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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第176話・わたし達だって正義の味方なんですけど・・

 「いきなり、現れちゃってェ、」(由美)

「ごめんなさ~い!」

「わたし達、律子ってオンナを探してま~す。」

「だから、本人は分かってると思うけどォ、」

「早く出てきた方がいいかもよ。」

「でないとォ、大変な事になりま~す!」

「アッハッハッ!」

「もうそうなってるわねェ。」

「ゴメン、ゴメン!」


1人でしゃべりながら、黄色い騒音を撒き散らす能天気なこのオンナ。

いったいどういうつもりなんだろうと思った。

童顔で歳はまだ17歳くらいだろうか、モデルの宮本わかなに似ている顔立ちだ。

するとわたしの部屋をノックする音が聞こえた。

里美とエリカだった。


「律子さん、テレビを消して!」(里美)

「決して見ちゃだめよ。」

「そうですよ、律子さんは悪くないんですから。」(エリカ)


心配そうな表情でわたしの顔を覗き込む2人。

どうしたらいいのか分からないわたし。

いっその事名乗り出ようかって思っていた。


「彼女達の挑発に乗っちゃダメだからね。」(里美)

「何があってもよ。」


「でも、わたしが名乗り出ないと・・。」(わたし)

「横浜は火の海になります。」

「そんなのわたし、耐えられません。」

「またたくさんの罪もない人達が殺されるんですよ。」


ただ単に自分が楽になりたいだけなのかもしれない。

この鏡を渡してしまえば、本当に世界の終わりなのに・・。

それが分かっていても、リリア達と対峙したい気持ちに変わりはなかった。


“ジャッヴォ~ン!”


“ジャッヴォ~ン!”


“ジャッヴォ~ン!”


“ズッシ~ン!”

“ズッシ~ン!”

“ズッシ~ン!”


海面から陸地に上がってきた巨大レディース達。

海水でびちょびちょに濡れたロングブーツが臨港パークの芝生広場を踏みにじる。

薄汚れた巨大なソールが次々とどす黒い靴跡を刻み付けていく。

7人の巨大オンナ達が臨港パークに上陸すると、お互いの肩が触れ合うくらい窮屈な状態だった。


「ちょっと狭すぎるわァ。」(由美)

「わたし達、デカ過ぎなのかも。」

「ちょっと、ゴメンね!」


“ブッショ~ン!”

“パラパラパラパラッ!”


「アラッ、ごめんなさい!」(由美)

「わたし、踏んづけちゃったかも~。」


パーク内の駐車場の建物を明らかにわざと踏み付けた由美。

彼女の履いている白いロングブーツが駐車場の天井を踏み抜いて中の車両ごとメチャメチャに踏み潰していた。

由美は悪びれた様子もなくふざけた口調のままだ。


「律子ってオンナが出てこないと、こうなりま~す!」(由美)

「ワザとじゃありませんよ、わたし。」

「壊しちゃって、ホントごめんねェ!」


彼女達の目の前には高級ホテルに国際展示場、それに国際会議場の建物が並んでいた。


「なんかァ、思いっきりぶっ壊してやりたい気分かも。」(由美)

「でもわたし達って、正義の味方ですから。」

「暴れたりしちゃァ、ダメだぞォ、・・みたいな。」

「あっはっは!」

「マジでウケるわ。」


1人で手を叩きながら笑い転げる由美。

周りのオンナ達はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。

リリア1人だけが真剣な表情で押し黙ったままだった。


「あ~、もう我慢できないっつ~の!!」(由美)

「エ~~イ!!」


“ヴォッヴォ~ン!”


「やっちゃった~!」

「ゴメンねェ~!」


いきなり跳躍した由美、スラリと伸びた美脚が国際展示場の天井部分の中央付近を踏み抜いた。

辺り一面にもうもうと灰色の煙と粉塵が立ち上り、一瞬何も見えなくなった。

あの無神経な黄色い声だけが響いている。

すると続けて凄まじい轟音と地響きが鳴り渡りテレビの画面が真っ暗になった。


“ヴォッシャ~ン!”

“ヴォヴォ~ン!”

“パラパラパラパラッ!”


どうやらリリアとレディース達が一斉に跳躍して展示場に両足で飛び乗り、その瞬間に建物が木っ端微塵に砕け散ったようだった。


「あ、あ、あの巨大な展示場が・・。」(わたし)

「何てことするのよォ!」


美しかった横浜の港が一瞬にして地獄絵図と化していた。

暫くして画面が明るくなり、現場の光景が映し出された。

ホコリや粉塵で白っぽく汚れたジーパンにロングブーツ姿の巨大オンナ達が腰に手を当てながら笑っているのがわかった。

展示場の建物は跡形もなく消え去り、両サイドに建っているホテルだけがまだ辛うじて残っていた。

すると・・。


「エイッ!」(リリア)

“ヴォシャ~ン!”


「ソリャ~!」(由美)

“ヴォコ~ン!”


“パラパラパラパラッ!”


リリアが右側の扇形のホテルを、由美が左側のガラス張りのホテルを同時に蹴りつけた。

彼女達に蹴られたホテルの建物は上半分が蹴り砕かれて瓦礫が空中高く舞い上がり、2人のロングブーツがピーンと伸びきった状態で振り上げられている。

次の瞬間だった・・。


“ジュッヴォーン!”

“ヴォッヴォーン!”


蹴り上げた足をそのまま振り下ろして半壊した建物にブーツのヒールを打ち付けた。

カカト打ちだった。


「ヤッタネッ、わたし達!」(由美)

「ホント、快感よねェ!」

“グシャッ、グシャッ、グシャッ!”


メチャメチャになったビルをブーツで踏みしだきながら笑い続ける由美。


「これってえ、この間アンタ達がやったのと同じ事、」(由美)

「わたし達も、実演してみました。」

「アッハッハッハッ!」

「やっぱりスカッとするね。」


最初は何の事を言っているのか解らなかったわたし。

でも、思い出してきた。

わたし達がこの間トリップした時に、ナチスの部隊をジャンプして踏み砕いた事を・・。

あっちの世界では、わたし達がトリップして面白半分に暴れた事が歴史となって後世に伝えられているのだ。

それを皮肉ったかのように実演して見せつけてくれたのだ。

わたしと里美のために・・。

言葉を失ったわたしと里美だった。


次話の発表は6月11日(日)0:00です。

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