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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
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第169話・同じことの繰り返しなのかも・・

 街破壊に興じる彼女達を見て、わたしは罪悪感すら感じるようになっていた。


“本当に彼女達をここに連れて来て良かったんだろうか?”


そういえば、先程ナチスの部隊を壊滅させた時もわたしは1人の兵士を踏み殺す事もなく、ずっと彼女達の蛮行を見つめるだけだった。

リリア達がわたし達の世界にやってきて散々大暴れしてからというもの、わたしは巨大化した体で暴れる事に少し違和感を感じ始めていた。

この間、里美とベルリンで暴れた時は幸代さんが殺された直後だったから、怒りに任せて大暴れできたのかもしれない。

でも今日は何だかアラフォー女子達の暴れっぷりを見ていると、わたし達がやっている事とリリア達がやった事は、結局は同じ事の繰り返しなんだって思えてきた。


「ねえ、みんな、この町は中心部のナチのビルだけを標的にしましょ!」


わたしは思わず彼女達に言ってしまった。


「律子さんの言う通りよ、わたし達、正義の味方でしょ!」

里美がみんなを諭すように言った。


“やっぱり、里美さんは分かってくれてるんだ。”

わたしは少しホッとした気持ちになった。


住宅街で暴れていた奈穂子と香代子もすぐに里美の指示に従い暴れるのを止めた。


「それじゃあ、とりあえずみんなで町の中心に行きましょう。」(サット)


“ズッシーン!”

“ズッシーン!”

“ズッシーン!”

“ズッシーン!”


巨大オンナ5人が目抜き通りを1列になって歩いていく。

わたしは彼女達の後に続いた。

もちろん先頭の里美は足元など気にしないで歩いているから、彼女のレインブーツは電線を引き千切り、車やバス、路面電車を踏み潰し、信号機や電柱をへし折りながら破壊の限りを尽くしていた。

それでも人の居るであろう住宅や一般人の居そうなビルを蹴らないだけでわたしは安心だった。

わたし達は無差別に殺戮を楽しんでいたリリア達とは違うんだって思いたかった。


「なんか、神様にでもなった気分よね。」(くーこ)

「わたし達!」

「ほんとよねえ。」(りっつん)

「わたし達がちょっと暴れるだけで、」

「こんな町、火の海なのにね・・。」


暴れたそうな彼女達の気持ちはよく理解できた。

かつてのわたしもそうだったし、実際に暴れ回って爽快な気分を随分満喫したから。

でも、わたしが暴れた後には傷ついた大勢の人達がいたんだって思うとやりきれない気分になってきた。


“ズッシーン!”

“ズッシーン!”

“ズッシーン!”


「そろそろ町の中心の広場だわ。」(サット)

「正面のクリーム色のビルにナチスの旗が掛けてあるわ。」

「わっかりやすゥ。」(かーこ)


林立するビル群の中で10階建ての横に広がったひと際大きなビルがナチスの本部ビルみたいだった。

その両脇のビルにも入り口にドイツ兵の警備小屋があって一目でナチス関係のビルだと解った。

そんな建物が他に4棟ほど建っていた。


「警備の奴らとかいないのかしら。」(なーこ)

「さっきわたし達が全部やっつけちゃったのかも。」(くーこ)

「なんだ、つまんないの。」(かーこ)


そういえば、この町にやってきてナチスの部隊がわたし達を出迎えて来ないのも少し不思議だった。

すると、


「何よ、これ!」(かーこ)

「何なのよ?」(なーこ)


わたし達の正面のビルから白旗を持った軍人と役人のような人物2名がわたし達の方に向かってやって来るのが見えた。


「降伏してるんだわ、きっと。」(わたし)


せっかくビル破壊をしようと身構えていた香代子と奈穂子はガッカリした表情でわたしの方を見る。


「わたしに任せて下さい!」


“ズッシーン!”

“ズッシーン!”

“ズッシーン!”


そう言うとわたしは里美の前に出て彼らの前でしゃがみ込んだ。


「わたしの手の上に載ってもらいます。」


わたしはそう言うと彼ら3人を優しく摘まみ上げてわたしの左手の平の上にちょこんと載せた。


「我々はあなた達に降伏します。」

「だから、これ以上暴れないで下さい。」

驚いたことに役人風情の男性が流ちょうな日本語で話し始めた。


「わたし達、少し暴れてしまって、本当にごめんなさい。」

「でも、もう暴れないから安心して下さい。」

わたしは優しい口調で応えた。


「先程、ベルリンから連絡があって演習中だった我々の部隊が全滅したことを知らされました。」

「そしてあなた達がこの町に向かっていることも知らされました。」

「もうこれ以上人命を奪わないで下さい。」

「お願いします。」

通訳官と思しき係官がわたしの手の平の上で懇願するのだった。

今までこんな場面があっただろうか、でもこれが平和への第一歩になるのかもしれない、とわたしは思いたかった。


「でもでも~、」(かーこ)

「わたし達の使命は、アンタ達ナチを根絶やしにすることなんだからね。」

「ただで済むと思ってんの?」

「そうよねェ。」(なーこ)

「ここまで来て何もしないで帰れ、なんてさ。」


暴れたい2人のアラフォーオンナは一歩も引かない構えだった。


「2人とも、待ちなさい!」

「わたし達もこれ以上罪のない人達を殺そうとは思いません。」


里美がようやく口を開いた。

久美子と律江が微かにうなずいた。

里美の言葉に黙るしかない奈穂子と香代子だった。


次話の発表は5月23日(日)0:00です。

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