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巨大ヒロイン・ジーパンレディー律子  作者: スカーレット
150/278

第150話・どっちが悪党なの?

 「わたし達が持っている手鏡は、古代バビロニアから伝わる伝説のものだって知ってた?」

「そうよ、あなたのとわたしの・・。」

「手鏡は2つあるの。」

「あなたの持っている鏡がアリッシュの姉鏡。」

「わたしの持っているのがエリッシュの妹鏡よ。」

「2つの鏡は対になっていて、あなたの姉鏡には肝心な時空の扉を開ける呪文が書かれている。」

「そしてわたしの妹鏡には時空を抜けた先での大きさを自在に変えられる呪文が書いてあるの。」

「だからわたしはどんな時代に行っても巨大化して大暴れできるってこと。」

「羨ましいでしょ!」

「それにしても、小人の街で暴れるのって本当に楽しいよね。」


しゃべり続けるリリアに反論することもできず聞き入るわたし。


「ほらァ、何とか言いなさいよ!」とリリア。


「わたしだって最初は友好的に振る舞っていたわ。」

「でも、先に攻撃してきたのはあなたの世界の方でしょ!」

「わたしだって罪もない人達を踏み殺したくはなかったわ。」

語気を強めるわたし。


「少なくとも、あなたみたいに民間人を面白がって殺したりはしてないわ。」

だんだんイライラしてきたわたしは自分を正当化することで落ち着こうとしていた。


「ウソよ!ドイツ軍の兵士達を大勢、唾責めにして散々なぶり殺しにしたじゃない。」

「あなただってS女なんでしょ!」

リリアも苛立っていた。


「ナチの兵士を殺すのは仕方ないわ。」

「あなただって収容所でたくさん殺したじゃない!」

とリリアを責めるわたし。


「あれは、あなたの鏡の呪文を聞きだす為の犠牲よ。」

「彼らには可哀想だけど、わたしがこの世界で暴れるには彼らの犠牲が必要だった。」

「ただそれだけよ。」


「それから、いい事教えてあげるわね。」

「あなた達がリンチを加えて惨殺した死体安置室の兵士覚えてる?」

「あの死んだレディース達はナチスが殺したんじゃない。」

「彼女達は脱走したけど、山中で息絶えた所を収容されたのよ。」

「事情も知らないで、相手がナチだからって蹴り殺すなんて・・。」

「あなた達の方がよっぽど悪党だわ。」


次々と驚くべき事を話し出すリリア。

わたしは言葉に詰まってしまった。


「そんな・・、わたし達は・・。」

「でもやっぱりわたし達はナチと闘ってきた。」

「これは正義の闘いなんだから。」

あくまで正義を貫きたいわたしだった。


「いいわ、いくら言っても無駄ね。」

「それから、あなた達が解放したレディース達はホンモノのテロリストだからね。」

「ただ単にぶっ壊したり、暴れたりしたいだけの子達なんだから。」

「今頃、わたし達の世界でテロを楽しんでいるわ。」

「アンタ達はとんでもない連中を解き放ったのよ。」


あまりのことに思わず口に手を当ててしまうわたし。

「そんな・・。」

理想と現実の大きなギャップに動揺するわたしだった。


「わたしもテロリスト達の中にすっかり溶け込んじゃったわ。」

「それもこれもアンタ達と接触するためだった。」

「待った甲斐があったわ。」

「正義の味方を自負するアンタ達の事だから、きっと収容所に現れると思ってた。」

「思った通り単純な発想しかないのね、あなたは!」

口元に薄ら笑いを浮かべるリリア。

次の瞬間だった。


「コノ~!」

❝ガッチャーン!❞

❝バコーン!❞


わたしはリリアに殴りかかっていた。

テーブルとイスはひっくり返り、ガラスのコップや花瓶が床に落ちて砕け散った。


「何すんだよォ!」

「オラッ!」

❝ドスッ!❞


わたしのパンチを簡単にかわした彼女は、わたしの脇腹に強烈なブーツ蹴りを打ち込んできた。

お腹を抑えながら床に倒れ込むわたし。


「わたしを舐めんじゃねェよ!」

「ホラッ!」

❝ボスッ!❞

❝ヴァスッ!❞

❝ドスッ!❞


床に倒れたわたしの横っ腹を何度も蹴りつける彼女。


「さっき言ったじゃん!」

「アンタはフツーの人。」

「わたしはサイズが少し大きい分パワーがあるんだから。」

「わたしに逆らうんじゃねえよ!」

「オラオラ~!」


ブーツ蹴りの次はわたしの顔面を遠慮なく踏みつける彼女。

泥で汚れた彼女の靴底がもろにわたしの口の辺りをにじり付けた。


「アラアラ、ごめんなさい!」

「この間、新宿で暴れた時の汚れがいっぱい靴底に付いちゃってるかもね。」


「ぺッぺッ!」

わたしの口の中にリリアのブーツの泥汚れが入ってきた。

思わずツバと一緒に吐き出すわたし。


「何ツバなんか吐いてんのよ!」

「汚ったねェ!」

「こうしてやるわ!」

そういうとリリアはわたしの吐いたツバを踏み付けると、そのままわたしの目元を踏みにじってきた。

靴底に刻まれたギザギザ模様が押し付けられる痛みと、ネットリとしたツバの感触がミックスしてたまらないわたし。

彼女がゆっくりと足を上げると、目元になすり付けられたわたしのツバがツーンと臭っている。


❝もう最悪!❞

そんな風に思いながらわたしは彼女のスキを狙う。

マトモに立ち向かったらかなわない相手でもバランスを崩せば・・。

そう感じながら彼女の両足に飛び付くわたし。


「アっ!」

一瞬声を上げたリリアだったが、わたしと一緒に床に倒れ込んだ。


❝今だ!❞

そう思った瞬間に彼女のジーンズのポケットに右手を突っ込むわたし。

握り覚えのある懐かしい感触が伝わってきた。














 

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