勝手に暴れ回っていたんです。」
「わたしも訓練で武器の取り扱いには慣れていましたから、」
「レジスタンスのメンバーと銃撃戦になって、」
「何人も撃ち殺したり・・。」
「随分酷い事をしてきました。」
「自分のしている事に疑問を持たなかったの?」(わたし)
「わたしはそれだけリリアさんに心酔していましたから。」(由美)
「でも彼女が鏡の力を使ってこちらの世界を乗っ取って、」
「わたし達の世界にこちらの世界の女性を巨大女の兵士として送り込もうって、」
「そんな計画を知ってしまって、」
「わたし本当に怖くなりました・・。」
なんと!
とんでもない計画が進行中だったのだ。
わたし達の世界で巨大女の兵士を養成して、あっちの世界に送り込んで自分達の世界をも征服しようだなんて・・。
わたしは呆れ果てて言葉を失ってしまった。
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