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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第179話・これってぇ、わたしの武器?

 横浜の老舗ホテルを粉砕した由美。

「お次はっと・・。」(由美)

「あらっ、これってェ・・。」

「ちょうどいい、手ごろな大きさかも・・。」


彼女が目を付けたのは横浜港のシンボル、マリンタワーだった。

高さ約100mのこのタワー、由美の腰より少し高いくらいの高さだった。


「ちょっと、ごめんなさ~い!」

「エ~イッっと!」

“ジュヴォ~!!”


黒ずんだアイボリーのロング手袋を嵌めた由美の両手が、タワーをガッチリと掴んで無理矢理引っ張り上げようとした。

「邪魔なのよォ!」

「それっ!」

“ガッチャ~ン!”

“ヴァコッ!”

“グシャッ、グシャッ!”

タワーの根本を覆うように併設してあったガラス張りのショッピングモールが邪魔だったのか、右足で乱暴に蹴り付けソールで何度も踏み付けた。

更に残った部分にもブーツのつま先を突き刺すように執拗に蹴りを浴びせて粉々に踏み砕いていく彼女。

「ほんと、ウザいんだからぁ!」

「えいっ!」

“ジュヴォッ!ジュヴォッ!”

“ジュリジュリジュリッ!”

巨大な由美の蹴りと踏みで完全にタワーの周囲は更地同然になっていた。


「これで、引っこ抜きやすくなったかも・・。」

「それそれ~!」

「ファイト、ファイト~!」

「エ~イ!!」

“ジュヴォ~ン!”


先ほど地面から少し浮き上がったように見えたタワー本体が今度は完全に地表から引き剥がされて由美の両手の中でしっかりと握り締められている。


「やり~!」

「やったね~!」

「いいもの、手に入れたわぁ!」

「これってぇ、わたしの武器かも?」


ちょうど野球選手がバットを肩に担ぐように、由美も巨大なマリンタワーを右手で握り締めながら右肩の上に乗せて周囲一帯を見渡している。


「このわたしの武器でェ、一撃を加えてほしいのはぁ・・。」

「どの建物かしら?」

「どうしよっかなぁ。」

「その前にィ、ちょっと歩きたいかも。」

「わたし!」


“ズシーン!”

“ズシーン!”

“ズシーン!”


タワーを担いだまま歩き出す由美。

道路を踏みつけるとクレーターのような巨大な靴跡を残して山下公園に踏み入る。

ただでさえ巨大な体の由美の重量にタワーの重量も加わって歩くたびに彼女のブーツが沈み込んでいく。

「あらっ、ごめんなさい!」

「せっかくの綺麗な公園がぁ、」

「わたしのブーツの跡で台無しになっちゃってるわぁ。」

「ほんと、ごめんねェ!」

黄色い声を裏返しながら“ごめん”を繰り返す彼女。

声が裏返るとハスキーなかすれ声になって艶めかしい。

ジュヴォジュヴォと公園の中を踏み荒らしながらどす黒いブーツ痕を残していく。


「あららっ、これって、氷川丸?」

「古い船よねぇ、」

「わたしが沈めてあげようかぁ?」

「それっ!」

“ヴイ~ン!”

“バシャ~ン!”


浅い水深の水辺に左足を浸けて軸足にしながら右足を振り上げる由美。

彼女の白いブーツのつま先が、唸りをあげながら氷川丸の煙突を蹴り潰した。


「やだ、ごめ~ん!」

「当たっちゃったわぁ!」

「本気じゃなかったのにィ。」

「ごめんなさいねぇ~!」

「でも、せっかくだからぁ。」

「この~!」

“ガシュッ!”

“グシュッ!”

“グチュッ!”


煙突を蹴り飛ばしたその足で、白い船体のキャビンにカカトを打ち付ける彼女。

力任せに右足に反動を付けてヒール打ちを繰り返す由美。

白く美しかった船体の構造物がみるみる内にへしゃげて変形していく。

そして後甲板上のマストをへし折りながら由美の巨大なロングブーツが船体後部を踏み付けている。


「もうこの船、わたしがぁ、」

「処分させて頂きますねぇ。」

「エイッ!」

“ジャッヴォ~ン!!”


後甲板に乗せた右足の膝に力を加えると一気に白いロングブーツが甲板を踏み抜いて船体が手前側に傾いた。

大量の水しぶきと煙が立ち上り、係留されていたこの老船が汚れた由美のブーツによって踏み沈められていく。

「コノヤロ~!」

“ガシャーン!”


右肩に担いでいたタワーを船体のやや前方の船橋に叩き付けた由美。

細かい無数の破片が飛び散ってタワーの展望フロアがへしゃげてひん曲がった。

氷川丸は哀れにも船体が完全に手前側にひっくり返って無残な姿を晒している。


「横浜市民のみなさ~ん!」

「わたし、また調子に乗っちゃって、」

「やらかしちゃいました!」

「ホント、ごめんなさ~い!」


「マリンタワーも氷川丸もォ、」

「これじゃ、台無しかもォ。」

「あっ、ごめんごめん!」

「山下公園もだったぁ。」


「みんなみんな、わたしが、」

「壊しちゃいましたぁ!」

「わたしの事、許してくださ~い!」

「ゴメンナサ~イ!」

「えっへっへ!」


悪びれた様子もなく舌をペロリと出す由美。

美しかった横浜港も由美が面白半分に暴れたせいでメチャメチャに破壊されていく。


「こんなもんじゃ、済まないって、」

「解ってますぅ?」


いきなり真顔になった由美。

水辺からさっさと陸地に上がって来ると肩に乗せたタワーを振り回し始めた。

そして・・。


“ズシ~ン!”

“ズシ~ン!”

“ズシ~ン!”

“ズシ~ン!”


先ほど破壊したホテルニューグランドの隣のビル群の前に躍り出た。


「もっともっと、」

「暴れてやるんだからぁ!」

「覚悟しなさいよねぇ!」


不敵な笑みを浮かべながら街を見下ろす由美だった。


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