第155話・巨大神里美誕生か?
「とにかく、わたしも連れていって!」
里美が叫ぶようにわたしに懇願する。
いつもなら躊躇なくトリップ仲間に引き入れるのだが、やっぱり引っかかる。
彼女を連れて、再びあちらの世界に行ってしまってもよいものか。
興奮しながら実体験を話しながらわたしは気付いていた。
❝結局はこの鏡を使うと、破壊と殺戮しか生まないんだ。❞って。
魔神鏡の女神とはよく言ったもので、人は巨大化して歯向かう事の出来ない相手を前にすると、その力を思いっきり見せつけたくなるものなのだ。
わたしのようなフツーのアラサー女でも、一度そんな力を手に入れてしまうと中々手放せなくなっていたのも事実である。
ということはこの鏡を長年研究してきた里美先生をトリップさせれば、もう後戻りできなくなりそうな気さえしていた。
「先生はトリップして暴れてみたいんですか?」
わたしは思い切って聞いてみた。
「もちろんよ!」
「トリップして魔神鏡の女神になって、その絶大な力を体験してみたいと思うのは自然な事でしょ?」
「それに、律子さんの話だとわたし達にとって、格好の標的になる相手もいるみたいだし。」
「たしかに、あちらの世界に行って平和な町をメチャクチャに破壊するのは悪い事かもしれないわ。」
「でも、闘うべき相手がいるのなら暴れる理由があるって事でしょ。」
「わたし、帰ってあなたと同じ格好になります。」
すでに彼女的にはトリップすることを前提に話を進め始めていた。
そんな時である。
❝コンコン!❞
ドアをノックする音がした。
「は~い、どなた?」(里美)
「わたしです。幸代です。」
「研究生の子だわ。」(里美)
彼女がドアを開けるとロングヘアーの可愛らしい女性が立っていた。
「先生、大変です!」
「テレビをつけて下さい!」(安代)
里美がテレビをつけると、とんでもない光景が目に入って来た。
❝臨時ニュースをお知らせします!❞
❝先程、広島市の上空に緑色の光が出現しました。❞
❝先日、新宿に現れた巨大女の時と同じものです!❞
アナウンサーが実況する中、巨大な扉が出現すると中から巨大なリリアが再び姿を現した。
この間わたしと殴り合った時と全く同じ格好である。
しかも彼女の大きさが半端ではない。
扉の下に林立しているビル群と比較すると、その身長は600m以上に及んでいた。
更にリリアの後ろから次々と現れる超巨大なジーパンレディース達。
黒に茶色に白にダークブラウンと色とりどりのロングブーツを履いた超巨大女達が広島市の街中に遠慮なく降り立っていく。
全部で7名のジーパンレディース達が再びこちらの世界に降り立ったのだ。
❝ジュッヴォーン!❞
❝ジュッヴォーン!❞
彼女達がひと踏みするたびに凄まじい粉塵が噴き上がり、100m近い巨大なブーツのソールが町を呑み込んでいく。
7人の女達が扉から降り立っただけなのに広島市の中心部はすでに焦土と化していた。
「律子! 約束通りまた来たわ。」
「今度はわたしの友達をたっくさん連れてきちゃった。」
「だって、みんな暴れたいっていうんだもん。」
「いいよね、少しくらい暴れても。」
リリアの声が辺り一面に響き渡っている。
あまりの大きさに彼女の声も普段の高いトーンからハスキーボイスのような低い声に変わっている。
「またあなたに向かって呼びかけてるわよ。」
と里美がわたしの方を見つめる。
それを聞いた幸代も驚いてわたしの方を向いた。
「こんな事するなんて、許せない!」
「何とかしなくちゃ・・。」
と言ってはみたものの、どうすることもできないわたし。
「みんなァ!」
「思いっきり、やっちゃえ~!」
リリアの掛け声と共に躍動し始める巨大神達。
❝ジュッヴァーン!❞
❝ジュッヴァーン!❞
足元を見つめながら大地を踏みしめる巨大女達。
総勢14本の超巨大なロングブーツが広島市を覆い尽くしている。
❝ジュヴォーン!❞
❝ジュリッ!ジュリッ!❞
中東系の浅黒い肌をした美人の女が広島駅を列車諸共踏みにじった。
グリグリとブラウンのブーツを執拗に回転させながら、踏み潰された駅舎やロータリーは粉々になって地中深くめり込んでいく。
今度はニヤニヤと微笑みながら駅前の商店街をヒールで踏みつける彼女。
❝グッジューン!❞
❝ギュリッ!ギュリッ!❞
その他のジーパンレディース達もお構いなしに市内を踏み荒らしながら破壊を開始した。
アジア系に白人女に中東系と色々な人種の女達が色とりどりのシャツを着て、手にはベージュの革製ロング手袋をはめて、薄汚れたジーパンと履き込まれたロングブーツに包まれた美脚を存分に使って暴れている。
黒髪のアジア系ジーパンレディーは、黒いロングブーツで足元の住宅街を踏みしめると、そのまま右方向にブーツを滑らせた。
❝ジュヴジュヴジュヴ~!❞
100m四方の数ブロックが跡形もなく消えて、どす黒い巨大な靴跡だけが刻み付けられた。
この女は調子に乗って右に左にブーツを滑らせながら街を磨り潰していく。
リリアは膝を高く上げては足元のビル群を踏み砕いていた。
❝ヴァッシューン!❞
❝ヴァッシューン!❞
「アッハッハッ!マジで楽しい!」
「止められないっつ~の!」
リリアが笑いながら破壊を楽しんでいる。
そんな光景を目の当たりにしていた里美は真剣な表情でつぶやいた。
「わたしが仇をとってあげる!」