第148話・仕上げは都庁で決まりよ!
「ビルの壊し方いろいろで~す!」
❝ズヴォッ!❞
❝バリバリバリバリッ!❞
新宿センタービルの4階付近につま先を突き刺すとそのまま右方向にブーツを滑らせるリリア。
ピカピカの全面ガラスを粉々に砕きながら低層階を切り裂く彼女。
「この感触もイイ感じ!」
❝ジュヴォッ!❞
❝ギリギリギリギリッ!❞
今度は8階付近にブーツのラウンドトゥを突き刺しては左方向になぎ払う。
彼女のおもちゃにされている哀れなセンタービルは、ガラスが砕け散って中が丸見えになっていた。
ビル内のオフィスに取り残された人達は慌ててエントランスに向かって走り出している。
そんな中の様子に気付いた彼女。
「逃がさないんだから!」
「ソレッ!」
「ソレ~!」
❝ズン!ズン!ズン!❞
❝ズリッ!ズリッ!ズリッ!❞
正面玄関から外に向かって一斉に飛び出してきた群衆に狙いを定めては踏み付ける彼女。
逃げ惑う人々を巨大なこげ茶色のブーツがすり潰す。
地面には真っ赤な鮮血とグチャグチャになった肉片がぶちまけられたような状態で覆い尽くしていた。
「アラアラ、ごめんなさいね。」
「わたしから逃げようとするかこうなるのよ。」
「まだお昼なんだから、ちゃんとオフィスで仕事を続けなきゃダメだぞ!」
「サボろうとする悪い子は、わたしが許しません!」
わずか数回地面を踏み付けただけで200人近い人々が踏み殺されていた。
❝これって、いつもわたし達が面白がってやってる事なんだわ。❞
今までやってきた破壊と殺戮の場面を思い出しては自己嫌悪に陥るわたし。
軍港で大暴れした正美はわたし以上に動揺している。
「わたし達、こんな酷い事しちゃったのね・・。」
「もう、どうしよう。」
両手で顔を覆う正美。
正義感の強い子だけに、地上の地獄絵を見せつけられると、とても耐えられない様子だった。
「わたし達が闘ってきたのはナチの奴らだよ。」
「あの子のやってる事は単なる虐殺だわ。」
と自分達のしてきたことを今更ながら正当化しようとするわたし。
今まで殺してきた人々の数では正美とは比べものにならない。
「律子!」
「わたしの暴れっぷり、どう?」
❝ジュヴォッ!❞
❝ジュブジュブジュブジュブッ!❞
笑いながらセンタービルを切り裂き続ける彼女。
彼女のブーツが突き刺さって滑り出すと、黒い無数のガラス片と共に人々の体が宙に舞い上がる。
「え~い、めんどくさい!」
❝バッコーン!❞
❝ズヴォズヴォズヴォズヴォッ!❞
何度も切り裂かれて無残な状態になったセンタービルにトドメの一撃を喰らわす彼女。
中に残された1000人以上の人々を道連れに、凄まじい勢いで煙を噴き上げながら崩れ落ちた。
「やったね!」
「ざまァ見ろっつ~の!」
勝ち誇ったように笑みを浮かべる彼女。
すると前方の都庁に目をつけた。
「あら? とっても綺麗なビルがあるわねェ!」
「これって、もしかして都庁?」
「せっかく新宿に来たんだから、これに座らないとねェ。」
❝ズヴォーン!❞
❝ズヴォーン!❞
❝ズヴォーン!❞
都庁前の道路を踏み抜きながら第1本庁舎の前にやって来た彼女。
❝ズヴォ!❞
❝ズヴォ!❞
❝ズヴォ!❞
巨大なリリアでもさすがに地上243mの都庁は大きかった。
そこで中層階にブーツ脚を突き刺してはそこを足掛かりに上に向かって登り始める彼女。
❝ジュヴォ!バリバリ!❞
❝ジュヴォ!バリバリ!❞
❝ジュヴォ!バリバリ!❞
つま先を突き刺しながら今度は右手を上層階に突き刺してはめり込ませて体を支える。
「何だかロッククライミングやってるみたい!」
程なく都庁中央のくびれた部分に右足を乗せて跨ろうとする彼女。
「よいしょッと!」
「イイ感じだわ!」
やっとの事で巨大な本庁舎ビルに馬乗りになった彼女。
しかしもはや彼女の両足は宙ぶらりんの状態で、薄汚れたジーンズに包まれた彼女の股間がみるみるうちに、都庁中央部のくびれた部分に喰い込んでいく。
❝メリメリメリメリ!❞
「イヤだ!イイ気持ち!」
2本の突き出した都庁独特のタワー部分の片方に胸を押し付けながら抱きつくリリア。
❝ギシギシギシギシ!❞
❝ヴォヴォヴォ~ン!❞
ついに彼女の巨体を支えきれなくなったタワー部分が崩れ始めた。
更に彼女の背中の方のタワーも同時に崩壊が始まった。
「もう!こうなったらこうしてやる~!」
そう言いながら体を前後に揺らして体重を目いっぱいかけ続ける彼女。
さすがにリリアの巨大な下半身がビルを一気に挟み崩し始めた。
倒壊が始まると早かった。
❝ヴォヴォ~ン!❞
第1本庁舎ビルは一瞬で全体が崩壊し、倒れ込むリリアと共に地面に崩れ落ちた。
「うわァ!もう大変!」
「ちょっとやり過ぎちゃったかも。」
「ゴメンナサ~イ!」
大きな声で謝罪するリリア。
そう言えば、破壊の限りを尽くしているわたし達も時折、恐ろしい破壊行為を正当化するために❝ごめんなさい!❞を口にしていたっけ。
全てわたし達の行動パターンをトレースし続ける彼女だった。
全身粉塵で真っ白になった彼女。
立ち上がると、両手でジーパンやシャツの汚れをはたき落とし始めた。
「すっかり汚れちゃったわ。」
「でも、こんなに爽快な気分にさせてくれるんですもの。」
「律子には感謝しなくちゃね。」
「本当にアリガトウ!」
悪びれた様子もなく大暴れを終えた快感に浸る彼女。
するとジーパンのポケットから例の手鏡を取り出して呪文を唱えた。
グリーンの閃光が走りあの見慣れた扉が出現した。
やっとリリアの破壊が終わったんだと思ったわたしだった。