第166話・挨拶代わりにひと暴れ!
ナチスの部隊に向かってゆっくりと歩いていくわたし達。
わたしが見たところ、戦車や装甲車などがおよそ1000両、その後ろにいるトラック部隊や砲兵隊が約700台位。
その大部隊と一緒に行軍している歩兵部隊は10万人位の規模だった。
今までわたしが闘ってきた相手の規模は大体分かるけれど、今回の相手はその何倍もいるんだと思った。
「今までわたしが闘ってきた奴らの中でも、一番大規模な軍団だわ。」
「たぶん5個師団ってところかしら。」(わたし)
「律子さんて、凄いのね。」
「ここから見て相手の数を把握できてるなんて・・。」(くーこ)
「ほんとほんと!」(なーこ)
「なんか、わたし達、やる気満々!、みたいな。」(かーこ)
「いくらいても同じよ!」
「わたし達の敵じゃないわ。」(サット)
しばらくすると彼らの全景が肉眼ではっきりと見えてきた。
わたし達の前面に横15m位、奥行き20m位のサイズで展開していた。
そこにウジャウジャと無数の戦車やら兵士やらがうごめいているのが見えた。
「さっ、みんな行くわよ!」(サット)
彼女の合図で5人のジーパンレディー達が一斉に走り出したのだ。
わたしは呆気に取られながら彼女達を見送る。
“ズンズンズンズンズン!”
“ズンズンズンズンズン!”
“ズンズンズンズンズン!”
巨大化したアラフォー女達の履いている巨大なロングブーツが、大地にどす黒い靴跡を残しながらナチスの大部隊に向かって疾走する。
凄まじい迫力だ。
もくもくと土煙が沸き立ち、10本のブーツが地面を踏みしめる度に引き起こされる強烈な地響きと地鳴りはナチスの奴らも嫌というほど感じていた事だろう。
「エ~~イ!!」(全員)
全員の黄色い掛け声とともに一斉に跳躍する巨大オンナ達。
一瞬空中に浮き上がったジーパン姿の5つの巨体がナチスの部隊に向かって吸い込まれていく。
“ズッヴォ~ン!”
凄まじい轟音と共に着地した彼女達の10足のレインブーツが、たった今そこに居た戦車や大勢の兵士達を容赦なく踏み砕きながら地面を深く陥没させた。
まるで走り幅跳びでもしたような巨大なアラフォー女達の美しいシルエットが、着地と共に巻き起こった凄まじい粉塵が晴れると、その姿をナチスどもの眼前にはっきりと現した。
彼女達のこの最初の一撃で数十両の戦車と数百人の兵士達が文字通り消滅したのだ。
「やったね~!!」(なーこ)
「わたし達、凛輪ファイブと申しま~す!!」
「イェ~イ!!」(全員)
身長160m以上の巨大なアラフォー女達が笑いながらピースサインを足元のナチスどもに向かって見せつけている。
凛輪ファイブの凛跳びによる一撃はナチス軍団の戦意を喪失させるのに十分過ぎたのかもしれない。
生き残った周囲の戦車や対空砲が散発的に彼女達のブーツの筒のあたり目掛けて砲撃を開始したが、彼女達はこそばゆささえも感じていない。
「コイツらわたし達に向かって撃ってきてるみたい。」(くーこ)
「もっと、思い知らせてやろうよ!」(なーこ)
「それじゃあ、もう一発やっちゃおうか?」(サット)
「せ~の!」
「それ~!!」(全員)
“ジュッヴォ~ン!”
“ジュッヴォ~ン!”
“ジュッヴォ~ン!”
5人のオンナ達は前方や後方に向かって飛び跳ね始めたのだ。
泥々に汚れたレインブーツの靴底が地面の部隊をもろに直撃する。
かーこは両足で着地するとグリグリと踏みにじり回している。
くーこは両足をぴったりと揃えて踏みつけた戦車をにじり砕いている。
「アラッ、この戦車何人乗ってるのかなあ?」(りっつん)
足元の戦車を1台掴み上げるとマジマジと見つめる律江。
「えい!」
“クシュッ!”
可愛らしい声と共に一気に握りつぶす。
「わたし今、殺しちゃったのかも!」
「これって、いけない事をした気分だけど・・」
「なんかとってもスリリング、みたいな!」(りっつん)
握り潰された戦車を紙くずのように投げ捨てると、次の獲物を求めてブーツのつま先が空中を浮遊する。
「ここかも!」
“ズヴォッ!”
律江が踏み付けたのは数十人の歩兵部隊の一団だった。
ゆっくりと足を上げて戦果を確認する彼女。
律江の靴底型の巨大な窪みに、潰された小人の死体が無数にへばり付いていた。
そして彼女の靴底の溝にも潰れた死体が張り付いている。
「うわぁ~!」
「なんか、キモいかも。」
「こうしてやるわ。」
“ズリッズリッ!”
汚れたブーツのソールを別の歩兵の一団に向かってなすり付けるように滑らせる彼女。
「うわぁ、また汚れちゃったじゃない!」
「キリがないわ!」
そう吐き捨てるように言うと、律江はブーツを左右交互に滑らせ始めた。
“ジュジュジュジュ~!”
“ジュジュジュジュ~!”
大勢の小人達が潰されながら地面をえぐり取る不気味な音が響き渡る。
「ホラッ、もっともっと潰してやるよ!」
「ホラ、ホラァ!」
初めてこの世界にやってきた律江は、ただひたすら生身の人間をいたぶり殺す事に執着しているのは明らかだった。
しかも、彼女はそれを心底楽しんでいた。
律江の後方では香代子がレインブーツのぶっといヒールで大砲やトラックをまとめて踏みしだいていた。
「わたし、りんりんファイブのかーこって言います!」
「よ~く、覚えておきなさいよねぇ!」
香代子のベージュ色のレインブーツは踏み付けられて燃えている車両の煙や粉塵ですすけて黒ずみ始めていた。
読者の皆様へ
当小説をご愛顧頂きまして誠に有り難うございます。
最愛の人を亡くし、永らく休止しておりましたが、少し気持ちが落ち着いてきましたので物語の完結に向けて再開することとなりました。
どうぞ、宜しくお願い致します。