第175話・わたし達のいない間に・・
「そういえば、先生はわたしと最初に会った時に、」(わたし)
「鏡の詳細を話してくれたと思うんですけど。」
「その情報はどこからゲットしたんですか?」
「そうね、実はハーバード大学に古代バビロニア伝説を研究するチームがあるの。」(里美)
「ヘレンはそのチームの責任者なの。」
「でも、彼らが研究しているのはこの魔神鏡の事じゃなくて・・。」
「魔神鏡の伝説はアッカド語で書かれた古文書に書かれていて、」(ヘレン)
「でも、神話の域を出ないからわたしと友人だった里美とで研究していたのよ。」
「わたし達もいろんな古文書に書かれていた言葉を集めて分析していたの。」(里美)
「なんか、女神の伝説なんてロマンチックですもの。」
「わたしがあなたに話した事は殆どがわたしとヘレンで導き出した推論だったのよ。」(里美)
「恐らく、わたし達が断片的に発掘してきた事柄は、」
「それぞれの伝道書に書かれていた事なんだわ。」
「これで全部が繋がった。」
「そして、わたし達の推論の裏付けが取れたわ。」
「今まで、この伝説がいろんな書物に記載されていたのがなぜだか解らなかったの。」(ヘレン)
「でもここに来て伝道師によって引き継がれてきた事が解ったわ。」
「ヘレン先生はどうして、ここにそれがあるって分かったんですか?」(わたし)
「実は、わたしがメールで彼女に伝えたのよ。」(里美)
「でもまさか、こっちで会うなんて思わなかったわ。」
「わたしも居ても立っても居られなかったから・・。」(ヘレン)
「そういえば、わたし達もすぐに飛行機手配して来ちゃったのよね。」(里美)
「やっぱり気が合うわ、わたし達って。」(ヘレン)
「確かにここまで鏡の詳細が書かれていた書物は初めてだったわね。」(里美)
「問題はその期日ですよね。」(わたし)
「あの2ページの内容は全部記録したから、これから戻って解明しなくちゃ。」(里美)
「わたしも大学に戻ってこの言葉の意味を解読するわね。」(ヘレン)
「これがドイツ語やロシア語みたいにすぐに翻訳できれば簡単なんだけどなあ。」
「解明することも楽しみなんでしょ。」(里美)
「そうよね、じゃあ今日はホテルに戻るわ。」(ヘレン)
わたし達もカフェを出てホテルに戻る事にした。
ホテルに戻ったわたし達はレストランでディナーを食べてからそれぞれの部屋に戻った。
シャワーを浴びてスウェットに着替えてのんびりテレビでもとスイッチを入れた。
すると、驚くべき光景が映し出されていた。
それと同時に部屋の電話が鳴り響いた。
「ちょっと、テレビを付けて!」(里美)
「今、付けました。」(わたし)
「これって・・、」
「まさか・・。」
横浜のみなとみらい地区に巨大なリリアとジーパンレディース達が仁王立ちになっている姿が映し出されていた。
身長は大体160m位と字幕が出ていた。
いつものジーパンにダークブラウンのロングブーツを履いたリリアとレディース達が6人立っている。
全員がアジア系の女だった。
それぞれが使い古しの汚れたジーパンに黒や茶色のロングブーツを履いている。
手にはベージュ色の革製のロング手袋を嵌めていた。
そんなレディース達の中で純白のロングブーツを履いた女子がいた。
“このオンナ、日本人かも。”と思ったわたし。
するとこのオンナがしゃべりだしたのだ。
「は~あ~い!」
「わたしの名前は本宮由美って言いま~す。」
「最初に言っておきますけどォ。」
「わたしィ、日本人ってェ、」
「大っ嫌いなんですぅ。」
「だからァ、今、謝った方がいいかも。」
「これから暴れるの、わたし達。」
「ホント、ごめんなさい!」
能天気なオンナのふざけた口調が止まらない。
そんな巨大オンナの大暴れ宣言をニヤつきながら見ているリリア達。
すると今度はリリアが口を開いた。
「何度も言わせないで下さいよねェ。」
「わたし達、本当は暴れたくないんですぅ。」
「でもでも~、律子が出てこないからァ、」
「仕方なく、暴れるしかなさそうなの。」
「こんなに綺麗な街なのに、」
「ホント、ごめんなさい!」
「わたし達、今日は本気モードでェ、」
「いかせて頂きま~す!」
「いただきま~す!!」(レディース達)
“またわたしの名前を口にして、本当に頭にくる連中だわ。”
わたしは針のむしろに座らされているような気分だった。
リリアもレディース達も海の中に立っていた。
岸壁に近い位置だったから水深が15m位なのだろう。
彼女達のブーツの筒の部分が半分以上水面から伸びていた。
“ジャッボーン!”
“ジャッボーン!”
“ジャッボーン!”
彼女達がゆっくりと歩きだしたのだ。
水面は大きく揺れている。
それもそのはずだ。
巨大な14本ものロングブーツが岸壁に向かって動き出したから大変だ。
横浜港全体に大きな波がうねってタグボートのような小さな船はひっくり返っている。
「あらァ、ごめんなさい!」(由美)
「わたし達、ただ歩いてるだけなんですけどォ。」
笑いながら進撃を開始した巨大レディース達。
臨港パークが広がる岸辺に今まさに上陸しようとしていた。
「みなさ~ん!」(由美)
「早く避難した方がいいですよ~!」
「でないと、わたし達にィ、」
「踏みつぶされてもォ、」
「知りませんよォ。」
「うっふふ。」
このクセのあるオンナ、絶対にSオンナだと感じたわたし。
次話の発表は6月4日(日)0:00です。