第156話・跡形もなくなっちゃってごめんなさい!
❝ヴァッズーン!❞
❝ヴァッズーン!❞
❝ヴァッズーン!❞
林立するビルや家々を踏み砕きながら行進を続けるリリア達。
30km四方の大都市も、超巨大ジーパンレディース達にとってはおおよそ60m四方位のものだから、小学校の校庭で遊んでいるようなものだった。
「あ、あんな所に港がある。」
「あれも徹底的に壊さなきゃ!」
リリアが指さす方には広島港の港湾施設があった。
リリアと3人の女達は港に向かって歩き出した。
❝ギュリ!❞
❝ギュリ!❞
❝ギュリ!❞
足元の街々を踏み付けては思いっきりニジりつける彼女達。
巨大なブーツに踏み付けられた一角はひとたまりもなく半円形のにじり跡となって、どす黒い土肌をむき出しにしていた。
踏みにじりの強烈さがテレビ画面を通して伝わってくる。
多数のクレーン群や倉庫群、造船所など一大港湾施設を4人の巨大女達が取り囲む。
❝ジュッポーン!❞
ブルージーンズに白いロングブーツを履いたアジア系の女性が大型クレーンを4本、まとめて蹴り上げた。
白と赤に塗装されたクレーンの破片が空中高く舞い上がる。
それを見て手を叩いて喜ぶリリア達。
「コイツらの港町なんて潰しちゃえ!」
リリアの命令と共に暴れ始める女達。
白いブーツに茶色のブーツが躍動しながら倉庫やクレーン施設を蹴散らしていく。
リリアともう一人の女は造船所を襲い始めた。
ドックに収まっている建造中の船を踏み付ける彼女。
❝ジュヴォ~!❞
「あら、一瞬で無くなっちゃった!」
「せっかく造ったのにゴメンね~!」
リリアのひと踏みで、完成間近だった船がペッチャンコに潰されている。
ドック諸共巨大な靴底クレーターを刻印した彼女。
リリア達が暴れている港湾施設をよくよく見ると、大勢の人達が逃げ惑っているのが視認できた。
突然現れた彼女達になす術もなく右往左往する市民達。
「わたし達から逃げられると思ってんのかよ!」(リリア)
❝シュルシュルッ!❞
❝ジュルジュルッ!❞
倉庫前の広場に集まっていた群衆を自慢のブーツを滑らせながら容赦なく擦り潰していく。
この殺戮に白いブーツの女も加わった。
「カァ~、ぺッ!」
アジア系の女が群衆に向かって唾を吐き掛けた。
600m以上の巨大女から吐き出されたツバは、7m四方の巨大な白い泡と粘液の塊となって人々に降り注いだ。
そして吐き掛けたツバを群衆諸共ソールでなすり広げる彼女。
❝ズリズリズリ~!❞
白い気泡混じりの唾液が人々の鮮血で赤く染まりながら地面を覆っていく。
そんな阿鼻叫喚の世界をたまたま近くにいた取材クルーが間近で撮っている。
「私達の目の前で大量虐殺が行われています!」
「先程、巨大女が吐き出した唾液が私達の前に広がっています!」
「凄まじい異臭がしてきました!」
「何とも言えない、強烈なツバの臭いです!」
女性レポーターが絶叫している。
そんなテレビクルーに気付いた巨大女。
カメラが彼らの頭上に向くと。巨大なブーツの靴底模様で画面がいっぱいになった。
「今から退避します!」
「アァァァ~!!」
❝ザ~~!❞
映像が一瞬で途切れた。
おそらく白ブーツの女に踏み潰されたんだろう。
するとすぐに別のカメラに切り替わった。
「ダメじゃない!」
「メディアを踏み殺しちゃ!」
「もっとわたし達の恐ろしさを伝えるのよ!」
白ブーツの女に厳しく叱責するリリア。
計算高い彼女の事だから、都市破壊と同時にメディアによって更なる恐怖心を煽り立てようとしていたのだ。
「遊びはこのくらいにして、この町を消滅させるわよ!」
リリアが6人のジーパンレディーに指示すると、それまで踏み潰しに終始していた彼女達が一斉に右に左にスケートでも滑るような仕草で街々を磨り潰し始めた。
❝ドッシーン!❞
赤いロングブーツを履いた金髪の白人女が両足を広げた格好でいきなり住宅街に尻餅をついた。
巨大なジーパンが家々を押しつぶした。
そして左右に開かれた赤いブーツ脚がいきなり閉じられた。
❝ジュヴォ~!❞
開脚していたブーツ脚が街々を磨り潰しながら凄まじい勢いで閉じられたのだ。
彼女の体を中心に扇型の美脚跡がクッキリと残された。
そこにあった家々は跡形もなく消滅し、どす黒い土肌がむき出しになっている。
そんな模様が上空を旋回中のヘリからの映像で確認できた。
❝ヴォッヴォーン!❞
❝ヴォッヴォーン!❞
❝ヴォッヴォーン!❞
両足を閉じた金髪女。
今度は仰向けに寝転がると転がり始めたのだ。
両手両足をピンと伸ばしながらゴロゴロと転がっていく。
女のジーパンが、ブーツが、革製のロング手袋をはめた手が、街を押し潰しながら凄いスピードで転がっていく。
「そうそう、あの子体操の選手だったの。」
「律子達の襲撃で、両親が踏み殺されたんだって。」
「可哀想よねえ。」
「今日は好きなように暴れさせてあげて!」
リリアの口から嫌な言葉が続く。
おそらく今日やって来たレディース達は、わたし達の犠牲者の家族なのかもしれないと思った。
❝わたし達、大変な事をしていたんだ・・。❞
とあらためて罪深いトリップの報いを実感せざる負えないわたしだった。