第16話・わたしの白いゴム長靴
大都市での破壊を存分に楽しんだわたしは意気揚々と引き上げてきた。
それにしても帰る間際の空からの攻撃には手を焼いた。
戦闘機のパイロットを唾責めにしていたぶり殺したのはちょっと楽しかったけど、この先また空爆なんか受けたら落ち着いて街の破壊に集中できないというものだ。
「よ~し、次回は空軍基地に行ってメチャメチャにしてやろう。」
「わたしの力を嫌って言うほど思い知らせてやらなきゃ!」
そういえば、今回履いて行ったのは黒いロングブーツだった。
ヒールがシッカリしているからビルの破壊もイイ感じだった。
この3回の襲撃で、一応わたしが持っているブーツは3本とも全部出撃した事になる。
次回はどれを履いて行こうか悩むわたし。
そう悩んでいたらいろいろと試したくなってきた。
基本的にはわたしはジーパンレディーロングブーツの律子だから、ロングブーツは基本だけど次回は少し趣向を変えてみたくなった。
ナチの奴らを踏みにじるのに何かないかなあァ・・て考えていたら職場で使っている白いゴム長靴が思い浮かんだ。
このわたしのゴム長靴、とにかく汚れまくっている。
このゴム長靴はバイトを始めた時に支給されたもので食品倉庫の中でいつも履いている。
会社支給品だから洗うなんていう発想が全くないから何年も履きっぱなしである。
なので、つま先から甲の部分、筒の両サイドともどす黒い水アカのような汚れが付着していてとにかく汚い。
靴底には滑り止め用の模様を彫り込んだ溝があり、土踏まずの部分には耐油底と書いてある。
婦人ブーツのような細かい模様ではなく、中央が背骨のような形状をしていて両側に湾曲した溝がいくつも彫り込まれていた。
まるで動物の骨格のようなダイナミックな造型だ。
この靴底がまた汚れていて土踏まずの部分や溝の中にも真っ黒な水アカ汚れが溜まりに溜まっていて触りたくもないくらい汚い。
とても白い色とは思えないくらい黒ずんだ靴底だ。
何でこんなに汚れちゃったんだろうって思うけど、毎日履いていて洗浄しなければ汚れるのは当然かもしれない。
バイト仲間の他の女性が履いている白いゴム長靴も結構汚れているからわたしだけではないけど、思えばかなりの汚染具合だ。
ゴム長靴だからロングブーツよりは少し短めの筒で少し太め、全然おしゃれな感じはしないけど、このどす黒く汚れの溜まった白いゴム長靴でナチスの兵士や飛行機を踏み潰してやりたくなってきたわたし。
婦人ブーツのようにスタイリッシュではないけど、靴底の面積が広いからひと踏みで大勢のドイツ兵を踏み殺せそうだ。
いつものジーパンに白いゴム長靴、茶色いチェック柄の厚手のシャツに白いゴム手袋をインしてはめる。この長めの白いゴム手袋は1回目の襲撃で使ったもので、これまた黒い汚れが手の平から甲にかけてこびり付いていてかなり汚い。
白いゴム長靴に白いゴム手袋、でも汚れまくっているからナチの奴らを踏みにじったり、ひねり潰したりするにはちょうど良い。
そしてこのゴム系コスが職場系のわたし流スタイルだ。
普段着の皮系コスから職場着のゴム系コスへの変身だ。
そういえば、職場では午前中配送用のお弁当の仕分け作業をやっているのだが、そこではゴム長靴ではなくなぜか上履きを履いている。
わたしも含めて他のバイト女性もみんな中学や高校で履いていた色のついたカラーバレーシューズを履いているのだ。
衛生上の都合らしいが、長靴同様にみんな上履きも洗濯なんてしないから布の部分が汚れてねずみ色のような無残な色になっている。
衛生上の事なのにみんな足元には全く気を使わないのは考えてみれば不思議かも。
「この上履きもいずれ使おうかなァ。」とわたし。
でも今回はゴム系コスでナチスの空軍基地を襲いに行くつもり。
飛行場なんてそんなにたくさんはないだろうから、どこか一番大きな基地を襲えばよい。
飛行場もろともそこにいる航空機も全て破壊してしまえば、もうウザい思いなんてしなくて済むだろう。
そう思うとだんだんフラストレーションが溜まって暴れたい衝動に駆られるわたし。
次回のトリップが待ち遠しい。
そんな事を考えながらトリップまでの日々を過ごすわたしだった。
ケーニヒベルクからの被害報告はドイツ国防軍東部方面軍の総司令部へも伝わっていた。
ベルリンから赴任したばかりのカール・フォン・クライスト上級大将が各方面軍に警戒態勢を指示していた。
上級大将
「各機甲師団はジーパンレディーの襲撃に備えて随時出撃態勢を整えるように。」
「それから、今回襲われた3都市をカバーしているキルシュテンバウアー空軍基地に第1航空艦隊の主力を配備せよ!」
ドイツ空軍:エーリヒ・ノヴォトニー空軍大将
「了解しました。第1航空艦隊の戦闘機150機、爆撃機200機、急降下爆撃機80機、地上攻撃機120機、合計550機が現在移動中です。」
上級大将
「これまでの状況からジーパンレディーは10日ごとに襲撃を繰り返している。しかも、たった1時間で姿を消している。」
空軍大将
「どういうメカニズムなのかは全く不明ですが、そういう周期的なものがるのなら、次回の襲撃に備える事ができます。」
上級大将
「そういうことなら、次回ジーパンレディーが現れるのは9日後という事になる。」
「この予想が正しければ空爆で一気に彼女を仕留められるかもしれない。」
空軍大将
「さすがの巨大ジーパンレディーも空からの攻撃には手も足も出ないですからね。」
そう話し合っていた2人のドイツ軍将官だったが、よもや律子が次にドイツ空軍の基地を襲うつもりだとは全く予想だにしていなかった。




